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「写ルンです望遠」f=100mm, F9.5,L39マウントレンズの製作

おつかれさまです.
今回は,「写ルンです望遠」というディスコンになったレンズ付きフィルムを使って,ミラーレス一眼用のレンズを製作する話である.「写ルンです望遠」の焦点距離は100mmなので,APSセンサーのFUJIFILM X-E2に装着すると35mm換算で150mm,ニコワンに装着すると270mmの望遠レンズになる.なかなかレアなアイテムだが,オークションやフリマサイトではまだ見つけられるようだ.私は「写ルンですNew望遠」を送料込みで千円程度で入手できた.

分解とレンズの取り出し

「写ルンですNew望遠」には,フラッシュが内蔵されておらず,分解の際に感電する心配がいらない.まず紙の包装を剥がし,マイナスドライバーを嵌合の爪に押し当てて外装を外していく.

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レンズがケースの上側ぎりぎりに配置され,フィルムの中心に対して上にあることがわかります.

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中を開けてびっくり,ミラーが入ってました.光路長をかせぐために,2つのミラーでZの文字の形に反射させているようです.

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レンズ部はこんな感じです.比較的大きなレンズです.手前に見えるのは切り替え式の絞りです.

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レンズユニットが取り出せました.レンズが2枚入っているので,これ以上分解しないでこのまま使います.φ21mmの穴にすっぽりはまりそうです.

こんな感じで,作業は順調にすすみ,レンズユニットが取り出せた.それにしても,複雑な構造でとてもレンズ付きフィルムとは思えない.

レンズ取り付け部の設計と3Dプリント

前回と同様,3DCADを使って設計していくのだが,レンズからフィルム面までの適正な距離がわからない.1枚レンズの場合は焦点距離がそのままレンズの中心からフィルム面までの距離になるが,複数枚レンズの場合はそうはいかない.そこで,まずはレンズの取り付け部のみを製作して仮組みし,実験して焦点が合う鏡筒の長さを決めることにした.

というわけで,レンズ取り付け部と鏡筒部の2つに分けて製作することにし,前者を先行して製作した.レンズ取り付け部の構造は,円筒形の鏡筒の先端にレンズフィルターを装着するのと同じように取り付けられる構造とした.不要なレンズフィルターの枠のみを利用し,そこに3Dプリントで製作したレンズホルダーを取り付けられるようにした.なお,レンズ自体は前後に調整できるようにした.

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参考までに断面図です.レンズ取り付け部の先端にはφ52mmのフィルターリングを取り付けます.鏡筒部の先端にはφ49→52mmのステップアップリングを取り付けます.

使うフィルター枠だが,最近のものは薄型化のため,鋼のバネでガラスフィルターを固定しているものが多いが,リング状のネジでしっかり固定しているもののほうが良いだろう.

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レンズ取り付け部とスペーサー3枚・トップカバーです.

鏡筒部の設計と3Dプリント

まずレンズ取り付け部と鏡筒部の接続は,内部を掃除できるようネジで接続した.レンズ取り付け部にはφ52mmのフィルターリングが付いているので,そのネジを利用し,鏡筒部の先端に49→52mmのステップアップリングを取り付けて接続する.ここでステップアップリングを利用したのは,鏡筒に適当な厚みを持たせた上で,鏡筒の外径をφ52mmフィルターの外径φ54mmに合わせたかったからである.

さて,鏡筒の長さを決める必要がある.ボール紙を加工した仮の鏡筒にレンズ取り付け部を取り付けて実験した.カメラのフォーカスピーキング機能を使って無限遠でピントが合う最長の長さを測定する.

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ボール紙で仮の鏡筒を作りました.

実験の結果,鏡筒の長さは55mm程度にするのが良さそうである.鏡筒の長さが決まったので,あとはL39マウントに合う,1/26inch(=0.98mm)ピッチのネジを作図するだけである.

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鏡筒部はレンズらしいこんな形です.鏡筒の長さは59mmに修正してあります.マウント側には大きな穴が開いているので,チリや埃が入ってしまいます.

組み立てと調整

鏡筒の部分は手に触れるので,今回はサンドペーパーを使って平滑にした.その後,黒のラッカースプレーで塗装し,さらにクリアラッカーをスプレーして艶をだした.

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黒く塗装した鏡筒,長さが足りないので,厚さ4mmのフィルターリングを挿入しました.

鏡筒部の先端に取り付けるステップアップリングは,接着剤で固定した.接着剤が乾いたら,レンズ取り付け部と鏡筒部をネジで結合する.あとは,レンズの前後位置を調整するだけである.ところがピントがまったく合わない.どうやら鏡筒の長さが足りないようだ.仕方ないので,φ52mmのフィルター枠を追加して鏡筒の長さを4mm延長し59mmにした.

望遠レンズだけに被写界深度が狭く,ピントがシビアだが,無限遠でピントが合う最小の長さになるようスペーサーをレンズユニットの後ろに入れて調整する.調整が終われば,レンズユニットの前にスペーサーを入れて,トップカバーを両面テープで接着すれば完成である.

実際に使用する際には,L39-Mマウントアダプターを装着し,さらに使用するカメラのマウントに合うマウントアダプターを介してカメラに装着する.

まとめ

今回も楽しませてもらったが,パンケーキ形のレンズを製作するのと比べて,費用は思いのほかかかってしまった.3Dプリントは占有する体積で課金されるようなので,大きなものを作ろうとするとコストがかかるようだ.冷静に考えれば,同じ費用で中古のオールドレンズを購入したほうが幸せになれるかもしれない.

レンズの使い勝手の面から見ると,非常に軽いのは良いのだが,内部にミラーを利用した「写ルンです望遠」のように小さくはならなかった.沈胴式の鏡筒が設計できたらなあと思うのだが,どなたか挑戦してもらえないだろうか.

実際に使ってみると,近くのものにフォーカスが合わないのが気になる.パッケージにも書いてあるのだが,最短撮影距離は正確に調整して8mである.それよりも近くの物は前ボケになってしまう.もともと無限遠に調整してあるので,後ろボケはあり得ない.

というわけで,パンフォーカスでピント合わせが不要なのは良いのだが,そのぶん割り切りが必要なレンズになってしまっている.やはり,ピント合わせがしたくなってしまった.ヘリコイド付きのこんなマウントアダプターがあるので,近々購入しようかと思っている.


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夕日を浴びる都営地下鉄浅草線電車
FUJIFILM X-E2; SS1/500 ISO3200; Film simulation, Classic chrome

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近くの梅の花はボケてしまうので,後ろのスカイツリーが強調されてます.
FUJIFILM X-E2; SS1/320, ISO200; Film simulation, Classic chrome

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少し暗くても撮れます.
FUJIFILM X-E2; SS1/20, ISO3200; Film simulation, Classic chrome

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横浜に行ってきました.
FUJIFILM X-E2; SS1/500, ISO400; Film simulation, Classic chrome

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