見出し画像

日本人にとっての「お風呂」

風呂には家族の歴史がある

世の中にお風呂が嫌いな人はいないと思っていたが、嫌いな人が結構な割合でいる。私が知っている風呂が嫌いな人の一人は、私のおやじだった。汚い話だが、風呂の嫌いなおやじを無理やり風呂に追い込むと、風呂に入るのは入る。しかし、風呂に入るとそのまま体を洗うこともなく、湯船に入ってしまう。湯に入っている間はさすがに気分が良いらしく、まずは静かに湯につかっているが、幾分体が温かくなって、温かくなると体全体が痒(かゆ)くなるようで、タオルを湯船に持ち込んで、体をマッサージし始める。こういうことは一緒に風呂に入る人がいないと分からない。めったにないことだが、最終的に東大に進んだ利発な孫とおやじが一緒の風呂に入る機会があって、利発な孫の詳細でリアルな報告によって、風呂の中で親父が何をしているのかが突然暴露されたのだった。

積もる汚れは見るのも怖い

体が温かくなって、体全体が痒くなってきたおやじは、タオルを湯船に持ち込んで、タオルで体の皮膚を擦(こす)りはじめたのだった。すると、おやじの皮膚自体が、これは孫の詳細な報告によるものだが、「蛇が脱皮するように垢が捲(めく)れていった!」と言うことだった。その理由は、単純に幾重にも積み重なっていた垢が剥離したもので、おやじはその後、湯船に浮かんだ垢を手ですくい始めて、最後は金盥(かなだらい)で湯の上澄み部分をすくった。見た目には最初の湯舟の通り、透明な湯舟を取り戻したのだが、おやじはすっくと湯舟に立ち上がって、すぐ横にいるはずの孫に向かって、「わしは出るから、お前はゆっくり入ったらいいと!」、言おうとしたが、すでに孫は黙って浴室を出た後だった。

父と家族のわが家の風呂の大改革

この事件があってから、おやじの風呂嫌いの実態も分かったが、その後の家族会議を経て、これまでの浴室はおやじ専用の浴室と決めつけられて、最低一週間に三度の入浴が命令された。そして、比較的大きかった庭の一画をつぶして家族用の大きな浴室が作られることになった。もちろん、おやじは新しい浴室には入浴が禁止となってしまった。
文化的に風呂の習慣はそれほど古くからあったものではないし、地方によっては風呂のスタイルは一様ではない。同じ家庭と言っても、夫婦が同じ地域の出身と決まっていないので、多少の習慣の違いはあり得る。だからある程度は融通を聞かせてあげてもいいと思うのだが、日本人にとって「清潔さ」だけは譲れない一線だと思う。それがまた、日本人の風呂文化の譲れない一点だと思うのだ。そこで、思い付きに近いのだが、日本人としての「いい風呂の条件」を挙げてみたいと思う。そうなると、先ほど述べた「清潔」を筆頭に、最低42℃以上の湯の「熱さ」があり、次に「湯舟は悠々足を延ばせる広さ」、冬でも温かい浴室の「気密性」、風呂の「洗い場の適度な広さ」、湯は「軟水系」といったところだと思う。

いい温泉+風呂のランキングは、一に露天風呂、二にサウナ

温泉と風呂とは厳密に言えば少しジャンルが違うとも言えなくないが、今日は暫定のランクとして、湯につかる+温浴という視点から風呂にまつわる快適ランキングを勝手に書いてみたいと思う。
1)露天温泉 2)サウナ 3)温泉・大浴場 4)檜の風呂、5)ジャグジー 6)家族温泉 7)野湯 8)ゆっくり目の家庭風呂 9)ユニットバス 10)五右衛門風呂 11)電気風呂…と言ったところだろうか!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?