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自己啓発書をポジショントークエッセイとして読む

自己啓発書の類は大学時代に結構読んでいたけど、最近はめっきり読まなくなった。自己啓発書なんか読んでも人生は変わらないのだから、読むだけ時間とお金の無駄だと考えていた。

読書の傾向はその時々で変わるものであり、最近はエッセイをよく読んでいる。自分とは異なったバックグラウンドを持つ人がどのようなことを考えているのか知るのが面白い。

自己啓発書も一種のエッセイと考えることができる。いわゆる「成功者」が自分の経験を基にして、どうすれば成功できるかをアドバイスする。自己啓発書はこのような構図でできている。成功者は大抵の場合ただ運が良かったから成功しただけであって、成功者が考える成功原則は再現性は全然無いのに(私の個人的思想として、人生は努力よりも運の方が大きく影響を与えると考えている)。成功原則(と思い込んでいるもの)は著者の経験から語られる。自身の経験や考えていることを述べているのだから、自己啓発書はエッセイと言って良かろう。そう考えると、自己啓発書も多少読もうかと考えるようになった。

最近、『移動する人はうまくいく』という本を読んだ。

少し前ならこの手の自己啓発書は読まなかったのだが、エッセイとして捉えると面白く読めた。まあ、内容はたまたま人生をうまく過ごしている人が再現性の無い独自の理論を唱えているに過ぎなかったのだが。

無責任に「会社を辞めよう」と書いている時点で、単なるポジショントークエッセイであることが分かる。「無責任に聞こえるかもしれないが」と前置きしているとはいえ、その後の話の展開が「自分は上手くいったから、あなたも上手くいくだろう」というものである。こんなアドバイスを鵜呑みにしてはいけない。大方の凡人はリスクを払って独立するより、大人しく会社員を務める方がはるかにマシだ。

自己啓発書に対する見方を変えることにより、自己啓発書も読書として楽しめるようになった。今まで毛嫌いしていた分、色々と自己啓発書を読んでみたいものである。

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