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岐阜県中津川市|交通情報をオープンデータ化し"最先端田舎"へ、79%の利用促進

岐阜県中津川市は、岐阜県の南東部に位置する市で、長野県に隣接しており、日本観光地百選にも選ばれた景勝地、渓谷、石垣、滝、日本アルプスを一望できる高原・・・といったように自然豊かな街です。


バスの経路検索ができない

自然豊かでいろいろな観光スポットがあるため、移動手段として車が必要になります。車で移動する場合は、自家用車・レンタカーを使う、またはバスを使う、のどちらかになると思います。

コロナ前は外国人観光客が多く、外国人観光客のほとんどが路線バスを使って移動していました。しかし、中小バス路線は整備が遅れており、ネットで経路検索ができないという大きな課題を抱えていました。

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標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)とは?

具体的な事例の話しにいく前に説明を一つだけします。

国土交通省が定めた「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」というものがあります。これは何かというと、大小様々なバス会社で扱うデータのルールを決めて、全員が同じ形式のデータを使えば、お互いにデータやり取りしやすくなるよね、というものです。

大手バス会社はネットで経路検索できることが多いのですが、中小バス会社はそもそも時刻表などの情報がデータ化されていなかったり、独自に定めたフォーマットになっていたりします。しかし、利用者としては、大手だろうと中小だろうとバスの情報を見たいわけです。

フォーマットがバラバラの情報を例えばジョルダンを使って見るとなると、同じフォーマットに揃えなければいけないので、手間がかかります。

そこでバス業界のデータはこういう形式を使いましょう、というルールを決めたというわけです。


交通情報をオープンデータ化して誰でも活用可能にした

岐阜県中津川市の事例に戻ります。

中津川市では、国土交通省が定めている標準的なバス情報フォーマットにしたがって、データを整備し、そのデータを誰でも活用できるようにオープンデータ化しました。しかもデータ化する作業は市の職員が行ったため、データ化するための費用はかかりませんでした。

オープンデータ化することで、バス会社同士がデータを使えるようになりますし、自治体でも、病院でも、どこでもデータを使えるようになります。

そこで、まずはバス会社と自治体がネットで経路検索を可能にしました。さらに、病院ではデジタルサイネージ(デジタル看板、大きな画面でデータを写すことができる)で運行情報の案内をするようにしました。

その他にもいくつかの施策へ取り組まれていました。

◯バスに搭載したGPS機器からバスの位置情報を取得し、遅れを加味した到着時間を案内する

◯12月にはクリスマスの装飾をしたバスを作り、クリスマスバスがどこにいるのか地図で表示する

◯市内のバスに留まらず、近隣市区町村においても経路検索が可能となるように、広範囲の環境整備を岐阜市へ提案し、データ整備のきっかけを作る

こういった施策の結果、病院の待合室に設置されたデジタルサイネージについて、画面表示がわかりやすいと答えた方が65%、バスを利用しやすくなったと答えた方が79%、というアンケート結果も出ています。

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※中津川市のホームページから画像をお借りしました。


ポイント

費用をかけずに行ったという点が着目すべきポイントだと思います。

今回の施策で最も重要なものは「データ」です。まずはデータが揃っていないと、経路検索も出来ませんし、運行情報をデジタルサイネージに表示することも出来ません。

標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)のデータは市の職員が作成されたため、特別な費用は発生しませんでした。また自分たちでデータを作成したということは更新作業も自分たちで出来るため、運用費用も発生しません。

新しいシステムを導入する、新しい取り組みとしてデータ化する、といった場合、まずはシステム会社へ依頼して見積りを取って、見積り金額を見てびっくりして諦めてしまう・・・といったことがあります。もちろん適切な予算を確保し、適切な金額でシステム会社へ依頼するやり方ができれば、全く問題はありません。

しかし、予算が合わないという場合は「まず自分たちでやってみてはどうか?」という視点も必要ではないかと思います。やってみたら出来た、というケースもあるでしょうし、やってみたら大変さが分かり多少費用がかかってもシステム会社へ依頼したほうがよいことを学んだ、というケースもあると思います。

机上の議論・計画で止まってしまうのは非常に勿体ないので、まずは自分たちで取り組んで見る、ということ考えも大事ですね。

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