ベンゾジゼピンの影響と離脱症状
1.ベンゾジアゼピン長期使用により脳に何が起こるのか?
ベンゾジアゼピン系薬剤を長期連用すると、 脳が構造的・機能的変化を起こし、依存・耐性が形成されます。
アシュトンマニュアルによると、2~4週間以上の使用で 依存・耐性が形成される可能性があるとのことです。
構造的・機能的変化とは、GABA受容体の減少と、 それに伴う自律神経系の抑制機能つまり副交感神経系の機能低下です。
末梢神経は 「自分の意思で動せる体性神経」と 「自分の意思ではコントロールが不可能な自律神経」の二つから構成されています。
そして更に、自律神経はさらに交感神経と副交感神経の二つに分けられます。
運動中、私たちは興奮している状態となり、この時、心臓の拍動数は早くなり、汗が分泌されます。 このように、体を活発に活動させる時に優先して働く神経が交感神経です。 交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれています。
逆に、食事中は気分を落ち着かせて食べ、睡眠中も同じように体を休めている状態です。 このように、食事中や睡眠時など体を落ち着かせている時に強く働く神経が副交感神経です。
ベンゾジアゼピン長期連用すると、上記の2つの神経系のうち、副交感神経系の機能が低下します。
ベンゾジアゼピンの長期間の継続的な介在で、眠気やふらつきなどリラックスし過ぎる状態「過鎮静」の状態が長く続くと、これは人が生きていくのに危険な状態なので、ホメオスタシス(恒常性維持)が働き、 GABA受容体を減少させることで 過鎮静を解消しようとします。
通常はGABAという物質がGABA受容体に結合することで、自律神経の興奮を鎮めるわけですが、GABA受容体が減少していくと、自律神経の興奮を鎮める機能が不十分になります。 そうして 自律神経の抑制機能 つまり 副交感神経の機能が低下していき、薬がないとリラックス出来ない脳になるのです。
2.なぜベンゾジアゼピンを止めると離脱症状が発症するのか?
ベンゾジゼピン長期連用すると 自律神経系の機能のうち抑制を司る副交感神経系の機能が低下していますが、ベンゾジアゼピン服用中は、副交感神経系の機能低下分をベンゾジアゼピンが補助してバランスが取れています。
ここで、ベンゾジアゼピンを急激に減らしたり、止めると、 抑制の効かない自律神経系は、暴走し、「過興奮」状態になります。
車に例えて言えば、興奮を司る交感神経系をアクセル、抑制を司る副交感神経系をブレーキとすると、アクセル踏みっぱなしで、ブレーキの効きが悪い車の状態になり、車が暴走します。 これが離脱症状です。
自律神経の興奮がうまく抑制出来ないので色々な症状を引き起こします。 動悸、頻脈、筋肉痛・硬直、不眠、耳鳴り、微熱、火照り・寒気、高血圧 など。
3.上記1と2を理解した上で 微量ずつ時間をかけて減薬する。
上記を理解した上で減薬をします。
つまり ベンゾジアゼピンが副交感神経系の機能低下を補助してバランスを保っており 一気に減らすと自律神経系が暴走し、重篤な離脱症状を引き起こすので、
→ 「微量ずつ減薬する」
ベンゾジアゼピンの影響により、「GABA受容体の減少」という脳のダメージが発生しており、それを自然治癒力により回復していく必要があり、回復には長い時間を要するので
→ 「時間をかけて減薬する」
1と2を 理解していれば、「一気断薬」は理にかなっていないことがわかります。 減薬とは、薬を飲まなくなることが終着駅なのではありません。
最終目的は、「脳の回復」なのです。
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