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COVID−19に関する看護実践の共有

ウィル訪問看護ステーションでCOVID-19に関連した実践を行いました。他の地域やステーションでも対応に迫られた際に参考になることがあれば嬉しくナレッジシェアをいたします。

2つのケースで実践を行いました。ケースA、ケースBとします。以下それぞれのキーワードとケース紹介をします

ケースA【独居】【急な介入】【介護資源不足】 

ケースB【独居】【末期】【予定介入】【介護資源不足】 【管理期間設定の難しさ】

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これらの依頼前からの制度の準備

ウィル訪問看護ステーションではこれらの対応が必要になることを踏まえ、事前に以下のように運営切り替えのルールや制度の準備を整えていました

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訪問前の現場での準備

ケースAでは、その日の夜から介入を開始しなくてはならず非常にドタバタしたスタートでしたが、前述の運営方法や準備など周知していたこともありチームでスムーズに始めることができました。

一方、ケースBでは始まるまでに時間はありましたが、新規の方のため家の環境やご本人の詳しいADLなどがわからない中で出来るだけ多くのことを想定して実施しました。

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ケースAでは、通常”介護保険”で対応している利用者であるため連日の2回訪問(最低限に絞っても2回が必要でした)を実現するためには「特別訪問看護指示書」による”医療保険”への切り替えが必要でした(最悪、全て無償での対応も想定していました)。ケースAの主治医は病院の外来医師であり、さらには外勤の方のため週に1日しか外来に来られない状況でした。電話で事情や体調をMSWへ相談し、遠隔診療の時限的措置がちょうど始まった直後でもあったことから同じ病院の別の医師から指示を頂きました。ケースAの方は無症状ですが元々サポートがないと生活・生命に直結する方でもあります。でも安定はしており入院適応なわけでもなくサポートがあれば家で暮らせるのです。

ケースBでは、そもそもの「退院後の感染管理期間をどのように設定するべきか」最も悩む点でした。PCR検査2回陰性があり医師の判断の下での退院(なお退院日は病院での感染管理解除日よりやや手前でした)ではありましたが、その頃、都内は連日感染者数が増加しエリア的にも蔓延期である状況を鑑み、在宅チーム側では検討の結果、退院後2週間の管理期間を設ける意思決定を行いました。もちろん、オーバーな対応である可能性も踏まえ念を入れた対応でした。

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いざ訪問看護へ

ケースAでは、用意していたこと以外に、床面の汚染があったことでズボンや靴下へのウィルス汚染のリスクが分かり「セパレートタイプのカッパのズボン」「お風呂用のゴム靴」を導入しました。また排泄ケア時に手袋を交換するために多めにレッドゾーンに予備を持ち込んでいく必要がありました。実際には内服など通常のケア以外に、食事や洗濯、排泄や保清を中心に行いました。

ケースBでは玄関ま人一人分のスペース、一歩入ればキッチンやトイレのため、PPE着脱のための安全な空間を作る方法に悩みました。訪問前には食料品など買い出しをしてから訪問し、身の回りのことや疼痛(オピオイド)コントロール、多数ある薬剤の調整、ADLの変化への対応を行っていました。

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ケースAは結果的に介入する職種も看護師のみで限局され、開始後のコミュニケーションエラーはほとんどありませんでした。

ケースBは、主治医ー薬剤師ー看護師間のやりとりの中で薬剤の配達に伝達ミスが出たり、別居されているご家族へちょくちょく看護師から連絡し来られるときには看護師が一緒にお伺いしてPPEを現地で着るお手伝いをする予定が、看護師が知らぬ間にいらっしゃっていたり(伝え方が足りてなかったと猛省をしました。保健所と主治医へ報告し適切に対応しました)、ご本人へ訪問日以外は看護師が電話訪問をしていましたが、介護サービスも一切使えず通常のケースよりも「目」の入る量が少ないことから痛みのコントロールへ影響が出たりと、困難感や無力感、あるいはこれで良いのかというジレンマを感じながらの展開を行いました。また入院期間中に介護認定申請が行われていたことから認定調査が実は未実施だったことがCMも看護師も把握できておらず行政職員と認定調査員の訪問が感染管理期間にありました。行政側での感染管理期間の認識(入院先と同じ)と、在宅チームで設定した感染管理期間の認識(在宅チーム独自の設定、保健所へは伝達はしていた)の違いによるアクシデントもありました。その際は看護師により認定調査員とその場でPPE対応を指導・実施して頂きことなきを得ました。これらのように、登場人物が多くなればなるほど、困難さを増していく実感を得ました。

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対応者のメンタルフォロー

上記のように対応期間中の看護師はジレンマやストレス、閉塞感や孤立感を通常よりも感じていました。

ケースAではチームメンバーや管理者による電話などを使いました(短期間であったこともあり)。しかし不十分であると考え、ケースBでは、訪問以外の作業中はWEB会議システムで積極的な接続を行い孤立感の解消や、「日々の体調チェックシート」の導入、「定期的なリエゾン看護師との面談」、前中後での「抑うつチェック」を導入しました。日々の体調チェックシートにより客観的に自分の疲労感や緊張感を認識することができ、面談では気にかけてくれる存在がいるというだけで安心感を感じるtことができました。通常のステーションにはリエゾン看護師はいないと思いますが、この役割は管理者でもプリセプターでも誰でも良いのでサポーティブな人間が定期面談をするということが重要だと考えます。

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実際に使用したシートです。訪問日は緊張や疲労が高まっていたことが分かります。必要な方は共有しますのでお使いください。

日々のチェックシートはこちら」

また抑うつチェックは以下を使用しました。検索すればすぐにヒットします。

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陽性対応後について

陽性対応後については休息をとることを原則にしています。ただしケースBでは2週間ずっと孤立していたこともあり、そこから1週間休息をとることで自宅にずっといることが継続する面もあり、本人希望からすぐの復帰となりました。

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心に残ったこと

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たった2ケースだけですが、様々な反省・改善点、次回に持ち越す課題などを見つけることができています。

特にケースBについての「感染管理期間の設定」についてはその時の最善を考慮した感染管理期間設定(行政判断との差異)により、ともするとご本人へ不利益を及ぼしたのではというジレンマを今でも抱えています。

結果的にはこの期間の後、最期までご自宅で過ごすことを支えられ、穏やかな終わりを迎えられました。ご家族から「家に帰すことは難しいと思っていたけれど最期まで自宅で過ごせて良かった。本人らしかった」医師からも「ウィルさんと組めたから本人・家族が望む形にできました」と言ってもらえました。でもご本人が「家に帰ったらしたいこと」を聞き一緒にやろうと約束をしていた身からすると、実現するために今か今かと準備をしていたことも14日間という時間はとてもとても長く、できなかったことが大きく心に残っています。これを読んだみなさんのチームであればどうしたでしょうか。

おわりに

良い実践だったか分かりません。在宅ケアに従事する現場の同業・多職種の方や、感染症に詳しい方からの率直なご意見をもらえると嬉しく思います。そしてこの小さな知見が、もし少しでも誰かの役に立つことがあれば「全ての人に家に帰る選択肢」に繋がるのだと思いますので、参考になりましたら幸いです。

ウィル訪問看護ステーションではいつでも訪問看護を続けています。感染症が落ち着いたら、みなさんまた遊びにお越しください。



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