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言の葉譚<008>脈釣りの話

過去ログに「知識と智慧」と云ふ一篇を挙げておいたが、本稿はその姉妹篇とも云ふべきもので、和英を語るに欠かせぬ分水嶺と云へやう言の葉の道を極める要諦だ。世に目分量めぶんりゃうという言葉があらう。はかりに掛けずとも掌や指先の感覚で量を測る感覚だ。職人の指先にはこの手の感触能が備わってをる。

和英を語るとき、英語なら秤りにあたる文法なりシンタックスなりのツールを用ひるに限るが、日本語に通じる捷径しょうけいは専ら言語的な感触能を体得することだ、と吾輩は八十六歳の年の功を賭けて断言してはばからぬ。

その確信に照らして、吾輩は現に Nihongo Made Easy という題の日本語学習マニュアルを綴ってをる。そのやうな感触能を持ち合わせぬ外つ国人とつくにびとに向けて、日本語を竿で釣らせる妙策を編んでをるのだ。いや、これは別な機会にご案内しやうと思ふ。

とんだ横道に逸れたが、本稿では竿か脈かの釣り技を和英の言の葉話にたくして和英族の諸賢にお授けしてをるつもりだ。和英にほぼ一生を掛けた老爺の語りとしてご笑味頂ければ望外だ。

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