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「性加害のない世界」を目指したくて

2022年に加盟した日本ペンクラブの活動、地味にがんばっております。
現時点で女性作家委員会、広報委員会に所属しておりまして。

今日は前者、女性作家委員会の話をしましょう。

女性作家委員会は、9月8日に「性加害のない世界を目指して」というステートメントを出しました。

「女性作家委員会では、2年にわたって6回の講演会を開催、性暴力及びハラスメントが生じる社会の構造について議論し、理解を深めてまいりました。」

この一文から始まるステートメントに、私は、最後のひと月かふた月かだけ関わらせていただきました。

これはもう、完全に私のわがままです。
2年間ほとんど何もせず、最後の最後にこれまでのことをひっくり返すような意見を出しました。
女性作家委員会のみなさまはそれを受け入れてくださいました。よく、こんなわがままを受け入れてくださったなと、懐の深さに涙しました。

なぜそのような意見をしたかというと、もちろん理由があります。みだりに風紀を乱したかったわけではありません。

「被害者」「当事者」である立場の人間の声を、どうしても届けたかったのです。

どんな事件、事故も「被害者<傍観者」

当然のことながら、どれだけ被害の数が増えていると言ったって、「被害者<傍観者」という比率が崩れることはありません。どのような事件、事故の被害においてもです。

たとえば、あんなにも甚大な被害を出した東日本大震災の被害者ですら「マイノリティ」です。

マジョリティは、マイノリティの気持ちを想像するしかできません。
優しい人たちは、優しい心でマイノリティの気持ちを想像してくださいます。とてもありがたいことです。

けれど、どこまでいっても想像でしかない。想像しかできない。だから、ほんの少しずれてしまう。そして、そのほんの少しのずれが、マイノリティを傷つけてしまうことがあるのです。悪気なんてない、純粋な優しさからのずれであったとしても。

なぎら健壱さんがお話しされていたのですが、地震のボランティアで「被害者のみなさんの笑顔に元気をもらいました!」と言って帰っていく人らに対して「あんたらが元気になってどうすんだよ!」という現場の声かあったそうです。

親切心だから、ポジティブな言葉だから、といって、無条件に受け取れません。だって、被害は瞬間じゃない。取り戻せないものがあって、癒えない傷があって。そんな中、優しさだからといって受け取れないものがあるのです。

そして性加害において、私は現時点では被害者側。つまり、マイノリティ。

マジョリティであるみなさまが進める講演会、議論が、優しさだからといって、真剣だからのいって、頷けない部分が多くあり。

かと言って、みなさまの邪魔をしたくないと考えてしまって、みなさまが活動に尽力されている2年近くの間、ずっと口を噤んでしまっていたのです。

しかし、事もあろうか私、ステートメントの文案がかたまってさぁいよいよ大詰めだという時期になって感情が爆発してしまい。

すべてをひっくり返しかねないような意見を発信してしまいました。

何ででしょうね。どのような文面であったって、ポジティブで親切で生きづらさをなくそうといった内容であればひとまず良いはずなのに。

どうしても、我慢できなかった。すでに傷ついている、真っ暗闇から出てこられずに苦しんでいるマイノリティの存在が見えないステートメントが、どうしても。

性加害はすでにある。これから未来なくなったとしても、現時点ですでに「被害」はあって、「被害者」がいる。それは絶対に永遠に変えられないことで、だからこそ「性加害のない未来」の実現には「すでにいる被害者の救済」がなければならないと思うのです。

被害は“瞬間”ではない、永続的な呪い

「性被害」が恐ろしいのは、その人の一生を狂わせること。物損や外傷のような「眼に見える被害」が何もなくても、確実に効果がある「呪い」のような、「目に見えない“単なる”心の傷」。それが、その人の生活を喰らって、人生を壊して、ひどいときには命まで持っていく。

被害は“瞬間”ではなく、その後に起こるそうしたそれもひっくるめて「被害」、私にとってはそれこそが「被害」の本質、といっても過言ではないと思うほどです。

それほどに狂います。何もかもが。

私も相当に苦しみました。今でも心療内科に通院しています。通院してやっと、普通の人に近い生活ができています。

私は幸いにも友人に恵まれて、こうした環境を構築できました。けれど、そうでない被害者はまだたくさんいます。

世間が恐ろしくて外に出てこられない、自由に生きられない、通院ができない人が、たくさんいます。

私は、そういう人の生きづらさを少しでも取り除けたらと思って作家を目指しました。日本ペンクラブに加盟したのも、そうした活動をしたいといった目的が一番にあります。

だから、それができないなら、委員会どころか、日本ペンクラブに在籍しても意味がないと思ってしまって。

「怒られて辞める」ぐらいの覚悟で意見を発信しました。

ところが、委員のみなさまは私の意見を真剣に受け止めて熟考してくださり。

辞めさせられるどころか、ステートメントに「声なき声がかき消されない」という一文が加筆されました。

結局のところ、私がみなさまのことを信頼できていなかったのです。なんだかんだ言いながらまだ心を許していなかった自分が悪かったのだと、みなさまに申し訳ないことをしたという気持ちもありながら、ようやっと作家になった目標達成のために一歩進めた、といった思いです。

これを「はじまり」として、女性作家委員会は、私は

女性作家委員会は、このステートメントを「はじまり」として、これからさまざまな活動をしていく予定です。

私も、もっと積極的に活動していきたいと思いました。
相当に自信を失ってしまっていたな、と、今回の件で自覚して。

作家になろうと心に決めた時は「生まれた場所も生きる場所も選べなかったから、死に場所ぐらい選んでやる」ぐらいの気持ちだったのに、あまりにも環境に恵まれすぎて日和ってしまっていたなと。

私が出版した後、一度、仲の良かった人から「以前のあなたが良かった」と言われてしまったことがありました。すごくすごく仲良しだったのに、私の話を聞いてもくれなくなり、「男性撲滅運動とか良くないよ」なんて言われるようになってしまって。

私は、男性が滅びればいいなんて微塵も思っていない。むしろ、いっしょに生きていきたいから。だから、誤解とか障壁とかそういうものを全部取っ払って、いっしょに美味しいごはんを食べられる世界が当たり前になればと思っています。

私は、戦争反対の会には参加しません。世界平和の会に参加します。

もしよろしければ、女性作家委員会の今後の活動に、ご注目のほど、よろしくお願いいたします。

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