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愛する人に受け入れられないということ。

自分が付き合っている人や大切に思っている人から受け入れてもらえない感覚を理解できる人はどれくらいいるだろうか。

私が当時付き合っていた彼は、向上心の塊で、頭が良く、とても理論的な人だった。自分の感情で何かを判断することはしない人だった。何に対しても、彼の中には確固たる基準があった。常に辛口で、自分に対しても厳しいが、周りに対してもとても厳しかった。

私は彼と出会う前におよそ17kgのダイエットをした。健康になりたいという純粋な思いからの行動で、過激なことはあまりしていなかった。毎朝30分の運動をYouTubeの動画を見ながら行い、軽めの食事制限で体重を落とした。

彼と出会ったばかりの頃は、ダイエットも良い結果が出ていたし、自分にとても自信があったわけではないが、自分を醜いとも思っていなかった。

そんな時彼に出会い、私の自己肯定感は少しずつ崩れ始めたように思う。


彼はフィットネスに情熱を注いでいる人で、筋トレが大好き。オンラインのパーソナルトレーナーもいた程だ。このトレーナーは後に私のトレーナーにもなる人だが、ここでは詳しいことは省略する。

彼は、私にもジムに行くことをとても強く勧めてきた。最初はそんな彼が理解できなかった。私を私のままで好きでいてくれないのなら、どうして私と付き合ったのか。今の私のままではだめなのか。どうして私をこれほどまで変えようとしてくるのか。疑問は不安へと変わり、喧嘩もした。

結果、彼と付き合い始めて2ヶ月後には、私はジムに通うようになった。理由は彼から言われたこの言葉、

"I want to share with you something that I'm passionate about.(僕が情熱を注いでいることを君と共有したいんだ。)"

そんなこんなでジムに通い始めるようになった私だが、それだけでは彼の気は収まらなかった。もともと上昇志向が強く、次の目標をすぐに見つける彼。ジムに週2で通い始めるようになった私に、もっと頻度を上げたほうが良いとアドバイスをくれた。

トレーニング知識は何もなかった私。3ヶ月後には彼からの強い勧めで、パーソナルトレーナーをつけることになった。 最低週4のトレーニングと、徹底された食事管理が始まり、私は数カ月後には生理が止まり、後には摂食障害を発症することになるのだが。

彼は感情で物事を考えない。いくらお腹が空いていようと、いくら忙しかろうと、そんなことは彼には関係ない。常にトレーニングを欠かさず、食事管理も徹底している。

"No excuses. Stick to the plan."(言い訳はするな。プラン通りにちゃんと行動しろ。)

"You have to focus on losing body fat."(体脂肪を落とすことに集中しろ。)

これが彼の口癖で、私の体調やスケジュールなんかはあまり気にしていない様子だった。

こんな日々の中で、私は毎日2人のトレーナーに監視されている気分になっていた。体重が少しでも増えようものなら、彼に会いに行くことさえ怖かった。

私の服の好みもあまり彼のタイプのものではなかったようで、服装についても色々とアドバイスをくれた。肌の色も白すぎると言い、日焼けクリームを塗ることを勧められた。服は色々と新しいスタイルにも挑戦してみたが、日焼け止めクリームは買ったけど、結局使う前にお別れしてしまった。

もちろん彼は私を褒めてくれることもあったし、トレーナーのプランのおかげで、体は変わっていった。彼からもトレーナーからも多くを学んで、感謝している。


ただ、私は彼に心の底から受け入れられていると感じたことは一度もない。

常に自分を変える努力をしていなければいけなかった。そうしないと彼が離れていくと本気で思っていた。体重が増えれば彼を失い、痩せて結果が出ればもっと愛されるかもしれないと期待していた。

私の体型は彼を満足させられないし、彼は私の肌の色までも変えたがっていた。そんな時でさえ、私は彼を「愛していた」。だから、彼の期待には精一杯答えようと努力した。頑張って頑張って頑張って、それでも彼が満足することは最後までなかった。

常に次の目標を見つけるのが上手い人だ。私の目標までも彼が見つけてしまった。


自己肯定感がそんなに低くない人でも、このような状況にいると自己肯定感が低くなってしまうことがあるらしい。本当にそうなんだろうなと思う。

私は当時毎日必死で、彼に愛されるようになることしか考えていなかった。不安と、計り知れないプレッシャーの中で生きていた。


彼とは今でも時々話すが、彼が言うには「僕は君のサイズや見た目について文句を言ったことは一度もない。」らしい。

彼が言っていることは間違ってはいない。確かに一度も私の見た目について悪口を言ったことはない。

ただ、常にここをこう変えたほうが良いと指摘され続けていたことは事実だ。

彼と別れる頃には、私には自己肯定感なんてものはもう残っていなかった。

私は私のままでは綺麗じゃない。こんなに頑張ったって、彼からは愛されない。

摂食障害を発症してからは、鏡を見るたびに自分の体を罵るようになった。自分のことをとても醜い存在として認識するようになった。

どれだけ周りの人から見た目についての褒め言葉をもらおうが、関係なかった。彼から言われた言葉が頭の中を渦巻く日々。体重が増えた日には死にたくなった。こんなに醜い自分は生きている価値さえないのだと、本気で思っていた。

食べることに対する恐怖心と罪悪感は、想像を絶するものになった。



そんな生活から抜け出そうともがいて、約1年が経った。まだ自分のことをそのまま受け入れることはできていない。醜いと感じることは毎日のようにある。

でも、確実に変わったことがある。それは、「私の周りには私を私のままで愛してくれる人がいる」という事実を受け入れられるようになったことだ。

たくさんの愛を受けて、少しずつ壊れた心が癒やされていることを感じている。


もし今、私と似たような経験をしている人がいたら、「あなたはあなたのままで十分なんだよ。」と言ってあげたい。

私自身、この言葉を心から信じられるようになるまでは、もう少し時間がかかるかもしれない。

でも、今私の周りにいる人たちは、この言葉を信じさせてくれるような人たちばかりだから、私も周りの人をありのままで受け入れられるように生きていきたいと思う。






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