あつい手–タクシーが留まる六月(短歌 六月七月詠みです)

若者の灰色のシャツの染みを見て猫達いくせんびきの濃き夏

恋愛の良いところ伸ばしゆく君もアボカドの種の綻びを持つ

なんとなく夏の海だねなんとなく小指立てれば人集まるとは

とりハムを作りし手のひら洗いおり塩と砂糖を摺りこみしとき

とりハムに声掛け違う例えればプール開きのあるという今日

生きること決めてから何もかも明るく可哀そうの歌うたえなくなりき

生きること決めたことない人らから可哀そうの歌唄えといわれし

アンモナイト、晴れ寄りの風 サ行から角質捲れあがってしまいそう

ほそきものかそけきものを選びたるタクシー留まれば君は笑うひと

飲食店の裏手口には鉢並び老いて時間(とき)からやはらかくせる

週末の忙しない身は飛ばれかかり 切符持つままテレビ観るなり

リビングのぬるさに父が耐えかねて熱き手を夜に冷やしに行けり

父の持つ鉱山に人が集いたるその熱き手を思い出すなり

このLINEスタンプ多分知っているまた夕焼けは続けざまにくる

ふと胡瓜の花は朝焼け水差しの湯気暮れて落ちるものなく風邪ひき

嘴に海掴みたる烏賊となりべつりわたしは君とばかり居るよ

ペン立てに貝貼り付けて 隠す地が見えなくなる頃現れたきみ

黒き壁に小さな窓の空いている家へ子どもが消えてく、風なり

こころみなを映してしまう鏡持ちあいうえお表子どもは書きたる

ホッチキスの空振り増えてなながつへ、類まれなるほど細き芯

はなむけのバナナ送ってみたいほど空っぽの郵便受け持って来ていて

寂しさよ赤子のこぶしの中にある毎夜上げられる白い腹の鯨

海上保安 吹き出しに唾を吐きつづけてその人の長い長い、夏休み

さわさわと寝起きに聞こえる川音が心配なリード伸びやかな犬

牛乳の瓶のともしび見えさうな町国家批判底に貼りつき

やがて無分別なジェットコースターが又上がる午トイレの水音に押されており

生き残り の響きにコップ一杯ですくったあまたのみずのにおいせる

しくしくと酩酊極まれる音がするまま白い紙折りこむさま

何一つ残さないまま消える雪 嗚呼だって何もしたくないんだもう

鉛筆の残り一本となる僕の体重軽しなによりも軽し

ひと夏の実験だったと言い張られただ一人複雑化していく僕なり

#短歌
#tanks
#小説
#創作

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WataL
ポエム、詩、短歌などを作ります。 最近歴史に興味があります。