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習慣を連結する jointing your habits

習慣化について何度も何度も書いている。なぜならば、習慣化について反復して書くことでもっと習慣化について気にするようになり、さらに実践したいと思えるようになるからだ。例えば、ホチキスの針を補充するような小さな習慣でも、それが必要なことであれば(つまりしばしばホチキス針が切れて困るといった事態が生じるようであれば)重要な習慣となる。なお、このホチキス針の例は些細な作業の例として作家のティム・フェリスがよく引き合いに出すものでもある。

自分自身の行動を変容させるだけでもたいへん難しいのに、他人の行動変容を促すのはもっと難しく、望みの少ない賭けである。だから、私は他人が何かにブロックされて習慣化を阻害されているときに、ヒントになるかもしれないアドバイスや材料になるかもしれない情報を提供することはあっても、それに触れて何を本人が気付けるか、気づいた上で自分自身の状況や境遇に当てはめて何を始めるかは相手次第だと捉えようとしている。というのも、気づきは本人という泉の中から自然と湧き出して来るもので、他人が無理強いできる性質のものではないからだ。とはいえ、やはりせっかく支援するからには何らかの試行錯誤ぐらいはやってみてほしいと期待してしまうのも事実であり、人情である。

習慣化に対して私がよくする提案のひとつは、「既に手持ちの習慣に始めたい新しい小さな習慣を溶接する」というものである。あなたはひょっとしたら自分は何も習慣を持っていないと思うかもしれないが、そんなことはあり得ない。四六時中すべての行動をアタマで自覚して考えておこなっているわけではない。あなたが成人なら、それなりに自分の身体を「自動化」できているはずである。例えば、通学や通勤ができているなら、それ自体が立派な習慣である。なぜならば、習慣とは定期的な反復行動であるからだ。そして通学や通勤ができているならば、それに伴う支度や通勤中・出勤後の仕草なども毎回共通部分があるはずである。まずそこを見直して毎回同じ動作をしたり、持ち物リストをつくって忘れ物を防ぐだけでもちょっとした便利さを感じるかもしれない。

例えば、その持ち物リストに「イヤホン」を追加して、毎朝通勤時にモーツァルトを数分間、一楽章だけ聞くことにしてもいいだろう。そうすれば、「毎朝クラシックを聞く」という習慣があなたの生活に組み込まれたことになる。これを一日だけやっても確かにどうってことはないかもしれないが、やった日はカレンダ(紙の壁掛けカレンダでも手帳のカレンダでもGoogleカレンダでもよい)に印をつけていき、それが何十日、何百日も溜まっていけばちょっとした自信になるはずだ。なぜならば、もしそういうルーチンができるならば、クラシック以外の音源でも新たな習慣を作ることができるようになるはずだからである。例えばクラシックを落語にしてみたり、オーディオブックや語学教材に変更してもよいだろう。

ここで、もし続けるコツがあるとしたら、反対に「通勤のない日は敢えて聴かない」ことである。いつでもやれるだけやろうと全力を出すと疲弊してしまい、結局長続きしないのだ。なぜならば、やらないときややめ時を定義しておかないと疲れてしまうからである。このように「やらない条件」を決めることも習慣化の初期の段階、いわゆるベイビーステップの段階では重要なのだが、従来の習慣に溶接するというやり方であれば、その従来の習慣をやらないときはやらないのだというかたちで自動的にやらない条件も定義されることになる。これが従来の習慣に溶接して新しい習慣を増やすメリットである。

(1,480字、2024.02.04)

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