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行政機関に約款に基づくサービスをご利用いただくということ

藤井@JX通信社/WiseVineです。この数年、所属は転々としていますが、3社連続して『行政機関に約款に基づくクラウドサービスをご利用いただく』という難しいことに取り組んでいます。放送役務、マッチング役務、危機管理情報配信役務、と内容は違えど、『民間にもご提供している役務を行政機関にも同じルールでお使いいただく』という点は共通です。

何が難しいかといえば、約款なので原則として個別のルール変更が効かない中、どうやって行政特有の調達ルールや条例等規則に従うか、また個人情報の取り扱いや公文書に関するルールと整合していくか、というところにあります。

条例の中には例えば『納品時に環境基準を満たした車両を使ってください』みたいな「あ、はい…わかりました」みたいなものもあるのですが、一番ややこしいのは個人情報の取扱いです。2000個問題と一般に呼ばれる個人情報に関する取り決めが各自治体・官庁でバラバラ、という問題は順次解決すべく取り組みが進んでいますが、一方で、行政機関自身が何らかの情報を発信するサービス(幸い…というかJX通信社のサービスにはそのようなものはあまりないのですが)については、「それが公文書にあたるのか」という別の問題も孕みます。

それが露骨に出たのが、デジタル庁(仮)のnote開設、という話題でした。

これを意識したのかしてないのか、note社は「○○-gov.note.jp」というドメインを中央省庁にも(いままで自治体には出していましたが)提供します、というリリースを打っているようです。なぜデジタル庁(仮)はわざわざdigital.go.jpドメインを使ったのだろう。

なお、上記のtogetterでも再三参照されているNISCによる政府機関等のサイバーセキュリティに関する統一基準はこちらにあります。

わざわざ約款に基づくサービスの定義や、ソーシャル・ネットワーキング・サービスに関する条項が設けられているのですが、書いてあることは「各団体で責任者を定めてしっかり検討しようね」ぐらいのことなので、あんまり参考にならないかもしれない。

行政機関はもっと柔軟かつ積極的にクラウドサービスを利用できるよう、ルール整備を進めていただきたいと強く願うところなのですが、デジタル庁(仮)に今一番必要なのは、発信力に長け、かつ公共分野と民間分野両方に強い弁護士なのではないか、と思う次第です。

自分の仕事(地方自治、防災、AI)について知ってほしい思いで書いているので全部無料にしているのですが、まれに投げ銭してくださる方がいて、支払い下限に達しないのが悲しいので、よかったらコーヒー代おごってください。