危険物取扱者保安講習のオンライン講習の実現にふとしたきっかけで協力しました
JX通信社/WiseVineの藤井です。遡ること2020年8月、総務省消防庁に突如相談を受けまして、危険物取扱者保安講習のオンライン化をお手伝いした、という件がやっと実現したので、謎のプレスリリースを打ちました。その顛末についてメモを残します。
危険物取扱者保安講習is何
ガソリンスタンドから石油コンビナートまで、あらゆる「危険物」を取り扱う場所には、危険物取扱者という資格を持った人が必要です。そして危険物の取り扱いに関する知識は、化学物質の種類もどんどん増えているし、事故のケーススタディもしていかないといけないので、定期的に保安講習というものを受けることが定められています(消防法第13 条の23)。
この講習の実施は都道府県が行うことになっているのですが、このコロナ禍の中、毎年10万人近くが取得しているこの超メジャーな資格の講習を一箇所でやることは現実的ではありません。というわけで、消防庁では2020年6月の段階で、オンラインで実施できるようにするので続報を待て、と通達を出していました。たいへん迅速で素晴らしい動きだったと思います。
そして2020年8月、JX通信社に突然、「御社に協力を求めたい」という連絡が来たのでした。なぜ。うち、そういう会社だったっけ(当社はビッグデータ解析を主業務とする仮想通信社です)。
コロナ禍におけるAIナレーターのニーズ
どうやら、消防庁には当社のAIリスク情報配信ツール「FASTALERT」を導入いただいているのですが、そのFASTALERTのナレーション機能(共同通信社の「ピーコ」という音声通報サービスにあやかって「ビーコ」と呼んでいます)を耳にした消防庁のえらいひとが、「これだ!」と思いついたようなのです。リモート講習用の映像教材を作って各都道府県に配布してあげたいけど、収録スタジオに何人も人を集めて何度も作り直していたら密だし、時間もかかる。だからコンピューターにナレーションをやってもらおう、と。
確かにビーコは毎日何百回も「どこそこでこんな災害がありました」と読み上げまくるので、きっと危険物に関する原稿も上手に読める気がします。正直、長文のナレーションのために用意した機能ではありませんが、新型コロナウイルスに関する情報を全国に提供することで少しでもリスク低減に取り組もうとしている当社ですので、これはひと肌脱ぐべしと、技術陣に事情を説明し、ご協力することにしたのでした。対価はいただいておりません。
そして映像はできあがった
映像制作会社、保安講習を実施する協会の皆様、そして消防庁と何度となくやりとりをしながら、結果的にビーコは単なるナレーションだけでなく、問題を出題したり、近年の事故の事例紹介をしたりと破竹の活躍を映像内で繰り広げ、無事に去年のクリスマス、「映像ができたので使ってください」と消防庁から各都道府県に通達が発出されるに至りました。
新しい生活様式が定着しつつある中、様々な「ルーチンワークで行われていた業務」に否応なくメスが入り、その実現のために様々な省庁の部門で、既存のルールを柔軟的に運用できるよう、必死の創意工夫が繰り広げられています。テクノロジーでそのお手伝いをすることは、GovTechという世界に生きる私にとって、地味であっても、ひとつずつ取り組んでいきたいことのひとつです。これからも各省庁、自治体の皆さまの小さな悩みの解決に微力ながら貢献していきたいと思いますので、何なりとご相談ください。さすがに今回は「…ちょっと無理だったら人間のアナウンサー紹介しよう」と思いながらやっていたのは秘密ですが。
FASTALERTが実際にどんなふうに動くのか、ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。