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長編ミステリー コSign

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2年半費やしましたが、ようやく小説が完結しました。 「コ」は小・故・固・呼・股・娘・己など多くの字を包含する「コ」です。 別に自信がある訳ではないのですが、横溝正史ミステリー&ホ…
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#モルヒネ

7.デート、そして

 東八道路を東に走り、人見街道を経て井の頭通りへ。ちょっとした渋滞はあったが順調に走った。京王線の下を潜ると彼女のアパートはすぐそこだ。慶菜の実家は八王子市南部の地主で、大学に通うにはいささか遠いという理由を盾に一人暮らしをさせて貰っていると聞いた。
 年頃の娘を持つ親は、心配で実家に置いておきたがるが、娘本人は年頃だからこそ実家を出たいものだ。異性との交際に口を出されるのが嫌だからに決まっている

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8.震える弥生

 痴漢、バイオレットピープル、殺人、MEA、アンダーテイカー、色川容子、加圧ジム、矢野元教授、篠崎陽晴、品田風美、アイグレー、加古を含めて捜査妨害と思われる犯行、そしてモルヒネ。要素が多過ぎて、頭がこんがらがって事件のこれといったヒントが見つからない。
 そこへ加古から着信が。
「おはようございます。いま彼女を用心しながらアパートまで送ったところです」
「そうか。彼女の名前は?」
「高島慶菜。明京

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9.蠢く繋がり

 裏道に面した小さなマンションの前で、千堂は車から降り立ち、入口で指紋認証をして402号室に行く。セキュリティーに関しては完璧な場所である。軽くノックをして「わたしだ」と言って中に入る。そこはバイオレットピープルの隠れ事務所兼現在の矢野元教授の住居だった。事務所用の6畳ほどの部屋と広いLDKで、外観の平凡さに反して一目で高級とわかる内装だ。床も壁もアイボリー一色だが、本物のフローリングと生木の壁で

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10.乱れたシナリオ

 隣室ではなおも取り調べが続いていた。
「バイオレットピープルというグループ名だが、なぜパープルなんとかではないのか?」
比較的穏やかに江頭が尋ねる。
「じつはビレッジパープルという候補もあったんですが、これは既存の音楽グループと同名かつ『村』っていうのもちょっとですし、集団を表す『グループ』も違うなあと考え、行きついたのが菫色の人々つまり『バイオレットピープル』なんですよ」
「なるほど。じゃあ、

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11.ほどけないもつれ

 外出こそできないが、同棲状態でどちらの両親にもバレないのは最高だ。慶菜も同じ気分らしい。ただ、警察の寮なので、音量は控え目にしないと迷惑になる。幸い雨音が大きいが、慶菜は達するときの声が大きいので、それは必死に我慢させた。
 「僕さ、卒業したら塾講師しながらミステリー書こうと思ってるんだ」加古は正直な気持ちを言う。慶菜も賛成した。
「私は目先OLだろうけど、贅沢言わなければ生活できるわよね」と嬉

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12.不思議な凶器

 多和田茜を帰らせて、野津と岩田は捜査会議室で推理を練っていた。
「矢野・アイグレー・多和田・品田というラインが成立するとしたら、さあなあ」と岩田が苦慮する。
「まあガンさん、矢野がバイオレットピープルでありかつアイグレーというのはちょっと飛躍した推理になってしまいます」
「だよな。もうひとつ、千堂・篠崎姉弟・アンダーテイカー・モルヒネ。ここも、モルヒネを徹底追及できないが、関連性は知りたい」

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13.証言の円舞

 警察寮に戻ると、ほどなく加古のスマホが鳴った。野津からだ。
「加古くん、どこかで体液を採取された覚えはないか?」
「あ、それはその、あります、けど、いま言えません」しどろもどろになる。黒猫みゃあこしか思い浮かばなかったから、慶菜の前では話せない。
「わかった。じゃあ、ちょっとそこへ行くから、寮の前で話そう」
スマホを置くと慶菜が、
「どうかした?」といぶかった。
「いや野津さんと個人的に話がある

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14.誰がウィクトーリアか

 三鷹北署に戻ると、入り口前に報道関係者が来ていて、水巻という男が指名手配されているがどう思うかなどと訊いてきた。二人は何のことか分からなかったが、逆に質問すると、
「岸村の殺害犯ですよ。知らないんですか?」と言われた。最新のニュースはうっかりだがテレビもラジオも聞いていなかった。岩田が、
「それは警視庁に訊いてくれ」とうるさいとばかりに言ったが、
「連続殺人の捜査本部はここでしょ?」と別の記者が

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15.消された二文字

 茜のスマホには『明京女子』という連絡フォルダがあり、二十人ほどの人物が並んでいた。それ以外にも『他大学』というフォルダもあり、そこには九人の連絡先があった。
「この人物すべてに当たれば、実行犯がいる可能性はあるんだね?」岩田が訊く。
「そうですね。可能性でしたらあります」
「早速聞き込みをしてみる。野津、捜査本部に伝えて欲しい」と岩田が言ったとき、江頭が部屋に入ってきた。
「陽晴が証言しました。

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16.豊里裸族

 その頃、加古は一人でネット検索をして、事件のことを調べていた。千堂聡介の名前も挙がってくる。驚いたのは真偽のほどは定かではないが義理の娘、瑞穂の父親は先日外国で亡くなった橋爪大使だという情報だった。確かに橋爪大使は千堂の後ろ盾で、LGBTQ開放の賛同者でもあった。だが現在の千堂は篠崎さやかと不倫しているのは確定だ。連続殺人の主犯は千堂だろうか、と考えた。実行犯が誰なのか情報不足で分からないが、矢

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17.晩春の嵐光

 『ああ、加古くん。なんか久し振りな感じだね。何か新情報があるの?』
「豊里村のことですが、地図を調べたら、篠崎家と千堂家が隣り合わせなんですよ」
『昭和30年から40年くらいの地図?』
「そうです。まさにその時期ですね」
『さやかと千堂はそれを知っているよな、普通』
「ええ。売却のときに地図を見たはずです。ということは千堂と篠崎さやかは、完全な他人ではない可能性がありますね」
『だよね。戸籍がい

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