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【展覧会レポ】デ・キリコ展 @ 東京都美術館

東京都美術館で開催中の『デ・キリコ展』に行ってきました!

◆公式サイト


デ・キリコという人

・ギリシア生
・ミュンヘンの美術学校中退
・90歳まで創作活動
・形而上絵画
(形のないもの、超自然的、理念的なもの)
 →シュルレアリスムの画家に影響を与えた
・真の画家になることを目指した。

画家特有のアイデンティティ喪失や、人間関係の問題などはないようで(笑)。純粋に画業に向き合ったデ・キリコの生涯を初期から晩年までの作品とともに追体験することができる展覧会です。

※撮影はすべて著者によるものです。
※展覧会内は撮影不可でした。

形而上世界へ

「風変わりで色とりどりの玩具でいっぱいの、奇妙な巨大ミュージアムを生きるように、世界を生きる」

ジョルジュ・デ・キリコ

幼少期をギリシアで過ごし、鉄道技師の父親に連れられて各地に移り住んだデ・キリコ。そうした時代に見たもの、感じたことが彼の形而上世界を構成することになったのだと思います。

また、3歳下の作曲家の弟とも仲が良く、二人の関係性も絵画の中にしばしば引用されています。

そんな彼の創作に影響を与えたのが、

・アンリ・ルソー
・アルノルト・ベックリーン
・マックス・クリンガー
・ニーチェの哲学

だったのだとか。こうした下地が彼の作品世界観を構成していったのだろう。

そして、とある秋の昼下がり。彼は自らが形而上世界に触れることとなる。イタリアのサンタ・クローチェ広場を眺めていた時、あらゆるものを初めて見ているかのような感覚に陥り、形而上絵画の構図が浮かんだという。初期の歪んだ遠近法(正面からの構図に側面からの要素が入る)では、広場や塔などをモチーフにこうした世界観を構築していった。

展覧会では、形而上絵画初期の作品群や、戦争下で見出した形而上室内(意味を切り離された無関係なものの出会い)など彼の作品とその世界観をたっぷり堪能することができます。彼の描いた世界がどのように見えるか、ぜひそんなことを考えながら鑑賞してみてください。

そして、マヌカン(マネキン)をモチーフとした作品シリーズや、その彫刻、デペイズマン手法で描いた家具や剣闘士のシリーズなどなど、、、その生涯でたくさんの作品を制作しています。

ローマのボルゲーゼ美術館でティツィアーノの絵画に魅せられ、一時的に古典絵画の作風に立ち戻りますが、その時に彼の基礎画力が半端ないことも展覧会の中できっと体感できると思います(笑)。


デ・キリコがデ・キリコをリブートする

マヌカン作品はこういうシリーズです

挿絵や舞台美術などの仕事に携わりながら、彼はやがて自らの作品を自らリブートしていく。晩年の作品には、過去に見出してきた作品や、記憶の中にある豊かなモチーフ、主題、様式などを遊び心をもって、組み立て、解体し、再構成していきます。まさに彼自身の作品集大成となった訳です。

自分の作品のリブートやリバイバルは、当時批判もされたいたが、同時代にアンディ・ウォーホルが称賛したことで少しずつ認められていく。芸術は時代に合わせて、その見方を変化していくべき、と。

真の画家になることを目指して、創作に対しての、そしてこの世界に対しての探求を止めなかったデ・キリコ。

不思議な世界観の作品は、それを観ているだけでももちろん惹き込まれますが、彼がどんなバックボーンで作品を見出したのかしれたことで、さらにデ・キリコとその作品群を好きになりました。

ぜひ、デ・キリコの創り出した形而上世界へ探求の旅に出てみませんか?ムロツヨシさんの音声ガイドもおすすめです!

展覧会は、8月29日まで東京都美術館で開催中です。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


※執筆にあたり解説パネルやチラシ、公式サイトなどを参照しています。

※記載の考察や感想は個人によるものです。あらかじめご容赦ください。

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