見出し画像

【展覧会レポ】シダネルとマルタン展 @ SOMPO美術館

 こんばんは、whipです。
 先日SOMPO美術館で開催中の『シダネルとマルタン展』に行ってきましたので、レポしていきたいと思います。

【シダネルとマルタン】

 今回の特別展でフィーチャーされる二人の画家について、ざっくりまとめてみます。二人はパリの「サロン」で知り合い、交流を深めた友人でした。

■アンリ・ル・シダネル
 ・インド洋のモーリシャス島に生まれ、10歳の頃にフランス北部に移住。
 ・パリで絵画の勉強をした後、各地で絵を描き、北部に家を買う。
 ・次第に、人のいない風景画を得意とした。
 ・「食卓シリーズ」と呼ばれる人のいない風景とテーブルモチーフが
  印象的。ついさっきまでそこにいたかのような描写に注目したい。
 ・自宅での庭手入れに没頭し、バラの花をたくさん植えた。

■アンリ・マルタン
 ・フランス南部に生まれる。
 ・南部での制作を行い、明るい鮮やかな雰囲気が特徴的。
 ・市庁舎や大学などの巨大な壁画作品を多く残した。
 ・ある程度定型化された人物群を作品内に配置する。
 ・南フランスに別荘を設け、田舎風景を描いた。


 二人が生きた時代の美術は、印象派の流れから、象徴主義や世紀末美術への転換期でした。「最後の印象派」「印象派の末裔」などと本特別展では表現されている通り、ゴッホの筆使いやモネの色彩など数多くの印象派画家たちから影響を受けていたことが作品を通じてわかります。それでいて、象徴主義(人の内面を描こうとする流派)的側面も見られるのがとても面白い点だと感じます。ぜひそうした点にも注目してみてください。
 印象派の画家たちは当時、その作風に価値観をあまり認められてきませんでした。ゴッホは生前にほとんど作品が売れていません。しかし、シダネルとマルタンの作品は、そうした印象派の系譜を抑えながらも、アカデミックな中で制作されたこともあり、当時から人気があったようです。その点でも「末裔」としての活躍が評価されているのかもしれません。


【北と南】

 交流の深った二人ですが、個人的にはその作風はテイストこそ似ていながら、モチーフや雰囲気は真逆であったように思えます。

 北のシダネルは、雪の中の風景がや人のいない世界観を創り出し、しかしながらその細部を観ていくと、画角の中に人そのものはいないものの、その気配は感じられる点がどこかノスタルジックでメランコリックさを演出しているようです。晩年の「食卓シリーズ」は彼の行きついた真骨頂だったのでしょうか。

 一方、南のマルタンは、太陽の光前回の色合いが多く、市庁舎の壁画などにあるように計算された構図に人を配置し、まるで写真のような絵画を仕上げていきます。最終的には実在する田舎風景を繰り返し描いていく中で、その中にはあまり人物が登場しなくなります。ですが、どこかシダネルのそれとは違う雰囲気を私は感じます。

 印象派というと日本でもとても人気ですが、この二人はあまり知名度がないようにも思えます。私も西洋美術史を学んでいるなかで、美術館で作品に名前がとまるようになったのがきっかけでした。当時の時代背景や二人がどんな風にして作品を仕上げていったのか、思いを馳せながら展覧会を楽しんでみてください。

 いくつかの作品は写真撮影が可能でしたので、雰囲気だけでも伝われば幸いです。

マルタンの作品 撮影:著者
シダネルの作品 撮影:著者


◆公式サイト

特別展は6月26日まで開催中です。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

※執筆にあたり、サイトやチラシ、解説パネルなどを参照しています。


この記事が参加している募集

#休日のすごし方

54,768件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?