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以和為大 学生大会号より…


「知る」ことの大切さ。このコロナ禍で学んだことの一つだ。
 

 「スライドの使い回し」「手抜き」「課題が多すぎる」……。オンライン講義について学生からそんな声が上がっていると知った時、学生と講師双方の考えていることを伝えたいと取材を始めた。そして、学生の声を大学に届ける目的で開催される学生大会に合わせて発行することを目指した。

 取材を始めるにあたって三つポイントがあった。講義資料を提供する側の講師の意見を知りたいということと、学生と大学の狭間に立つ自治会が考えるコロナ後のビジョンを聞きたいということ。そして、学生の考えていることを可視化したいということ。

 取材前は少なからず冒頭のコメントに同調する気持ちがあった。しかし、取材を終えてみると、講師は想像以上に講義をわかりやすく伝えようと工夫していたことを知った。一方で、アンケートを実施してみると、回答数は少ないものの意外な結果が見られた。

 当初は一・二回生の方が報道で伝えられているような孤独から来るメンタル的な問題を抱えていると考えていた。しかし、三・四回生の方が下級生以上に孤独感を抱え、卒業まで友人と会えない可能性も考えるなどメンタルへの影響があることがわかった。こうした取材結果を伝えることで、お互いの立場を理解し、改善する助けにしたいと強く感じた。

 何かを変えようとする時、人は感情に訴える方法を選んでしまう。確かに誰かの心は動かされるのかもしれない。しかし、むき出しの感情をぶつけた時点で、相手を理解しようとする心は一瞬にして冷えてしまう。まずは双方の考えていることを知り、分析する必要があるのではないか。そのステップあってこその話し合いだろう。

 「報道」とは「道を報じる」と書く。メディアは問題の双方が考えていること、つまり双方の歩んできた「道」を示すことが使命ではないか。それを知らせることは社会を支える根幹でもある。そして、どれほど小さい組織でも、メディアである以上はその基本姿勢が変わることはない。

 それだけではない。「知る」ことで相手に思いを馳せることができる。相手がどんな立場・環境にあり、どんなことを思い、どんなことをしたいのか。ただ、それらをどれだけ知っても、ほんの一部でしかない。ましてこの広大な社会のことともなれば尚更だ。それでも知り続けることで、少しは思いを馳せる深度が増すはずだ。

 七夕も近い。今は会えない誰かを思って空を見上げ、祈りたい。そして、一記者として一個人として、様々な「相手」を知る努力を続けたい。どうか、晴れますように。

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