2017年7月 SALU / INDIGO
約5年前のアルバムリリース時、彼にインタビューをさせてもらった。その時の印象としては、とにかくナイーブでセンシティブで、人当たりはすごく柔らかいけれど、ふとした時に寂しい表情をするような、そんな男がラップをすると一気に覚醒する、というような。まさにアーティストだな、と感じた。
そんな彼がメジャーデビューし、ミニアルバム1枚、フルアルバム2枚を経て(その間にSKY-HIとの共作アルバムを挟む)リリースした今作『INDIGO』だが、これまでのどのアルバムよりもポップで耳なじみが良く、彼のメロディーセンスや歌心が前作よりも更に爆発した作品になっている。そして、初めて彼に感じた印象が変わったわけではないが、そういうナイーブでセンシティブな部分を、ポジティブに転換する強さ(こういう事も良い意味でポップだと思う)を持ったのではないだろうか、という印象を受けた。
ちなみに私が個人的に彼の変わらない魅力だな、と思っているのが彼の声質だ。ドープなトラック上ではドープに響くし、ポップでメロディックなトラックの上だと、すごく耳触りが良くスムーズにメロディが耳に入ってくる、という非常に特異な声質だ。
ヒップホップのアーティストにとって‘ポップ’である事がなかなか正とされず、今も正ではないという意見が多い気がするが、筆者個人としては、それぞれのラッパーにそれぞれの役割があるのではないか、と考えている。ヒップホップ=ハードにスピットしなきゃいけない/不穏なトラック、タイトなトラックじゃなきゃいけない、ではなく、そういうのが似合うラッパーもいて、その逆で聴きやすいラッパー、トラックもあって、それら全てひっくるめて日本のヒップヒップが深淵なものになるのではないか、と。そういう意味で、SALUはSALUという立ち位置で、深みのあるポップネスを我々に届けてくれている、と思っている(でもやっぱり聴いてると彼は根っからのラッパーだな、と思う)。
②『LIFE STYLE』で歌っているように、彼は彼のやり方で‘このRAP GAME’を掻き回す、という役割に気付いたんだろう、と今作を聴いて感じた。
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