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パスワーク 12 吊られた男

夢日記 1204「12吊られた男」第一夜

目のまえに大きな火輪があった。
オレンジ色と赤と黄色、ところどころに青と緑、そして黒。混ざり合って燃え上がっている。
熱はまったく感じない。火焔が絶え間なくうねりながら踊っているようにみえる。

よく見ると向かって左上の炎が最大となっていてここが先端なのだろう。螺旋状に奥に続いている。左回りに旋回している。

火焔はかたちを変えながら「5」になり、「3」になり、「1」になる。
なぜかしらその数字を指していることが自分にはわかる。

描写するのが難しい。

目覚めても火輪は眉間の奥のほうに残っていたので、定着させた。
試しに胸に持って行ったら、あわい暖かさを感じた。
消える前にいろいろ試してみよう。


目のまえに三人の美女がいて、大きな透明の水槽が二つある。
水槽には温泉が入っていて二人の女は気持ちよさそうに、そして楽しそうにはしゃいでいる。
もう一人の女はそれを見守りながら温泉で顔を洗っている。寂しそうだ。

水槽のかたわらで、私と相棒の女は彼女たちを見守りながら、水槽がもうひとつあったら良かったのにねー、と感じている。

水槽の中の女の一人が服を着て出てきた。
「もうすぐ誕生日なんですってね」と私に問う。
「そうです、12月12日です」私は答える。
彼女は驚いた顔で私を見ている。

「世間では12/12は不吉だと思われるらしいけど、私はわりと気に入っています」
私は楽しそうに応えている。


夢日記 1205「12吊られた男」第二夜

友達5,6人のグループで友人の山荘に向かっている。
その山荘は山の頂上のそのまた上に基礎をつくって入口まで縄梯子で登らなければならない。
私が最初に梯子を登って、玄関のドアの取っ手にやっと手がかかった。
ドアをあけると先に来ていた友人たちが出迎えてくれた。

私は左手に持っていた荷物を出迎えてくれた友人に渡そうとするのだが、左手に力が入らない。やっとの思いで荷物を引き上げ玄関口の友人に渡す。
一緒に来た友人たちはみなそれぞれに荷物を持っているので私は右手で梯子を掴んで後続の友人たちの荷物を受け取り先に引き上げようとするのだが、渾身の力を振り絞っているにもかかわらずなかなか進まない。荷物自体はそんなに重くないはずなのに、どうしてか左手に力が入らないのだ。

場面が変わって、私はバスの二人がけの椅子に弟と座っている。
弟は私の手を取り、涙目になって声を詰まらせながら何かを謝ろうとしている。

父親が遠目から何も言わずに二人の息子を見守っている。


夢日記 1207「12吊られた男」第三夜

はじめての幽体離脱

僕はベッドにいて傍らのだれかと話している。
「いま7人が来ているから一緒になって遊んでみたらいいよ」

誰と話しているのか思い出せない。娘かもしれない。
7人というのは、7人の小人? 精霊? あるいはその昔、同じ船に乗り合わせたことのある七福神たちだったかもしれない。
7人が一体のものだということだけ、僕にはわかっている。

そろそろやすもうと思っていたその瞬間、布団がズルズルとずり上がってきて頭をすっぽり覆ってしまった。
布団を剥がそうとしても何かが押さえつけていてうまくいかない。
なにやら胸の上に気配がする。これはあの7人が来たのだなと直感する。

突然からだが動かなくなった。
ひさびさの金縛りだ。もがいてみたが無理だ。だが怖くはない。

僕は抵抗するのをやめて力を抜いてみた。
試しに上半身を無造作に起こしたら軽々と起き上がった。誰もいない。気配も消えている。
もしや!と思って振り返ると、そこには僕が眠っていた。

ああ、これが世に言う幽体離脱だ。ついに初体験だ。
僕はこの一年以上、幽体離脱の実践を目指して訓練して来たのだった。

上半身はなんなく抜けたが腰から下がなかなか抜けない。
僕は少しずつ自分の体から霊体をそっと引き剥がしていく。僕の体はまだ眠っている。
そうしてようやく全身が抜けた。

僕は僕の体に毛布と布団をかけてやる。

ベットから降り立ちドアに向かう。そのままドアを開けようとしてふと立ち止まった。幽体だったら壁抜けができるはずだ。

僕はおそるおそるドアに頭を突っ込んでみた。抜けた!
かすかに肌を空気が撫でる感覚があったが抵抗はまったくない。
そのままドアを抜けてリビングに出た。

リビングルームは僕のよく知っているいつもの部屋で変わったところはなにもない。
ただ窓の外は昼間の光であかるく輝いている。まだ夜が続いているはずなのに。

僕は庭に面した窓を抜けて庭に出た。
ガラスと網戸を抵抗もなく突き抜けることができた。外は晴天だ。

ここ半年、庭の草刈りを怠っていたので庭は雑草だらけだ。
僕は庭を見渡しながら右手をかざして庭を整えるように念じた。
雑草はきれいに刈り取られ、芝がはられてところどころに花壇ができた。
コスモスが咲いているところをみると季節は秋なのだろう。

庭の端っこの方に大きな木製の卒塔婆が三本立っている。梵字のような、記号のような文字が墨で書きつけられている。
その隣にはこじんまりした石造の墓もある。墓にはお花が供えられていて、モンシロチョウが花の周りを翔んでいる。

耳慣れた音楽が聞こえた。それにどこかのスピーカーからアナウンスが流れている。
空は真っ青で空気が透き通っている。
僕は素っ裸のはずだったが今はパジャマを着ている。
あまりにもいい天気なのでタバコが吸いたくなって、家のなかに取りに戻ろうとした。
さっき抜けて出てきた窓をまた通ろうとすると鼻先が網戸にぶつかった。

あれっ?

手を差し出してみたが通らない。普通に物質の抵抗があるだけだ。困った。鍵が閉まっている。
壁抜けして出てきたから当然鍵なんか持っているはずもない。締め出されてしまった。

僕は鍵を閉め忘れた出入り口がないかと、建物のまわりを歩き回って探している。

近所の子猫が戯れてきて僕にお尻を向け擦り寄ってくる。
僕は無視してなおも家の周りを歩く。

今度は子犬が戯れてきて僕に飛びかかってくる。
キャンキャン鳴いてジャンプしてくる。かなりしつこい子犬だ。

かたわらに親犬とおぼしき大きな犬が寝そべっている。
ガルルルルー。こちらを見て唸っている。
僕に対して唸っているのか、子犬をたしなめようとしているのか、僕には判断できなかった。


夢日記 1210「12吊られた男」第四夜

とても大きな身体を眼の前にして、私は緑色の三つの石を取り出して周りの人に語っている。
この身体は個人ではなさそうで、チームとか、組織とか、国家とか、そういう大きな身体のようだ。

この身体の胸の位置に、ちょうどアナハタチャクラの位置にこの三つの緑の石を入れなければならない。そうすれば身体が動き出す。
それぞれの石にはじゃらじゃら鎖が付いていてどこかに引っ掛けるところがあるようだ。

場面が変わって、家族や友人と海に来ている。
海はどんよりと曇りで、私と相棒は岸に腰を下ろして海で泳ぐ人たちを見ている。
かたわらに緑色のトートバッグがあって、中を見ると大粒の貝がぎっしり詰まっている。
相棒が中身を検分している。どうやら貝殻らしい。12cmくらいの二枚貝で、ふっくらした三角の形をしている。
相棒は無造作に貝殻を海にばらまく。おいおい、海を汚すなよ。

海辺のホテルの一室で私は寝ている。
だんだん覚醒に近づいている。目はつむったまま、右手に暖かい感触がある。最初は自分の左手を握っているのかと思った。
でも左手はシーツの感触を感じている。だんだん目覚めてくる。他人の手だとわかる。
目を開けるとかたわらに女の人が寝ている。その女の人が私の手を握っている。しっかりと。
私は女の人を起こさないようにゆっくり指をほどいて部屋を立ち去る。

朝ホテルで目覚めた。今日は天気がいいので朝から泳ぎに行こうとしている。
「昨日着ていた水着を知らないかな」私は娘にたずねる。
「お父さん、髪の毛をなおしたら」と娘は言う。
私は腰にバスタオルを巻いたまま鏡に向かう。
「お父さん、パンツを履いたほうがいいよ」ふたたび娘は私に注意する。


夢日記 1211「12吊られた男」第五夜

三柱。

水のはられていない透明な水槽の中に三つの柱がある。
その柱は神々で、それぞれ三つのパーツで構成されている。
神同士は互いに話し合って、三つのパーツを組み合わせて一番安定した、皆にわかりやすいカタチを探している。


祝祭。

僕は街中のマンションを友人たちとシェアして住んでいる。
今日は同居している友人たちと映画を観に行くことになっている。
上映の時間が迫っているにもかかわらず、僕にも友人にもいろいろと用事があってまだ出発できずにいる。

外国人の友人が迎えにきた。
ちょっと待って、今出るから。と言いながらみなモタモタしている。
僕はトイレで用を足していた。同居人のシオツカさんとトイレで隣り合わせた。世間話をしている。
本当に間に合わなくなりそうだ。

やっとみんなが家をでた。映画館まで走らなければ間に合わない。
僕とシオツカさんとイノシタくんは3人で街の中を全速力で駈けて行く。
イノシタくんは近道を知っているようだ。時間がない。

駅ビルに着いた。映画館は最上階にある。
シオツカさんが有料の高速シャトルエレベーターを奢ってくれるそうだ。
3人でエレベーターにすべりこむ。

すでにお客さんが乗っていた。異形の夫婦。彼らはテレビドラマの撮影のためにしばらくここに滞在しているということだ。銀河テレビ小説「セトウチ」というTVドラマを撮っていて、彼らもセトウチから来たそうだ。

エレベーターのドアが開くと、そこは映画館のロビーで人が溢れかえっている。
見れば顔見知りばかりだ。友人たちや親戚一同。まるで結婚式だ。

車椅子に乗った叔父が僕に話しかける。
「この時計おかしいんや。だいぶ遅れちょる」
「今度新しいのを持って行くよ」僕は叔父さんに応える。
父親もいる。タキシードを着て車椅子に乗っている。

いったい何の映画がはじまるのだろう。
よくよく考えて見れば、僕は何の映画を観にくるのか知らされていなかった。
なにかの祝祭であることは間違いなさそうだ。


犬女。

一つの情報をめぐって僕たちは対抗勢力と抗争を続けている。
今日も家の中が荒らされている。対抗勢力が家の中をあたりかまわず家捜ししたようだ。
小さなシェパードに似た犬が家の中に迷い込んでいる。
「誰か捕まえてくれ!」僕は叫んだ。

逃げ回る犬を誰かがようやく捕まえて僕のところに連れてきた。
ミルクを差し出すとゴクゴクと勢いよく飲んでいる。
次にバケツ一杯の食べ物を与えると、すごい勢いで食べ始めた。
むしろまる飲みしているといったほうがいいだろう。

犬は大きくなっているように感じた。すでにシェパードには程遠い外見である。しかしながらまだまだ毛が生えそろっていない子犬にも見える。

犬が喉を詰まらせている。僕は背中をさすってやる。犬は食べたものをすべて吐き出した。
吐き出したものの中にバナナがまるごと一本出てきた。犬はようやく落ち着いた様子でバナナの皮を手で剥きながら、そして齧りながら僕にお礼を言った。

僕はその時点で気づくべきだった。

場面が変わって抗争の現場。
対抗勢力は味方を人質にとって情報を要求してきた。
僕は情報が入っているビデオカメラを持っている。

対抗勢力は脅しはするが暴力はほとんどふるわない。人のいい連中である。
今も味方と一緒に犬が縛られて脅されている。
僕はその交渉の現場にいる。どうやらビデオカメラを渡すしかないようだ。

「その犬を放せ!」僕は相手に言う。
「この女のどこが犬なのだ?」「どこからどうみても人間の女だろうが。」

たしかに人間の女だ。
髪がボサボサでシュミーズ一枚で椅子に縛られている。
言葉も喋る。「わたしは1980年生まれで・・・」
若くもない。。。

いずれにせよ人質には変わりないので僕はビデオカメラと交換に犬女を放してもらった。
帰り際、バスに乗る前にタバコを一本くれた。対抗勢力はやけに馴れ馴れしい。

そのまま犬女の家に向かう。犬女は普通のアパートの二階の部屋に住んでいて、そこで事情を聞いた。
どうやら犬の真似をしていたわけではなく、犬であることは確からしいのだ。


夢日記 1215「12吊られた男」第七夜

死者の手引き。

天部から声が掛かり、仕事を手伝って欲しいとのこと。
なにやらマニュアルをつくるらしい。

そのマニュアルは死んだばかりの人たちを対象にした「死者の手引き」である。
死んだばかりの人は現世のイメージを多大に引きずっていて、それを解きほぐす必要がある。
わかりやすい図解を載せて、そのイメージに同化し現世の偏りを元に戻すのだ。
これまでの手引書も丁寧にわかりやすく解説しているのだが、最近の死者はその手引書でもなかなかうまくリセットできない。そこでより簡単で手軽なダイジェスト版が必要になったのだ。

僕は以前の「死者の手引き」を参考にしながら新たなイラストを起こし始めた。
山のような、ピラミッドのような三角形が上部で二つに分割され(台形と三角形の組み合わせ)、かたわらにはボートが描かれている。
一章から九章までで構成されており、死んだ直後の人に向けた入門編から、だんだん慣れてきた死者を対象にした中級編、それに死者は生前にさまざまな文化、習俗に縛られてきたので、かれらの経験した現世の状況をざっくり分類して、それぞれに対応するリセットの方法を解説している。

僕はその原版「死者の手引き」を読みながら、はたと気づいた。
これは僕が書いたものだ。いまの今までわすれていたが、これらのイラストは僕自身の筆によるものだ。
しかもその記憶はそんなに昔ではない。ここ数日から一週間くらいの経験だった。
僕は愕然とした。なぜこんな大事なことを忘れていたのだろう。

そのことを思い出したのと同時に記憶がどんどん不鮮明になってゆく。
僕は薄れる記憶の中、断片を拾い集めてとりあえずできるとこまで再生して持ち帰ろうとつとめた。

たしかに僕が書いた「死者の手引き」は夢の中に実在した。
でもそれは僕からは隠されている案件らしい。
どうやら入ってはいけない部屋に入ってしまったようだ。
とはいえ僕は自発的にそこに行ったわけでは無く、天部の要請に従ったまでだ。しょうがない。

平安期の小野篁を思い出す。
彼は昼間は官僚として宮廷に仕えて、夜は寺の井戸を抜けて黄泉の国へ行き、閻魔さんの補佐官をしていたという。
僕も僕の知らないところで他所で働いて(働かされて)いるのだろうか。天界なのか、黄泉の国なのか、あるいは他の何処かか?

今日の夢のポイントは自分の夢の一部が自分からは隠されていることだ。これは以前からなんとなく感じていたことでもある。そいうことがあり得るらしいということ。
この事実は僕にとってとてもショッキングな出来事であったわけだが、同時にこの件を深追いすると危険かもしれない、とも感じている。もしかしたら気が狂うかも知れない。。

夢の中で別の夢の記憶を発見するということは今までにもたびたびあった。懐かしい場所や懐かしい人の記憶に触れることもある。

今回がこれまでと違ったのは確かに存在するものが意図的に隠されたという事実である。
仮にそういう事実(ルール)があったとしても、今回のようにたまたま鉢合わせるということもあるわけで、そのような経験がこれからもあることを期待したい。

そもそも時間のない世界において、「あとさき」はないのであるから「未来の記憶」というものがあったとしても不思議ではない。

仮説1)
夢の中には意図的に隠される夢がある。
>>>なぜなのかはわからない

仮説2)
夢は永遠のなかに展開するのだから、時間の観念は存在しない。つまり「あとさき」がない。未知の記憶に出会うこともある。
>>>時間がないのだから「未来の記憶」もあり得ないのではないか?

仮説3)
覚えていない夢の中で、自分自身は活動(仕事を)していることがある。
>>>目覚めた時、夢を見た実感と充実感があるのにまったく(その片鱗も)思い出せないことがある

結論1)
とりあえずこの件は深追いしないことにする。
>>>僕の直感が危険信号をだしている

補足1)
二日に一度、濃度の濃い夢を見る。
>>>夢は毎日見るのだが、濃淡がある。僕の場合の周期は二日に一度らしい。たくさんのエピソードを見る日は、それぞれの夢の濃度が薄い。ガツンとくる夢を見たときはそのあとの夢が続かない。


夢日記 1216「12吊られた男」第八夜

五蘊のぜ

彫刻家のアトリエにいる。
いま彼は粘土を使って作品を作っている。
材料は粘土なのだが、つくっているのは極彩色の人体の造形だ。
人形は造形されながら言葉をしゃべっている。作家はそれを無視して懸命に作っている。
最後の仕上げに入る前にもういちどモデルの写真を確認したいと言っている。
私と彼のマネージャーは部屋の中で写真を探し始めた。なかなか見つからない。
そうこうしているうちに私は上着を脱ぎ、袖をまくり、いつの間にかその彫刻家自身になっていた。
作品の仕上げを始めようとしている。

後日その彫刻家の名前をネットで検索して見る。
韓国出身の二人組で名前を「五蘊(ごうん)のぜ」という。
いろいろ記事が出てくる。私の友達とも親交があるらしい。

目覚めてもう一度検索して見たがその彫刻家は存在しなかった。やはり。

五蘊というのは「色・受・想・行・識」
「色」は物質的存在、「受」「想」「行」「識」は精神作用。

唯物でも無く、唯識でもない、バランス感覚がシッダールタのいいところだ。


夢日記 1217「12吊られた男」第九夜

朝早く目覚めて、もう一眠りしようかどうしようかと思案しているうちに妙に目が冴えてしまい。しかたがないから寝たまま周天運動をしてみた。足の裏から気を入れてだんだん登って仙骨を経由し背骨を通って胸、首。そこで少し下がって二つに分かれて両肩から肘、手首を通過して両手のひらから出す。次は手のひらから同じ経路を通って両足の裏から出す。手のひらと足の裏がピリピリする。
繰り返すうちに呼吸がとても気持ちよくなって、というか呼吸自体がとても甘美なもの、美味しいものになって、いつの間にか夢の中に入って行った。

夢の中でも早く目覚めていて、しかも旅先からの帰りだったので、早すぎるけど職場に行こうと思い立ち徒歩で向かう。

職場に向かう途中に自宅があるのだが、それを通り過ぎようとして家に明かりが点いているのが見えた。
不審に思って門扉を開けて中に入る。鍵が開いている。明かりを消す。
「電気消さないでくれよー」と声がする。弟がいた。出社前らしい。
そういえば弟と二人暮らしだった。僕は長らく家を開けていたので忘れていたのだ。

玄関にはピカピカに磨かれた高級そうな靴がある。何足も。自転車に立てかけている。
なんだ、いい暮らししているんだな、と僕は思う。

自分の足を見たら裸足だった。
泥だらけで、犬のフンを踏んだのか糞尿まみれだ。そのまま職場に出るのも憚られたので、玄関先の水道で足を洗いはじめた。

そうしているうちに弟が出て来て、お向かいのお宅に向かう。
家主が出て来てなにごとか相談している。
魚がたくさん獲れた。どうやって料理すればいいか、お向かいに聞いているのだ。

僕は自分の足を洗い終わっていて、漁網を物干しに干している。
僕たち兄弟は漁師だったっけ?いやそんなはずはない。僕は大学の教員で、弟は普通のサラリーマンだったはず。
お向かいの人もウチの物干しに入って来た。挨拶をする。「おはようございます」
ようやく日が昇り始めたようだ。

「お隣の人はいるんですか?」お向かいの人は弟に聞く。
「いや、長いこと住んでいるんですが姿を見たことはありません」弟は答える。


夢日記 1218「12吊られた男」第十夜

とあるお店で焼き菓子の試食をした。
ムカデやタガメなどの虫をキャラメルで固めたお菓子で、僕はとくに気にせず食べた。
普通に美味しかった。

帰り道、歯の間になにか挟まっているのが気になって指でつついてひっぱりだしてみる。20cmくらいの赤黒い蛇の皮がズルズルと出てきた。蛇も入ってたのかー、とその時も気にしなかった。

サソリ vs クモ

場面が変わって自宅。11時過ぎに目が覚めた。ずいぶん熟睡していたらしく、午前中なのか、深夜なの判然としない。
家には娘と二人だけ。とりあえず二人分のご飯を作ってコタツで向き合って食べた。
食後にゆっくりしていると、敷居を大きな灰色のサソリが這っているのを見つけた。そして茶色の大きなクモがそのサソリを捕食しようと飛びかかった。

クモはいいけど家の中にサソリがいるのは困る。
僕はバットを取り出してきてサソリとクモを追いかける。
サソリとクモは絡み合ったままタンスの陰に隠れたり、また畳の上にでてきたり、とにかく素早いので僕には捉えきれない。クモがサソリを食べてくれればなー、と応援している。

サソリ vs ヘビ

いつの間にかクモはヘビに変わっていた。綺麗なしま柄の小さい蛇。蛇がサソリに絡みついて締め上げている。僕と娘はその様子を見守っている。毒ヘビでなければいいがなー、と思う。

トカゲ vs ヘビ

サソリはいつの間にかトカゲに変わっていた。エメラルドグリーンのトカゲがしま柄のヘビに締め付けられている。(エメラルドグリーンのトカゲはいつか見たトカゲだ:03女帝第二夜)
ヘビがギュウッとトカゲを締め付けるたびにグリーンのトカゲが鮮やかなトルコブルーに発光する。
「トカゲの色が変わってるよ」と僕は娘に知らせる。よく見ると絡みついているヘビもしま柄の部分が発光している。
撮影しなきゃ、と思い立ちスマホを探す。娘がスマホを手渡してくれた。
もつれあったトカゲとヘビが僕の足元をかすめた。僕はびっくりしてスマホを落としてしまう。

赤龍 vs 白蛇

スマホを取り上げようとしていると、いつの間にかトカゲとヘビは龍と大蛇に変身していた。
赤黒い龍が畳の上をズルズルとはっている。それをアナコンダ級の白蛇が追いかけている。
赤黒い龍を見た時、先日僕の歯に挟まっていた蛇の皮を思い出した。

僕たちはだんだん飽きてきた。スマホも結局見つからない。
隣の座敷では龍と大蛇の格闘が続いている。カーテンの下に巨大なムカデが這っているのが見えた。
二人でコタツで和んでいると、隣の座敷から大蛇が吹っ飛ばされてきて、コタツの角に頭をぶつけた。
頭部だけで20cmを優に超える大きさだ。

僕は大蛇の頭をかち割ってやろうと、再びバットを探しに席を立った。


夢日記 1219「12吊られた男」第十一夜

交差点に近づきつつあったとき、「パンっ!」という大きな音がした。
交差点には二台の車が横向きになって止まっていた。
一台はスポーツカーでもう一台は軽トラだった。
交差点で接触事故を起こしたのか? でも特に大破したところは見受けられない。

そこは海岸に近い車の通りの少ない道路で、あとから車が来る気配もない。
僕は車を路肩に停めて交差点の中央に停車したままになっている軽トラに向かった。

女の人が外に出て電話をしている。
前輪が何かに乗り上げているようで車体が傾いている。

よく見ると亀の甲羅があった。
どうやら交差点に進入した亀に乗り上げたらしい。

僕は亀を取り出して手当を試みた。
甲羅は頑丈で傷ひとつないが本体が潰れている。
僕はゆっくり力を入れながら潰れた箇所を引っ張り上げる。
パチンという音がして、裂け目が繋がった。本体は銀色の金属でできていた。
おそらくタイヤの圧力で破裂したものと思われる。

たぶんこれで大丈夫だろう。


夢日記 1220「12吊られた男」第十二夜

ビー玉のような透明な玉がある。
最初に一点が決まり、二つに枝分かれして、その下の階層は4点で組まれる。
一つひとつ置いていくのだが、玉には方向性もあって寸分違わず位置決めをしないと崩壊する。
最初の3点で平面が決まるのだが、4点めを打つときが肝心だ。
感覚を研ぎ澄ます。

「これは答え合わせだから」と誰かが僕に告げる。
4点が揃ったと確信したら、もうひとつ下の階層に進む。

場面が変わって、茶褐色の肌を持つ裸の女性が背中を向けて横たわっている。
スキンヘッドの頭部の左側から首筋、肩、背中、臀部、大腿、おそらく足先までつながるストライプが走っている。
くすんだ赤と青の太いライン、グレーの細いラインが3本。バーコードのように伸びている。とても美しい。

再び場面が変わって、妊娠した若い女性が仰向けに横たわっている。
その子の父親らしき白衣の男が慌てている。父親は母体の腹をナイフで刺す。
それからすぐに治療を行う。ナイフが腹に突き刺さったまま、腹部を包帯で巻いている。

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夢日記 1222冬至「12吊られた男」第十三夜

6人いる。
自分を含めて6人なのか、自分の他に6人なのか定かではない。
「6」という数字がまず最初にある。
かれらは兵士でどこかの戦地から凱旋してきた。
そしてみな私のコピーでありクローンである。

私はかれらを処分しようとしているが、方法がわからない。
かたわらに髪はポニーテールにして後ろに結び、タンクトップを着たかわいい少女がいる。
その女の子は私を励まそうとしているようだ。

誰かの片耳が千切れた落ちた。その耳は灰色に変化して、溶けて消滅しようとしている。

6人は紙を束ねて綴った冊子になる。それは時間を綴った書物である。それがわかる。
パラパラとめくられながら、それは中空に浮かんでいる。

そんなに深刻に考えることはない、と誰かが私に告げる。


夢日記 1223「12吊られた男」第十四夜

ラーメン屋に一人で入った。
僕はよそ者なのでラーメンの麺を逆さにしなければならないと店の人から言われた。
この国ではそういう決まりらしい。排他的な風習だ。

そもそも逆さの意味がわからない。
麺をひっくり返して食べればいいのか、あるいは麺にはあらかじめ順方向があって、逆方向から食べろということなのか、それとも麺の内側と外側を反転しろということなのか。

考えても仕方がないので僕は納得したふりをしてラーメンを食べ始める。
意外と美味しい。メニューにあったスタンダードのラーメンを注文したのだがあまりに美味しいので大盛りを注文し直した。出てきた器は普通サイズのラーメンよりもひとまわり小さい。しかも自分でラーメンを盛らなければならない。
専用の機械からラーメンが次々と吐き出されてくる。器が小さすぎてスープが溢れる。

そうこうしているうちに新しい客が店に入ってきた。小さな女の子を連れたお母さんだ。彼女たちもラーメンを注文する。
見るからに外来者の二人に僕は「逆さラーメン」のことを教えてあげる。

「とにかく麺を反対に食べるらしいです」
間違ってあたりまえに食べると役所の人に取り締まられるからだ。

お母さんは僕に感謝する。

それ以後も「逆さラーメン」について考えている。
ラーメン全体ではなくてメンだけを反対にしろと言っているのだから「ラーンメ」なのか、「メンラー」なのか。

さらに同じ話題だったのかどうだか覚えていないのだが、ユカリさんと「ブラバツキー夫人」について話している。そこで登場するブラバツキー夫人は漫画で描かれていて、ふくよかでとても優しそうな気のいいオバサンだった。

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