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ブラッドベリと国立

ブラッドベリを初めて読んだのは、たしか「たんぽぽのお酒」。友人のすすめで、近くの国分寺市光町図書館で借りて読んだと思う。その後「華氏451度」など代表作はあらかた読んだと思うが、いまでも記憶に残っているのはダンデライオンワイン/Dandelion Wine。装丁はこんなじゃなかった、たぶんなにかの全集の一部だったと思う。

先週末のN局でも話に出たのだが
https://www.youtube.com/watch?v=CeO04qK5TMg&t=1877s


学生時代は国立に住んでいた。二宮さんが言うように「国立」は僕たち上京組にとってユートピアのような街だった。(田舎者にとって)有りえないような落ち着きがあって、小さな街だけどそこら中に文化の香りがするという意味で。今となっては幻想だったかもしれないけれど。


邪宗門やガラス玉遊戯やキャンディポットや国立スカラ座やうなちゃんや、それからブランコ通りのスパゲティ屋さん、北口の天ぷら屋さん、Kさんと行ったあのフレンチの店なんて言ったかな。ダンキンドーナツはとっくに無くなったし、国立駅舎自体が無くなったのだから街が変わるのも無理はない。


とにかく僕にとってブラッドベリは国立とことさら強く結びついているのである。そしてユーミンの「ダンデライオン」と日本の80年代全体とも。国立には切ない思い出もいろいろあるが、いまの僕にとってもユートピア(ありえない場所)だろうな。いつかもう一度東京に住むことになったら大人として国立に住んでみたい。


ところで、国立駅の北口は国立市ではなくて国分寺市光町だ。北口から続く広大な敷地の鉄道学園があってその先の3丁目に住んでいたのが大学の一年から三年まで。四年になって後輩の吉村君と一緒に南口に一軒家を借りて住んだのだがそこは立川市羽衣町。正式に国立市民になったのは社会人になってからだ。富士見通りの一橋大学のグラウンドの傍でした。そこに三年くらい住んだかな。そこはあまり記憶もない。そもそも国立という名称は国分寺と立川のあいだだから「国立」になったと言う。僕も国分寺と立川のあいだでうろうろしながら、国立に至った。そしていまは「国東」にいる。


国立のような街を国東半島に作ってみたい。最近そう思う。国立のような街というのが皆さんにはよくわからないだろうが。そして僕自身も説明が不可能なのだが。


正月から宮沢賢治、そしてブラッドベリときたから今年はこっち系かな?と思った矢先、突然思い出した。国立駅北口を真っ直ぐ行くと光町三丁目の五叉路にぶつかる。(その近くに二十歳の僕は住んでいたのだが。図書館は坂を登ったところにある。向かいの角には酒屋さんがあって僕はワインというものをそこで覚えた)その一角にお稲荷さんがあった。なぜか知らないけどちょっと怖くて僕は近づいたことは一度もなかったのだが、多分今でも残っているはず。お稲荷さんは動かせないから。


そこで新年の目標は「狐」モデルを作ることとした。昨年制作した「まねきねこ」同様かねてから作りたかったものの一つである「狐」。モチーフ的にある種の覚悟が必要だったのだ。九尾になるのかどうかはまだわからないが、これを最後の仕事というつもりで打ち込もう。


光町図書館ではいろいろ出会いがあった。ホイジンガも和辻哲郎もブラッドベリもラッセルも、僕にとっては自分の基盤を形成するために必要だったに違いない。もちろん国立の友人たちも。
坂の上のあの超安い定食屋はなんて名前だったろう?仕送り日の前日に小銭をかき集めてコロッケ定食を注文したおばちゃんの店。

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