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日本の魅力を世界に発信し「日本ファン」を作るのはあなたです

日本好きな外国人を取り上げた「日本スゴイ」番組は数年前から放送されていますが、いまだに根強い人気を誇っています。その一方で、日本を持ち上げ過ぎで気持ち悪いといったような批判の声もあります。

あの番組に出るような外国人は日本風に言えば「オタク」で、あれほど熱狂的に日本を好きな人はほんの一握りなのでしょうが、それにしても、僕はあの番組が好きです。世界にはこういう人もいるんだなとか、どうしてそこまでハマるのだろう、他の外国人が見たとき共感できるのかおかしいのか、またはどういう感情を抱くのだろう、といった興味や疑問とともに見ています。

あれほど極端ではないにしても、日本の文化に深い興味を持ってくれる外国人はたくさんいて、実際に日本に旅行してくれています。そういう方たちにもっと日本の文化や地域の魅力、ガイドブックには載っていないとっておきの場所等を伝えることができたら、間違いなく忘れられない体験になると思います。その中から次の「オタク」が生まれる可能性だってあります。

そしてそれを現実にする1つの解が、「地元の人が直接情報発信すること」だと僕は思います。僕たちが思っている以上に、外国人旅行者は日本の地元の方々から情報を欲しがっているのです。

世界中に日本ファンを増やすには「地元住民の1人」であるあなたこそ、世界に向けて情報発信するべきだと、僕は考えるのです。

価値ある地元住民の情報

そもそも外国人旅行者は、本当に地元住民から情報を欲しいと思っているのでしょうか。

僕は以前から「外国人旅行者はローカルの人から情報を欲しがっているはず」という仮説を持っており、その裏付けをとるためアンケート調査を実施しました。質問内容は「Would you be happy if you could ask Japanese locals directly and get their answers before/during the trip?(旅行前や旅行中に、日本の地元の方から直接情報を得られたら嬉しいですか?)」。アンケート対象は、アメリカ在住の50人の方です。

結果は「強くそう思う」「そう思う」と答えた人の割合がなんと96%(48人)もいました。N数が限られているものの、その中でも実に多くの方が、日本の地元の方から情報を得たいと思っていることがわかりました。

日本の地元の人から情報が欲しいと回答した人の割合

しかしながら、アンケートは結果を数値化できたり傾向を把握できるメリットがある一方、事実とは異なる結果が含まれていたり、理由の深堀りが難しいという側面もあります。
そのため他のデータも用いながら、なぜ地元の人から情報が欲しいのか、また外国人旅行者に向けた情報発信の課題を明確にした上で、日本の地元の住民こそ海外に向けて情報を発信すべき主張の裏付けを示していきたいと思います。

「刺し子」のオススメのお店

「Googleで検索しても友人に聞いても、欲しい情報が見つからない」。外国人旅行者は案外ディープな情報を求めています。それは、SNSや口コミサイトに気軽に相談できる仕組みがあることに加え、外国人旅行者の旅行形態がパッケージツアーから個人旅行にシフトしていることが要因としてあげられます。
2019年時点で、欧米の9割前後もの方たちが個人旅行をしているという調査結果があります(出所:観光庁)。

有名な観光スポットやレストラン等はガイドブックやWebサイトで多くの情報が得られるため、自分たちで調べることができます。しかし、外国人旅行者はそれでは満足しません。

Facebookに、12.5万人ものユーザー数を有する「Japan Travel Planning」というプライベートグループがあります。外国人旅行者が日本旅行の前や旅行中に相談したいことを投稿し、他のユーザー(外国人)が回答し手助けするグループです。とても細かいことやユニークな投稿が多々あります。1つ興味深い投稿を紹介したいと思います。

刺し子のお店について相談する投稿

「刺し子の手芸店を探したい」という投稿です。この方は日本の刺し子が好きで、東京または京都で手芸店に行きたいがオススメはないか、と質問しています。写真は何とご自身で刺繍をされたもののようです!

刺し子とは布に糸で細かく幾何学的な模様を連続的に刺し縫いしていく、日本に古くから伝わる伝統的な刺しゅうで、寒さの厳しい北国で防寒、補強として、衣料に刺し子をしたことがその始まりと言われているようです。刺し子の図案は美しい幾何学模様や、豊作、祈願の意味を込めたりするようで、女性たちの手で長い期間をかけて洗練されてきました。

「刺し子が好きで日本の手芸店に詳しい外国人」を見つけるのは至難の技でしょう。実際明快な回答は得られていませんでした。

しかし、日本に住む刺し子が好きな方であれば、オススメできる手芸店のひとつやふたつは知っているに違いありません。「刺し子の始まりは東北です。東北のどこどこにはとても素敵な手芸店があるので、ぜひ来てください!」というコミュニケーションだってできます。
お互いが作った刺し子の図案を紹介し合ったりして、趣味を通して外国人旅行者の方と親しくなり、海外に刺し子仲間を作れる可能性だってあります。

このように、外国人旅行者が欲しい情報は有名な観光スポットにとどまらず、日本の伝統に関する事柄もあるのです。そしてそういう方にこそ、僕たちが当たり前のように持っている情報を提供してあげることで、相手は喜びます。

最新かつリアル

旅行の計画を立てる際、より新しくかつ現地の人が持つ情報をもとにプランニングしたいと思うのは誰しも同じでしょう。言葉が通じず文化も違う異国に行くのであれば、そう思う気持ちは強くなります。

観光庁が発表している「訪日外国人の消費動向」というレポートの中で、役に立った情報源に関するアンケート結果があります。出発前に得た旅行情報源で役に立ったものは、「SNS」(24.6%)、「個人のブログ」 (24.4%)が飛び抜けているものの、「日本在住の親族・知人」が13.5%あることがわかります。
面白いことに、旅行ガイドブック(11.3%)を上回っています。

役に立った旅行情報

外国人旅行者は旅行前から日本の地元住民(親族・知人)にコンタクトし、最新の現地情報を得た上で旅行の計画を立てていることがわかります。

手に入る最新の情報で、2021年時点で日本にいる外国人は約282万人で、日本の総人口は1.25億人なので、外国人の割合はわずか0.02%です。在日外国人全員が旅行時に連絡を取り合っているとは考えにくいので、実際のところはもっと小さい値になるはずです。外国人旅行者は日本に住む地元の人の情報を頼りにしているが、実際アクセスできているのはほんのごく一部という実態が見えてきます。

これは「親族・知人」以外の僕たちのような日本人にとっては、外国人旅行者に「役に立つ情報」を提供し、喜んでもらえるチャンスがふんだんにある状態と言えます。

不十分な情報発信

「こんなに美味しいお店なのになんで人が少ないのだろう」、「この美しい景色は地元住民のみぞ知る場所だ」という情報は誰しも持っているのではないでしょうか。都市でも地方でも、無名なエリアやお店、マニアックな場所等は情報発信されにくい傾向にあります。
しかし、無名コンテンツの中にこそ、外国人旅行者がハマるような「光る原石」が眠っていると僕は思っています。

発信されない「ムダ」な情報

外国人旅行者への情報発信は、国や自治体、観光協会、観光事業者等が主に行っていますが、光る原石を届けられていないのが現状です。

それは当然ながら、予算と時間に限りがあるプロジェクトである以上、効果的な情報発信が求められるため、有名で人気が出そうなコンテンツの発信に偏るのは必然なのです。新たな観光コンテンツを調査、作成して発信しようとすると、ニーズ調査、マーケティング、ポスター・Webサイト作成、翻訳、PR等多くの作業が発生します。

狙った相手に刺さるコンテンツを発信するには、外国人旅行者がどのような思いを持っているのか、何を期待しているのか、ということを把握した上でコンテンツ作りを進めます。情報の受け手のことを理解しないまま進めると誰に向けたコンテンツなのかがあいまいになり、結局相手に喜ばれないムダなコンテンツに仕上がる恐れもあるため、ムダは極力排除して進めることがプロジェクトにおいては鉄則なのです。

しかしながら、このムダの中には「無名だが地元ではたくさんのファンがいるお店」といったが光る原石が含まれている可能性が多分にあります。それがフィルターで除去され、外国人旅行者に届かないのが現状です。予算と時間の制約を受けない個人こそが、光る原石を発信すべきなのです。

「無名」「当たり前」こそ発信すべき

メディアによってフィルターされる情報はたいてい「無名」で「当たり前」の風景で、取るに足らないことでしょう。とは言え、日本とは異なる文化的背景や価値観を有している外国人旅行者は、そういうありのままの日常を見て感じたいのです。

1つ事例を紹介します。株式会社美ら地球(ちゅらぼし)が提供する「SATOYAMA EXPERIENCE(里山体験)」では、里山をありのまま体験するツアーがあり、その中でも英語ガイドが案内する「飛騨里山サイクリング」は欧米豪からの個人客に絶大な人気を誇っています。代表取締役である山田拓氏の「外国人が熱狂するクールな田舎の作り方」では、次のようなエピソードが紹介されています。

田んぼの中に棲むアマガエルも超人気キャラとなっています。「本当にカエルが人気キャラなのだろうか?」。(略)ガイドたちから聞くと皆が口を揃えて「YES」と言います。

橋の上で川の流れを5分以上見つめて「何故にこのエリアはこれほどまでに水が豊かなんだ」とつぶやくオーストラリア人、「作物が身近になっているこの風景はなんと美しいのだ!」と感嘆するシンガポール人などなど、ひだびと(飛騨の人)が「当たり前」「なんともない」と謙遜する飛騨の日常風景は、実は世界中から訪れる方々から見れば、宝の山と言ってもよいのではと思います。

このような事例は、外国人旅行者向けにガイドサービスを提供する方からすると日常的なことかもしれませんが、そういう機会がない人々にとっては驚きで新鮮に映ることでしょう。

飛騨の日常風景は宝の山という記載がありますが、これは全国の地方どこにでも当てはまることです。このことからもわかるように「無名」で「当たり前」のことこそ、外国人旅行者の心を惹きつけるコンテンツになれるのです。

安心感とともに旅をする

言葉も通じない海外旅行をする際、旅行先に友人や知人、親戚がいるのといないのとでは安心感の差は桁違いです。旅行する際に「日本在住の親族・知人」から情報を得ている外国人旅行者が一定数いることは先に述べましたが、これは「情報」を入手すると同時に「安心感」を得ているとも言えます。

頼りになる存在

初めて異国の地に旅をする場合は誰しも不安を感じるでしょう。その不安を軽減する一番の方法は、旅行先に「知っている人」がいることだと僕は思います。

親しい友人や親戚などである必要はなく、SNSで知り合った程度のゆるいつながりでもよいでしょう。旅行中に何か困ったことがあれば、現地に住む「その人に相談すれば何とかなる」という安心感が得られます。

個人的な話で恐縮ですが、僕の妻は台湾系カナダ人で、以前結婚式前に親戚一同で顔合わせをするため、海外旅行をしたことがないという僕の両親を台湾に招待しました。初めて海外旅行をする際の不安は経験した人でないとわからないと思いますが、不安が影のようにいつまでもつきまとうものです。

そんな不安を引き連れて旅行をしたはずの両親ですが、無事台湾旅行を終えたあと、会うたびに「あんたしかおらんかったら不安やったばい」「Judyちゃん(妻の名前)やご両親、親戚の方がおったけん、なんも不安はなかったよ」と同じことを何度も繰り返していました。

現地に頼りになる人がいるという事実は、とても大きな意味を持ち、不安の多くを取り除いてくれます。外国人旅行者からしても、日本を旅行する際「困ったことがあったら何か相談できる人」がいれば、不安を取り払い「安心感」とともに空港に降り立つことができるに違いありません。

地元の友人

日本に魅力を感じ旅行をする外国人の方は、日本人とコミュニケーションを取りたい、友人になりたいと思っている人もいます。安心感を得たいという思いもあるでしょうが、純粋に「人」としての興味を持ち、つながり、日本をもっと知りたいという思いを持っているからです。

「地元の人から情報を得たいと思うか」というアンケートをした際、プロトタイプのアプリを見せて「地元の人が情報を共有してくれるアプリがあったら使ってみたいと思うか」という質問を投げかけをしたところ、ある方が以下のように回答してくれました。

「I'd like to use the app because it might be a chance to make friends with the people! They could even show me around if they are free, which could be fun(使ってみたいです。日本の地元の方と友だちになれるチャンスでもありますから!その方に時間があったらガイドしてくれるかもしれません。楽しそうです)」

外国人旅行者をお客としてもてなすのもひとつですが、友人になって「地元の人しか知らない場所」に連れていったり、「自身の家に招いて日常生活を経験してもらう」というのも、熱き日本ファンをつくる1つの道でしょう。

日本の魅力を発信する方法

ここからは、日本の文化や魅力を伝える1つの方法をご紹介したいと思います。

現在、個人で情報発信をする場合SNSやブログといった手段がありますが、いずれも主に国内向けに投稿されており、読み手が日本人であることが前提でしょう。外国人旅行者は地元の人から情報が欲しい、地元の人とつながりたい、と思っているにもかかわらず、その機会がないのです。また日本の地元の方も、海外に日本の良さや魅力を発信したいがそういう手段がありません。

そこで僕は現在、日本の魅力を外国人旅行者に向けて発信するWebアプリ(掲示板型のソーシャルツーリズムサイト)を開発しています。以下に概要を紹介します。

・直接会ってガイドをするのではなく、タメになる情報等を投稿してサポートする
・投稿する文章は日本語でも英語でも可。外国人旅行者は翻訳機能で母国語に翻訳して読むことができる
・気になる投稿に対し外国人旅行者が自由にコメントや質問してコミュニケーションを図れる
・有益な情報や親切なサポートに対しチップ(現金)が送られる、またその一部を途上国子ども支援に活かす

簡易版のプロトタイプのリンクを貼っておきますので、興味がある方はご覧ください。
https://xd.adobe.com/view/ae72cf29-ef8c-4b2e-ba03-70597f5aaecc-fb21/?fullscreen

実際のWebアプリは開発中で、2023年2月初旬にリリース予定です。

さいごに

僕たち1人ひとりがそうであるように、何かのファンになるきっかけや理由はさまざまです。あなたが情報発信することがきっかけになり、新たな「日本ファン」が生まれ、「日本スゴイ」番組で取り上げられるようになるかもしれません。その時自分の地元が紹介されれば、純粋に嬉しい気持ちになるのではないでしょうか。

このWebアプリを利用して、日本の文化や、地域の魅力が世界中に発信され、熱い日本ファンがたくさん生まれることを願っています。


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