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邦訳を実装してほしいインディーゲーム|#1

〖2023年5月3日更新〗

この記事を書くきっかけは、下記の記事で紹介されているnicolith氏がはじめた試みである。

筆者(豅)も、英語力には自信がないけれども、実力のある翻訳者が手掛けた日本語訳に触れたいという気持ちを抑えて、インディーゲームの世界に首を突っ込んでいる。

たとえば、筆者は『Sable』(2021)をいったん英語設定でエンディングまでクリアした。この作品のストーリーテリングは、Sable(主人公)による詩的な語りと、その周りを取り巻く人たちによるフランクな会話とが、重ね合わさるように構成されているため、筆者には理解の難しい場面が少なくなかった。しばらくして、まさに待ち焦がれていた日本語訳が導入され、(2023年になってしまったが)最初からやり直して改めてストーリーを吟味している。

ただ、まだその願いが叶っていない作品も多い。


Alekon(2021)

創作の王国(The Realm of Fictions)には奇天烈(whimsical)で個性豊かな生き物がたくさん! 撮影パート(『ポケモンスナップ』のようなゲームプレイ)、探索パート(フリーローミングで探検して課題をクリアする)、交流パート(ミニゲームや会話などを通じてクエストをクリアする)の3つの要素で成り立っているゲーム。

オールドスクールながら現代的にブラッシュアップされており、完成度の高いゲーム。特にサウンドトラックが素晴らしい。ただ、ゲームプレイがテキストにかなり依存している(特に交流パート)ため、邦訳が待たれる。

The Black Cube series

フランスのシモン・メナール(Simon Mesnard)氏が監修する独立系のSFプロジェクト。短編映画『2011: A Space Adventure』を発表して以来、『ASA: A Space Adventure』(2013、リマスター版:2015)、『MYHA: Return to the Lost Island』(2016、リメイク版:2019)、『Catyph: The Kunci Experiment』(2016)、『Kitrinos: Inside the Cube』(2018)、『Boïnihi: The K’i Codex』(2020)といったミストライク(ポイントアンドクリック)なパズルアドベンチャーゲームを多数制作している。コミック『ANTERRAN: Day 0』も自費出版している。個人でこれだけやってきたことが純粋にすごい。

上記のパズルアドベンチャーゲームのパズルは手ごわいものが多く、複数のステップを確実に踏んでいかないと詰まってしまうので、邦訳が待たれる。

Eastshade(2019)

オープンワールドのアドベンチャーゲーム。主人公は旅をする画家で、母の思い出の地であるイーストシェイド(Eastshade)島を訪ね、島の豊かな自然や美しい街を探索しながら物語が進行する。ていねいに作られた世界はどこを切り取っても絵になるので、思わず時間を忘れてうっとりとしてしまい、筆者は一度そのまま寝てしまったこともある。

オープニングで画材を含め持ち物が流されてしまうため、描画や移動に必要となる材料を採集したり、街の住民のクエストをこなしてお金を稼いだりと、(死にはしないが)一種のサバイバル要素がある。特に住民との会話は不可逆な結果をもたらすこともあるため、邦訳が待たれる。

ECHO(2017)

ステルスアクションゲーム。身を隠すべき敵は自分自身=エコーであり、主人公エン(En)がとった行動を都度学習して襲い掛かってくる。エコーはステージごとに初期化されて数十人ほど配置される。照明が点いているあいだ、エンの一挙手一投足——たとえば、走る、しゃがみ歩きをする、塀を飛び越える、ドアを開ける、エレベーターを使う、銃を発砲する、食べ物を食べる、水の張った場所を進行するなど——は、「宮殿(The Palace)」によって記録される。ある程度記録が溜まると自動的に照明が消え、しばらくするとエンの意識ごとブラックアウトする。次にエンが目を覚ますと同時に、照明が再点灯し、先に記録された情報によってアップデートされたエコーも目を覚まし、学習した行動を備えて再び襲い掛かってくる。これを繰り返す。

筆者はゲームスキルにも自信がなく、正直なところこのゲームは筆者には難し過ぎる(あるいは、難しくなるようなプレイングであることに気が付いていない、それを修正するスキルがない)。ただ、「宮殿」と呼ばれるメガストラクチャーの雰囲気はサイコーに『2001年宇宙の旅』を思わせるし、エンとサポートAIのロンドン(London)の台詞の掛け合いから垣間見えるバックストーリーもとても深みがあるので、邦訳が待たれる。

Elephantasy: Flipside(2023)

ベンジャミン・マクシム(Benjamin Maksym)氏が開発した、アイソメトリックビューのアクションパズルアドベンチャーゲーム。主人公はリュックを背負った(なんだかぽよぽよしている)小さなゾウのベル(Belle)で、ドット絵で表現された(1区画が8×8×8ブロックの)世界を、鍵(key)、宝石(gem)、鉱石(ore)を集めながら探検する。

ベルはとあるきっかけで、持っているだけで特殊なアクションができるようになるアイテム(8種類)を、許可された数だけ携行できるようになる。課題をクリアすれば、携行を許される数も増える。これをうまく使いこなすことが冒険を進めるカギになる。

ゲームを進めるだけであれば言語依存度は低いが、日本語話者のインディーゲームプレイヤーがここで尻込みしてしまうのは勿体ない気がする(それくらい、ひじょうにまとまりのよいゲーム)ので、邦訳が待たれる。

FixFox(2022)

チェコのヤロスラフ・メロウン(Jaroslav Meloun)氏が中心となって開発した、トップビューのアドベンチャーゲーム。

地球の大気候変動を生き抜くため、動物の遺伝子を繋ぎ合わせて獣人となった人類が、その副産物として得た冬眠能力によって惑星間航行を実現した近未来が舞台。主人公のヴィックス(Vix)は、相棒のAIツールボックスのティン(Tin)とともに、自由意思を持つロボットたちが暮らす惑星カラメル(Karamel)に降り立ち、ガジェット修理屋として各地を奔走する。

この惑星ではなぜか「ツール(はさみやテープなど)の使用が禁止」されており、これを厳しく取り締まる勢力と、この勢力に対抗して各地を荒らしまわる勢力が、ヴィックスとティンの仕事のじゃまをしてくる。そのため、ガラス片や絆創膏などといった物品を現地調達して、ガジェット修理に代用する。一見ほのぼのとしているが、クエストをこなしていくうちに物語の規模がどんどんと大きくなる。この作品の大団円は筆者も予想できなかったので、邦訳が待たれる。

Grotto(2021)

インタラクティブフィクション(ビジュアルノベルゲーム)。あなたは予言者(soothsayer)として、星を読み、骨を読み、谷の部族の者たちに言葉を伝えなければならない。その運命は待ってくれない。その運命は巻き戻せない。

谷の部族の一人ひとりが強烈な個性——俗信を信じ込んでいたり、予言者に取り入ろうとしてきたりなど——を持っていて、伝えた言葉をそのとおりに受け取ってくれるかどうかも分からない。そうして起こった(あるいは「起こってしまった」)現実を耳にしたとき、心の奥底がズンと重くなる。

インタラクティブフィクションの性格上、言語依存度が極めて高い。語彙もやや難しい(難しい単語だったり、癖が強かったりする)ので、邦訳が待たれる。

邦訳を実装してほしいインディーゲーム|#2」に続きます。


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