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怪談 石子詰母娘呪縁起 すっきりしない話

遠州のとある豪農で母子が暮らしていた。並ぶと姉妹のように美しく見える。夫は死んだが裕福な暮らしで若い母親はまだ三十代で娘が十六になると結婚する事になる。隣村のやさ男が婿養子に入ると仲睦まじい夫婦で幸せになると誰もが思うが、母親が婿に恋をした。

あれこれ世話するが婿は娘の母親としか見ていない。娘も旦那をかわいがる優しい母と勘違いをした。母からすればどんなに世話しても所詮は娘の母親としか見られない。母はそれに怒りそして娘を呪う。

様々な呪い試したが娘はもちろん死なない。表面は優しい母として振る舞うが内面は鬼だ。彼女はもっと恐ろしい呪いを探すと山を越えた先の橋の下に住んでいる老婆が呪詛を知っていると聞く。老婆に会うと呪いの内容を聞いた。

「単に呪うより身の内の苦しみを利用すれば強い呪いになる」

老婆は生でカエルやタニシやナメクジを食えと言う。そうすれば体に蟲がわく。その痛みを利用して呪えと教えた。早速ためすと確かに蟲で体が痛い。体の表面に蟲がはっている、皮膚の下にくっきりと白いミミズのような蟲が居る。動けば痛みが走る。その痛みを娘の呪いに使うと、徐々に娘の様子がおかしくなる。最初は母を心配していたが、母の変わりように心を痛め最後は首を吊って死んだ。

母は喜び悲しんでいる婿に迫る。母はもう鬼気が迫る状態で、皮膚から蟲が顔を出す。髪の毛は半分が白髪で顔にも蟲が這った跡がある、皺だらけで老婆にしか見えない。その上に彼女は痛みから自分の皮を裂いて蟲を取り出していた。婿はその姿を見ただけで逃げ出した。母は追いかける。

婿は寺に逃げ込むと事情を話す。母は山寺までくると婿を出せと騒いだ。あまりの状態で坊さんは彼女を部屋に閉じ込めるが、呪いの力は強く小坊主は近づいただけで発狂して暴れ回る。坊さんは檀家と話し合うと彼女を空井戸に落とす事に決めた。

そして落とすと上から多くの小石を落とす。石子詰めだ。井戸が埋まるまで石をつめて封印する。それでも呪いが強いのか寺に居るだけで死ぬ。皆が恐れた。山寺ごと禁忌の場所として封印したという。

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誰かがすっきりしなくて重い話を書けと言われた気がして書きました。


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