見出し画像

SS 永久には動きそうもない、B級機関だった。#ストーリーの種

「ここがA級機関調査室ちょうさしつだだ」
 薄暗い蛍光灯の下で数人がだらけている。モニターを見ているようでゲームに夢中な職員や爪をみがいているOLが居る。自分が配属されたのは、永久機関を審査して調査をする部署だ。つまりリストラ対象の職員部屋だ。

「何をすればいいんですか?」
「調査対象のメールが来たら動かないとテンプレメールをする」

 永久機関は、外からエネルギーを与えないで動作をするシステムで物理学的に存在はしない、もし存在するならばそれはA級と呼ばれて登録される。現実には動かないB級ばかりだ。

 早速自分の机のノートパソコンの電源を入れる。外部から来ているメールが溜まっていた、本来ならば他の職員も対応する筈だが、ほったらかしだ。古いメールから順番に見る。

「磁石を使った永久機関の申請」
「バネを使った……」(以下同文)
 国内の発明家? が自慢のA級機関の設計図を添付てんぷしている。古くさくて動くわけがない、テンプレメールをひたすら送り続けた。

「マルチバースト理論による永久機関構築」
 その論文は、何も無い空間からエネルギー転送の可能性を提示していた。驚いて上長にメールを送る。もしかしたら本物かもしれない。戻って来たメールは、B級で返信しろだった。

「世紀の大発明ですよ! 」

 一種の正義感もあった、世界のエネルギー問題を解決できる夢のようなアイデアだ。他世界からエネルギーをとり出せる、色々な世界から少しずつ貰える。影響も出ないし最高のアイデアだ。上長は苦い顔をする。

「あのな……、水槽の水をちょっとずつ暖めたらどうなる? 」
「え?温水になる? 」
「金魚は死ぬだろ? 」
 他世界からエネルギ-を取り出せば、自分の世界の熱量は相対的にあがる。地球だけでもエネルギーが増える。惑星が煮えてしまう。

「技術的に可能でも駄目なんだよ、それやるくらいならダイソン球の方がましだ」
 太陽をおおって全てのエネルギーを取り出す計画だ。実現するだけで数十万年は必要になる、種が変化するレベルだ。俺は黙って席に戻る、スマホを取り出すと自分のSNSをチェックする。この部署は永久には動きそうもない、B級機関だった


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?