SS 走れメロンパン【#ボケ学会のお題】
夏休みの初日だった、おねえちゃんが倒れる。
「まぁ、暑さにやられたのね」
「頭を冷やさないと」
かあさんやおばあちゃんが介抱するがおねえちゃんはうわごとのように、「メロンパン、メロンパン」とつぶやいている。
大好きなおねえちゃん、僕をかわいがってくれるおねえちゃん。おねえちゃんのためにメロンパンを買わないと!
みながおねえちゃんのそばにいるからそーっと玄関から出ると全速力。メロンパンはパン屋にある。
「パン屋、パン屋、メロンパン、メロンパン」
「あらどうしたの?」
クラスメイトのみっちゃんが立ちはだかる。かぼちゃパンツ丸出しの学級委員長で廊下を走ると先生にいいつける女の子。
「そこをどいて、メロンパンを買わないと」
「パン屋は休みよ」
オージーザス、なんてこったパン屋が休みならどこでパンを買えばいいんだ。
「ロバのパン屋に売ってるかもね」
「そうか、ありがとう」
みっちゃんに感謝。みっちゃんは、ああ見えても人にはやさしい。ロバのパン屋ならいつもの駅前から公園方面に進んでいるはずだ。
「ちりんちりん、ロバのパン、ロバのパン」
「おい、どこにいくんだ」
立ちはだかるのはクラスの大将いじめっ子、タヌキイモだ!
「野球しようぜ」
「……いかない」
「あ? 逆らうのか」
「ぼくは、おねえちゃんのためにメロンパンを買うんだ」
タヌキイモがびっくりしたような顔をするので、事情を説明するとなにやら照れくさそうに、いっしょに行くと言い出す。
「よし、全速力だ」
「ちょっまって」
タヌキイモが全速力で隣町に走って行く。とてもおいつけないと思ったら、鐘の音がした。ロバが大きな屋台をひいてパンを売っている。
チンカラリン、チンカラリン
「ロバのパン屋さん」
「なんだい」
「メロンパンをください」
「売り切れだ」
がっくりと片膝をつく、メロンパン、売り切れ。天はワレを見放したか!
「チョココロネは、あるぞ」
「あ! それでいいです」
僕はあまくておいしいチョココロネを持って家に戻る。おねえちゃん死なないで。
「あら、どこいってたの?」
「メロンおいしいわよ」
おねえちゃんは、透き通るような緑色のメロンをおいしそうに食べてる。僕も一緒にメロンを食べてとっても幸せな一日でした。
夏休みが終わっても、タヌキイモは行方不明のままだ……
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