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SS 冤罪 猫探偵08

あらすじ
 奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。

 久しぶりに主任から呼ばれる。委託業務を貰えるので生活費を稼ぐためには仕方が無い。命を狙われているニーナはハッカーのクロミに頼んだ。カメラやセンサーを攪乱するジャミング装置で彼女を守れる筈だ。後で高額の請求書が来る。

「主任、今日は何の仕事ですか?」
 奇妙な鉄の体が机の後ろにある。中に生体脳がある。主任の頑丈な体は無敵に思えた。今はでかい穴が空いている。どんな武器で攻撃されたかは、判らないが対戦車銃で撃たれたとしか思えない。

「犯人はお前か?」
 ゆっくりと後ろを振り向くと刑事が居た。ワン公だ。文字通りにそのままの犬だ。手錠を俺に見せると手を出せと催促する。俺は抵抗しない。

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「お前は主任に恨みがあった、お前が殺した」
 自白を強要する刑事は焦っていた。当たり前だ。主任を殺せる武器を特定できない。俺のリボルバーでは傷すらつかない。取調室のドアが叩かれると知り合いの狸が入ってくる。

「刑事さん、証拠不十分ですよ」
 狸弁護士は、俺に目で合図する。俺は立ち上がると釈放の手続きに入る。狸が耳打ちする。

「ロイ、お前の部屋が荒らされてる。なんか隠してたのか?」
 最初から俺を足止めして部屋に居るニーナを殺すつもりだ。警察も巻き込んでいる。小遣い稼ぎで俺を逮捕くらいはするが、さすがに冤罪のでっち上げは難しい。AIによる現場検証まで誤魔化せない。

 警察署から出ると、車輪付きの箱形の機械が近づく。俺は気づかれないようにゆっくりと歩く。

「ギギギ、お前はまたヤバイ仕事しているのか」
 主任だ、バックアップ用の副脳が分離して逃げていた。彼は暗号キーがパンチしてある紙テープを落とす。そのまま走り去る。どこかで頑丈な体を用意する筈だ。本人の脳が存在する限りは殺人事件ではない、傷害罪になる。俺は拾うとコートのポケットに入れる。

「狸またな、後で酒でもおごるよ」
 狸は手をふって離れていく。俺はたぶんまだ殺されない。ニーナの居場所が判らない。俺は自分の部屋に戻る、狭い部屋は荒らされ放題だ。暗号解読できる再生装置を洗面台の下から取り出す。主任のテープを再生した。

「黒幕は祖母のメリル・エリザベス・ウッド」
 主任からのメッセージを確認すると俺は祖母と話をする事に決めた。

続く


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