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SS だんだん高くなるドライブ #毎週ショートショートnoteの応募用

「スタンバイ開始」
 俺は操縦桿を握る、狭いコクピットの周囲は計測機器で充満して身動きは取れない。人類初めてのハイパードライブの実験開始だ。無我の境地、動物実験では肉体的に問題が無い事は立証されている、そして人体実験が始まる。俺は志願をして選ばれた。

「始動!」
 宇宙船の外側がワープバブルで包まれる。物理法則で光速を越えるために無限大のエネルギーが必要になるが、空間を分離すれば可能だ、宇宙は今でも光速を越えて空間が広がっている。

 体に感じる負荷は無い、無いが意識が変わる、これは人間でしか知覚できない状態だ、ドライブが開始されると俺は光の回廊に立っていた。

「――ここはどこだ? 」
 前方に無限に白い階段がある。後ろを見ると下りの階段だ。

「俺は死んだのか? 」
 実験は失敗をして死亡したのかもしれない、ためしに前に進むが、景色は変わらない場所を歩くのは苦痛だ、俺は立ち止まる。

「――応答しろ、聞こえるか?」
「……ああ、平気だ」
 コクピットに座っている俺を俺が認識した、現在位置を調べると火星公転軌道だ。実験は成功していた。階段を物理的に上るとワープ位置が調整できそうだ。

「階段がだんだん高くなるドライブか………、古代の旅人と同じか」


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