SS 願い 【#鳥だったら】#青ブラ文学部
「鳥だったら」
幼い娘が井戸で水をくむ。寒くてつらい仕事を毎日しないと怒られる。娘は道ばたの鳥をうらやむ。
「鳥だったら」
娼館の二階で客を待つ女がつぶやく。好きでもない男に抱かれるつらさは男にはわからない。自由に飛べる屋根の鳥をうらやむ。
「鳥だったら」
立派なお城の窓から空を見る姫。自分の生き方を決められない縛られた身分、嫌な男と結婚して子供を産むだけの人生。空高く飛ぶ鳥をうらやむ。
「鳥だったら」
この国のすべての女がうらやむ、自由に飛べたらきっと幸せ。
その日は、すべての女に羽が与えられた。空高く舞い上がるとすべての女は、遠くの世界に旅立った。そして国は滅んだ。
「みんなどこに住んでいるの?」
「さてね、小さな小さな国で幸せに暮らしているさ」
孫娘は祖母のありえない不思議な話に喜んでいる。
「それでおばあさま、男って何?」
「実は、私も見たことは無いんだよ……」
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