ご免侍 二章 月と蝙蝠(二十二話/三十話)
あらすじ
銀色の蝙蝠が江戸の町にあらわれる。岡っ引き達が襲われていた。芸者のお月が一馬に傷を負わせる。
「一馬、腕は平気か」
「ああ、まだ違和感あるが……」
一馬は同心の伊藤伝八に、腕をぐるぐると回して見せる。まだ少しだけ痛みはあるが、戦いになれば忘れる程度だ。
番屋で茶をすすりながら、伊藤伝八に、岡っ引きのドブ板平助がどうなったか聞いてみる。
「女房のお勝が働いているからな」
平助の女房が商家に通いで働いているので飯は食える、当面は問題はないが十手狩りが出てからは、みなが恐れて岡っ引きのなり手がいないから困ったとぼやく。
「手薄になって大変だ」
「わかった手伝う」
「助かる、夜盗が出て手を焼いている」
「夜回りでいいのか」
同心の伊藤伝八には貸しがあるし、ずっと持ちつ持たれつで行動していた。若い頃は、伝八と遊びほうけた時期もある。
「どうも天井に人の気配がすると苦情が多いんだ」
「天井なのか……」
昨日も一馬の屋敷に賊が入り込んでいた。天井ならば忍びかもしれない。しかし長屋に忍びが入り込むのかと疑問もある。
(なにかを探している……)
琴音を探しているのかもしれない。そう思うと心配になる、自分が気にしすぎているようにも感じた。
(俺は琴音を好きなのか……)
自問自答してみるが彼女へのよこしまな感情は無い、純粋に助けたいだけだ。
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