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SS 疾走する思考戦車 猫探偵12

あらすじ
 奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。ニーナが生きていると障害に感じる親族は彼女の命を狙う。捕縛されたロイはカラス男に尋問されている最中に、思考戦車に助け出された、猫探偵は主犯の館に突撃をする。

 手配でもされているのか警察が動き出していた。スピーカーから、やかましく止まれと叫んでいるが、所長が操る思考戦車は自閉モードで電波などを遮断していた。音波すら届いてない可能性がある。

 しばらくすると警察車両が増え始めて思考戦車を減速させようとするが重量と機動性がまったく異なる、戦闘向けの動きに警察車両は自分たちの操作ミスで事故る。

「郊外まで出たら後は一人でいけるよ」
 黒豹型のロボットに乗った俺はのんびりと操縦席で香箱座りをしている、このロボットも思考と連動するタイプだ。首にある接続ジャックで、外界を観察している。

 思考戦車の上で平べったく寝ている黒豹ロボットは目立たないが、所長の操る戦車は丸い砲塔のついた軍事用。街の中で目立つのは仕方ない。

「気にするな、ひさしぶりに暴れたいんだよ」
 所長は大戦中の俺の上官で、部下を置いてけぼりにして突っ込むタイプだ。無鉄砲で、死んでも副脳があるから不死身だと豪語していた。彼の副脳はリアルタイムOSを使い、ナノ秒レベルで同期している。そのために記憶の欠落がない。副脳が潰れても、同期している別の脳みそがあれば、同一個体だと言い張っていた。

「州軍だ」
 所長の声は合成音なのに嬉しそうに聞こえる。そんなに所長の職は退屈だったのか? 俺は少しだけ笑う。外部を観察する黒豹型のロボットアイは前方から対人装甲車が突っ込んでくるのを認識した。

 ずしんと重い振動が走ると、所長は丸い砲塔から実弾を発射する。低速型電磁レールガンだ、砲弾は発射されると同時に前方に巨大な電磁ボールを展開して、爆発する。

 自閉モードにしていない車両は、すべてのセンサーを焼かれる。俺の乗っているロボットはもちろん最初からシールド済みだ。だが州軍の車両は暴動鎮圧などの仕事で、電子戦闘に対応していない。

 州軍の装甲車は左右にフラフラすると路肩に止まり沈黙する。搭乗員は気絶でもしている筈だ。郊外にでるとAI検索を使いながらトラップのある場所を予想して避けながら思考戦車は走る。俺はニーナの祖母のメリル・エリザベス・ウッドの略歴を読んでいた。

「大戦前の生まれだと90歳近いのか」
 女系の家なのか、家の管理はすべて女性が実権を持っていた。婿養子を取ると女だけが、家に残れる。男子はすべて他の家に嫁がされていた。

「不思議だな、ここまで徹底する理由があるのか? 」
 俺は、なぜかもやもやしていた。ニーナが結婚しても、男性側は実権を得られない。それなら殺す必要を感じない………

続く


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