SS 枢軸マーガリン #毎週ショートショートnoteの応募用

「おかあさん、何をもっているの……」
「枢軸すうじくマーガリンだよ」
　さびた金属缶は、もうボロボロだ。

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　破壊されたシュトルムティーガーが道ばたでくちている、巨大な砲を使う兵士は居ない。

「にいさん、おなかすいた」
「マーガリンあるよ……」

　枢軸すうじく国は終わりだ、連合国の兵隊が迫ってきた。兄は軍から提供されたマーガリンの缶を私に渡す。兄はまだ１７歳だが、戦場に駆り出された。

「ごめんな。守ってやれなくて」
「にいさん……にいさん」

　私を塹壕ざんごうに隠すと、ドイツ新兵器、ラーゲンシュトルムに乗り込む、二足歩行のロボット兵器は腕に五十ミリ機関砲を搭載した化け物だ。

　私は二日の間、塹壕ざんごうで隠れていた。連合国の兵隊が私を引っ張り出した時には、マーガリンの缶は空っぽ。

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「おかあさん、式典ですよ」
「ああ、大丈夫よ」

　椅子から立ち上がると、兄の誇らしげな顔を見る。兄は枢軸すうじく国の世界連合議長に選ばれた。

　兄が操縦する新兵器は、物量で押していた連合国を破滅させる。ドイツは巨大なロボット兵器を生産すると世界を蹂躙じゅうりんして平和を実現する。

「我々の勝利を！」
　兄が腕を上げて敬礼する。平和、とても心地よい響き……

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「もうだめか？」
「栄養失調ですね」
　連合国の兵隊が小さな女の子を見ている。彼女はマーガリンの缶を握って目を閉じている。静かに、もう眠りから覚さめめることも無い夢を見て。

シュトルムティーガー - Wikipedia

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#戦争と平和