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拷問 剣闘士マリウスシリーズ

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あらすじ
マリウスは自由市民になる直前にティベリウス家の女主人アレッサンドラを殺す。専属奴隷のアウローラは父親を殺された復讐をするが、屋敷から逃亡する事になる。地下水路からアウローラの親族に助けを求める事にする。

ローマは夜も明るいが大通りから外れれば十分に暗い、それでも背格好や女奴隷を連れている俺はすぐに判別される。通路に居る無宿人に金を渡せば誰がどの方向に逃げたのか割り出すのは簡単だ。

「地下水路で、どこまでいける?」
アウローラは先ほどの殺人で興奮しているのか上の空だ。虚無に見えたのも親の敵を殺した事からの達成感で虚脱している。俺は肩をゆすると徐々に彼女も事態を把握する。奴隷が主人を殺せば楽には死なせてもらえない。街道で十字架で何日もさらされながら死を待つか、肛門から木の杭で串刺しにされて殺される。

「近くまではいけますが地上に出て歩きます」
アウローラの言葉を信じて地下水路の抜け道を使う。予想では密輸や暗殺にも利用される通路だ。人には知られていない。この中を通る限りは安全だ。問題は外に出てからだ。俺は先にアウローラを屋敷に到着させる事にする。二人連れは目立つ。地下水路の出口で灯りを消す。アウローラは屋敷までの道順を覚えていた。

「元老院のフェデリコが私の叔父になります」
俺も場所は判る。だが貴族と知り合いならば、なぜ今まで助けを求めないか聞くと一言だけ、復讐とつぶやく。彼女は元から自分の手で殺すために奴隷として生きてきた。

「俺は殺さないのか?」
彼女は俺を見ると首を横にふる。
「あなたは私を見逃した」

命を助けた事になるのかと思うと変な罪悪感もある。俺は単に気まぐれで殺していない。娘と知っていれば殺していた……かもしれない。

彼女が先に走る。俺は十分に時間を置いてから屋敷に行くと決めていた。予想外なのは地下水路から追っ手が来た事だ。中に入る所を誰かに見られて通報されていた。

俺は剣を抜く。出てきたのはヤコポだ。彼は大きな木の棒を持っていた。生かして連れ戻す気だ、死なせる気はない。俺はステップを踏みながら体を回転させる。ヤコポの右脇腹に剣を入れようとするが、さすがに見慣れた攻撃で避けられる。

ヤコポは棒を振り回す。当たれば骨折する。俺は用心しながら相手の疲れを待つ。それは失策だ。普通の闘技場なら通用する。今は逃亡した奴隷を捕まえるために多くの奴隷が探索している。背後から魚取り用の網をかぶせられた。闘技場でも使われる網は内側にトゲがある。体を覆うと痛みで体の自由が奪われた。

ヤコポは俺の後頭部を殴る。気を失う俺は地面に倒れた。

「目が覚めた?」
ティベリウス家の女主人の娘であるヘカテーが俺を見下ろしていた。今は地下室だ。奴隷を殺すための木の杭がある。
「私はあなたを信じていた、悪いのはあの娘」

アウローラも捕らえられている。彼女は全裸のまま木の杭に連れていかれた。
「なるべく苦しみながら死ぬように先端を丸く細くしたわ」
体を貫かれて何日も生きて苦しみぬく。俺は奴隷の最後を何度も見てきた。俺は乾いた笑いを漏らす。奴隷は玩具でしかない。

他の奴隷が俺の足をまっすぐ伸ばす。ヤコポが丸太のような棒で俺の脛を砕く、激痛で俺は叫ぶ、拷問が開始された。

ヘカテーが
「あなたはもう歩く必要がない、ずっと私を慰めるだけの犬になりなさい」

続く

拷問1



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