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SS 穏やかな一日【平和とは】グロ描写あり #シロクマ文芸部

 平和とは戦争が無ければ存在しない。

「平和だなぁ」
「戦争中ですよ」
「馬鹿だな、ずっと平和なら平和を実感できないだろ? 」
 古参兵が屁理屈へりくつで煙にまくと、新兵が腕時計を見る。

「敵の突撃の時間です」
 新兵が古参兵と一緒に塹壕ざんごうの中で準備する。古参兵は、めんどくさそうに新型の水冷重機関銃を塹壕ざんごうに設置した。機関銃は弾を長く発射すると銃身が熱くなり最後はつまる。水冷式はその心配が無い。

「敵兵を皆殺しだ! 」
 邪悪そうな顔で古参兵が待機していると時間通りに敵の準備砲撃が来る。ドカン! ドカン! と榴弾りゅうだんが落ちると土煙つちけむりがすさまじい。古参兵は、すかさず前方に向かって撃ちまくる。

 敵兵は雄叫びを上げて突撃してきた、新型機関銃の威力は、すさまじく、腕に当たればもぎとり、足に当たれば半分以上の肉と骨を吹き飛ばす。バタバタと倒れている敵兵の頭頂部にも弾を撃ち込むと顔が吹き飛び、目玉が飛んできた。

 新兵は顔にくっついた目玉を拭い取ると機関銃の弾を交換する。もうなれたのか気にもしない。しばらくすると突撃が終わり静寂が戻る。

「一服するか、平和だな」
「口癖になってますよ」

 古参兵が青空に向かって煙の輪を作る、晴天の空にとびが飛んでいた。……いや複葉機だ、何かを落とすとパラシュートがパッと開いてゆっくり塹壕ざんごうに向かう。高度が低くなると同時に、白燐はくりん爆弾が破裂した。塹壕の中の兵隊は、高熱の白燐で溶けるように燃えてしまう。新兵も古参兵も燃え尽きた。

 とびが青空を舞っている、塹壕ざんごうから煙が出るとゆっくりと近づく、山火事で小動物が逃げるのは本能で判る。太ったネズミを狙うことにした、子供達の餌にしよう。平和な一日の始まりだ。


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