SS 壊れたロボット【男の子&瞬間接着剤&夏祭り】三題話枠
夏祭り、その華やかで心が躍るイベントに僕は楽しみにしていた、でも祖母の具合が悪いので両親は参加できない。
「一人で行くよ」
両親と一緒に訪れた田舎は、もう村人が少ないのかさびれて見えた。出店もある、風船釣りや金魚すくいや綿飴に、少ないが子供や若い男女が楽しんでいた。僕はその雰囲気だけで十分だ。何を買うわけでもなく見て回る。
「おい、お前はどこのもんだ? 」
「○○から来たんだ」
僕と同じくらいの子供達が寄ってきた、外から来るものは敵だと言わんばかりの排他的な態度は、僕は馴れている。クラスでも孤立しているから、いつもの事だ。
「□□のところの孫だろ、顔を見た事あるよ」
一人の子が何回か訪れている僕を覚えていた、彼らは急に笑顔になると射的やら水風船釣りに誘われた。都会の子供達と違うのか、仲良くなるとすぐに遊ぶようになれる。
「いつまでいるんだ? 」
「数日なんだ……」
「そうか、じゃあまた来年だな」
家に帰る子供達を見送ると急に孤独が強くなる。さっきまでは平気だったのに、きつく感じる。これがあるから友達を作りたくない。居なくなるとさみしい。痛みを感じながらゆっくりと神社から家に戻ると、その男の子は神社の石の鳥居の所で立っていた。
黙って立っている男の子は、僕と同じような痛みを感じる。
「何しているの? 」
薄暗い境内で、その子は黙って立っている。人から干渉を受けたくない場合もある、誰だって一人で苦しみたい。僕は彼から離れようとすると
「ロボットが壊れて……」
見れば古い金属製のロボットを持っていた、錆びが浮いている玩具は、かなり古く見える。胸のパーツが外れていた。
「プラモ用じゃだめかな……瞬間接着剤なら」
家にあるかもしれない、近所のコンビニは……コンビニは無かった。僕は、明日もってくると約束した。
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「金属製セメダインじゃないと駄目かもな」
父親が近くの工務店から譲ってもらう。僕は急いで神社に走った、だがいつ会うかなんて決めていない。その事に気づくと歩みが遅くなる。神社に着いた時は歩いていた。
そのロボットは鳥居の台座に置かれていた。胸のパーツが外れている。きっと男の子は修理してくれると願って置いていた、パーツをセメダインで胸につけると台座に戻す。それきり男の子とは会っていない。
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「これが人間なのか? 」
「これが人間さ」
人工知能で活動するロボットが鳥居に近寄る。古い金属製のロボットがヒョイっと台座から降りると仲間のロボットと合流する。過去の人間を観察に来た彼らは、人間復活計画を考えていた。自ら滅んだ人間を戻す必要があるのか? 議論は終わらない。今回のレポートで変わるのだろうか?ホログラフで投影された男の子が嬉しそうに笑う。
「大丈夫だ、俺たちを作った人間だ、やさしいよ」
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