弟の憂鬱:七色の指輪【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(15/50)
第三章 弟の憂鬱
第五話 七色の指輪
あらすじ
魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させる、祠の宝石をカットしたルビーを銃使いのオスカーに渡す。
オスカーとギルドで別れると、幽体の状態の洞窟の主のレオノーアがついてくる。ニヤニヤしている彼女は、オスカーと私の仲が良いのをからかうが、私は気にしない。私からすればオスカーは、お父さんと同じくらいに歳を取って見える、おじさんなのだ。
私は宝石の洞窟に向かう。指輪に宝石を使うと言うので街を出て、また少しだけ遠出する。洞窟に入り彼女が住んでいる巨大なクリスタルの前に立つと、あのクリスタルの中に導かれた。豪華な廊下を歩きながら、この不思議な状況に馴れている自分に驚く。
クリスタルの中では、レオノーアは生身の女の子だ。私の前に立つと左の手首をやわらかく握る。
「指輪を見せて」
洞窟の主のレオノーアが私の指輪に触る。指輪の宝石は美しく輝き赤や青、緑や黄色、めまぐるしく変わり光輝く。彼女は宝石の封印を解除すると指輪が強化されると教えてくれる。
「指輪は強くなるの?」
「封印した宝石を全て入れるわ、あんたにあげたのは本当に欠片ね」
封印されていた宝石の塊を、私が持ち帰る。大人のこぶし大の宝石は鞄には入るが重たかった。こんな小さな指輪に…………入るの?
私が不思議そうな顔をしていると、レオノーアは、また教えてくれる、宝石を指輪に吸収させる、この七色の指輪は宝石を喰らう。指輪の中に宝石の力は内部に吸収されて利用できる。表面が七色に輝くのは喰らった宝石の種類が多数あるから、と教えてくれた。
「そんなに便利なのね」
「封印を解いて指輪を喰わせれば、世界最強になれるわよ」
そんな甘い言葉で私を誘惑するレオノーアは、封印が解き終わったら返せと言うに決まっている。それに七色の指輪が取れないと、結婚指輪もはめられない、これではまるでレオノーアと結婚しているみたいだ。
「熱あるの? 顔が赤いわよ」
私が愛想笑いをしていると、彼女はルビーの塊を持ってくる。既に加工してあるのか、複数個の大きな宝石はギラギラして怖くなる。カットする事で余った宝石を銃使いのオスカー達に渡している。宝石もこれだけ巨大だと、城をまるごと買える値段に感じる。私は前からの疑問を、レオノーラに聞いてみた。
「宝石の洞窟は無限に宝石を出せるの? 」
「そうよ、呪われたクリスタルは無限に宝石を生み出せる」
「…………それなら、七色の指輪も無限に強くなる? 」
「…………ここは呪われた人間を宝石にするのよ」
絶句する。宝石が対価なしで出現するなら苦労はしない。人を食って宝石が生み出されている、それで呪われたクリスタルなのか。
「呪われるのには条件があるから、あなたは平気よ、もう私と契約している」
レオノーラがルビーの塊を私の指に近づける。瞬きすると消えて無くなる。宝石と指輪を接触しただけで取り込めていた。
「便利でしょう? あなたの力はどんどん強くなるけど、前回みたいに魔法が使えない状態は危険ね、護衛をつけなさい、料金が払えるようにカットした宝石を渡すから」
私はうなずくと、レオノーラから青の洞窟の場所を教えてもらう。私はまたギルド経由で、青の封印を探検しよう。
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