創作民話 尼さんの供物
都まで飢餓で苦しむ民があふれる。
人々が路上で空の椀を差し出して物乞いをするが、
あまりに多いため近づく事すら危険に思える
「このような事がいつまで続くのか・・」
高名な尼僧の黙桂妙唐は、心が痛む
路上に腹のふくれた子供が寝ている。
魚すら食べられない。
肉を少しでも食べないと腹に水がたまる。
苦しそうに口で息をしている。
動けずに道の脇で死ぬ者も多い
そのまま放置されている
寺でも供養を行うが、終わる気配もない
黙桂妙唐は心を決めていた。
「私が寝ずに祈祷しよう」
都の大通りに大きな護摩壇を作ると熱心に
祈りをささげた。
祈祷は何日も続くが飢餓が収まるわけでもない
尼僧は眠らないまま朦朧として、蝋燭を倒してしまう
僧衣に火がつくと、めらめらと燃え上がる
護摩壇にも燃え広がり、誰も止められ無い
火がおさまると、路上の民衆が集まってくる
「ありがたい、ありがたい」
尼僧を感謝しながら口にした。
あまりの惨状に、都では貧民用の小屋をつくり
かゆを出したという。
※参考
BGMは「フランシーヌの場合」でお願いします。
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