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雑多な怪談の話

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#恐怖

【掌編小説】リレー小説⑤(これってひよこの挑戦状?)#電車にゆられて(Love the PTA Toshi Inuzukaからの続きで)

 暗いトンネルを走っている最中は、車内に薄暗い電灯がついている。車掌が、ゆっくりと後方の車掌室の車両に向かう。  たまにゴトゴトと音がするくらいで静まりかえった車内には、六割くらいの客がいるのに話し声も無い。列車の天井を見ると古くさい水色の扇風機が回転している。 「あんた、弁当を買ったのか?」  通路をはさんだ横の席の男が俺に声をかけたきた。 「いや弁当は買ってない」 「そうかぁ、ここの駅弁はおいしいよ」  それだけ言うとまた食べ始める。しばらく見ていると延々と食べ

【掌編小説】リレー小説③(日出詩歌さんの続きです)#電車にゆられて

 水車の音が小さくなり音が消えた。目の前の女性は無表情に指を突きつけたままだ。凝固した世界は息するのもむずかしい。息が荒くなる。 「……俺は死んだのか」 「まだ生きたいんだ」 「死にたくない」 「生き返っても悪い事しかないかも?」 「俺はなんで死んだ」  女性の顔は、ゆっくりと輪郭が崩れるとめまぐるしく相貌が変化する、少女だったり主婦だったり、老婆だったり娼婦だったり。 「やめてくれ、やめてくれよ」 「あなたが殺した人たちよ」 「ここは地獄じゃないのか」 「あなたは誤解

SS ブーメラン発言道 #毎週ショートショートnoteの応募用

「戻ってくるの?」 「大丈夫」  妻は不審そうに俺を見ている。出張で遠くの島に転勤になると妻は残ると宣言する。当たり前だ、不便で閉塞した土地に住みたいわけがない。「戻ってくるの?」という言葉がブーメランのように頭にこびりつく、本当に戻れるのか…… 「いらっしゃいませ」  南洋のホテルで出会った受付の彼女は華やかで美しい、住む場所で人柄が変わるのを実感する。明るくて開放的で親切な彼女は理想的な女性だった。 「戻ってくるの?」 「大丈夫」  彼女から、裸身の肩にやさしくキスさ

SS 感想文部 #毎週ショートショートnoteの応募用

「この話なんですが …… 」 彼は紙に書いた物を見せる。メモに何か書かれている。俺は趣味で実話怪談を集めている。だからたまにネタを貰える事がある。 読むと他の怪談の感想文部分だけだ。中身が無い。文章を書くのが苦手な人も居る。怖いと書けるが理屈がない。女の幽霊が怖いと書いてあった。 「ええとても怖いんです …… 」 俺は彼女を見る。短い髪の少女は美しく幼い。顔に大きく傷ができていた。生まれた時からの傷に見える。俺はメモに目を落とす。老婆が怖いと書かれている。俺は顔を上げると