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雑多な怪談の話

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2023年8月の記事一覧

SS 鳥獣戯画ノリ #毎週ショートショートnoteの応募用

 灯明皿の橙色の炎が風を感じないがゆれる。動く自分の影は妖にも感じた。まるで生きているように障子に流れる。和紙を見つめながら若い絵師が苦悩していた。 「なにか怖い絵をお願いします」 「はぁ……」  百物語で飾る掛け軸の絵が、欲しいと頼まれた。妖怪、幽霊、鬼のような怪異を描いて欲しい。裕福な商人の余興でしかないが、売れるツテになる。真剣に考えたが何も思いつかない。  しばらくして商人は絵師から連絡が来ないので家に訪れると誰も居ない。勝手にあがりこんで仕事部屋に入ると絵が出

SS 笑う娘【ヒマワリへ】 #シロクマ文芸部

 ヒマワリへ手をかざす。 「大きいねぇ」 「もう坊ちゃんと同じくらいね」  女中の幸子が嬉しそうに笑う。尋常小学校も来年で卒業する。田舎に疎開してからは、幸子と一緒に暮らしていた。 「お父さん、戻ってこれますか? 」 「戦争が終わったら、戻ってこれるよ」  銀行頭取の父は内地で働いていた。空襲が激しくなると僕を疎開させる。女中の幸子の実家で暮らす事になる。 「やーい、もやし」 「木登りもできないのか」  疎開先ではよくいじめられた、だから友達は作れなかった。自然と

SS 告白水平線 #毎週ショートショートnoteの応募用

 水平線はとても遠く感じる。漂流してから何日目だろうか? 小型のプレジャーボートが霧に包まれると無線もGPSも使えない。 「水が足りないか……」  釣り道具はあるが遠洋なのか魚がいない。俺は死を覚悟した。100年以上前にも太平洋で遭難した漁船が死の船となってアメリカまで流れ着いた話もある。  釣り糸を垂れながら、ぼんやりしていると海亀だろうか? 白い腹が見える。俺は魚を引きあげる手銛でたぐりよせた。  人魚だ、美しい金髪と西洋風の顔はアニメみたいだ。 「ごめんなさい

SS 夢の危機一髪 #爪毛の挑戦状

 夢は支離滅裂でつながりが無い、まるでダイスを転がすように流れが変わる。いつものように追跡夢を見る。  夢の中で誰かに追われている自分は、いつしか過去に住んでいた郷里の街角を歩いていた、そこで眼が覚める。夢の危機一髪は常に回避される。危険な夢を見ると反射的に起きられた。 「なにか最近は眠りが浅くて……」 「薬でも飲むとか? 」  意味がなさそうな書類をEXCELで作りながら、同僚にグチをこぼす。早く寝ても寝たりない。 「夢が多くない? 」  同僚が笑いながら私にチラシ

SS 怪談ー中止の夏祭り【夏祭り&難易度&世論調査】三題話枠

「世論調査の結果だ……」  町内会長はテーブルに資料を静かに置いた、夏祭りの中止が決まる。公園でドンドコ太鼓を叩かれて、うるさいと苦情が入る時代だ。それに若い人も少ない、夏祭りを盆踊りで楽しむのは老人ばかりだ。 「じゃあ中止と言うことで……」  ぞろそろと部屋を出て行く老人たちはさみしげでもあるが、すこしだけほっとしていた。夏祭りに嫌な思い出がある。女の子が盆踊りの中央の高い櫓で首を吊った。次の年は中止になる、今年から始めようとして近所でアンケートを取った結果が悪かった。

SS ああ、なんて温かい雪だろう。#ストーリーの種

 ああ、なんて温かい雪だろう。冬山で遭難した俺は雪洞を掘って難を逃れようとした。結果は誰にも発見されないままだ。俺は雪の布団にくるまって幸せだ。 「残業も多かったからなぁ……」  今は好きなだけ眠れる。そういえば昔話で雪を布団にして死んだ兄弟の話があったな。あれは悲惨な話だ、両親が死んだので家を追い出されて、雪を布団にして凍死をした。 「凍死って痛いんだけどな」  体の血液が凍るので痛みが走るが、それも長時間体温が下がっている状態だと気がつかない。俺は眠るように死ねた、き

SS 未来断捨離#毎週ショートショートnoteの応募用

注意:怪談です、極めて不快な描写があります。苦手な方は読まないでください。  パパ活も馴れてきた、はじめは怖かったが、最近はヤバメな奴をキャンセルできる。どこにでもいる子に見えていると思う。身なりには注意している。だから相手も優してくれる。クラスメイトでもヤッテる子は、一目でわかる。だらしがないのだ。そんな子は乱暴に扱われる。 「妊娠するとやべーよな」 「器具つっこまれるんだぜ」  大声でそんな話をしている、私はそんな事にはならない。ちゃんと準備してる。 「ねぇ、相談

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中学の文芸部 #シロクマ文芸部

SS 人類の失火【チャッカマン&魔物&法定速度】三題話枠

「魔物? なんだその通報は? 」  パトカーの中で同僚が不機嫌そうな声を出す。火事で警察に連絡が来た、消防ではなく警察だから事件性があると判断して、巡回中の俺たちが呼び出される。 「魔物がいるそうだ、精神的な問題かな? 」  幻覚や幻聴で炎が見える場合もある。住人が見えているモノは存在しなくても本人があると信じれば存在している。認知は通報した本人次第だ。  家賃が安そうな二階建ての古いアパートに到着する。郵便受けは半分くらいは壊れていた。人が住んでいるのだろうか? 「○