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雑多な怪談の話

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雑多な怪談話を入れます 写真は https://www.pakutaso.com/20170603152post-11830.html を利用しています
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2023年2月の記事一覧

SS ヘルプ商店街 #毎週ショートショートnoteの応募用

 汚れたシャッターに「HELP」と大きくいたずら書きがされている。シャッターアートのつもりか?俺は仕事を始めた。 「汚されて困るんだよ」  商店街の会長さんが俺をねぎらう。仕事の内容を聞くと数ヶ月前から深夜になるとシャッターにイタズラされる。人を雇っても長続きしない。 「閉店後に消します」  店が閉まるとシャッターに書かれた文字を薬剤で消す。夜の商店街は閑散としていて怖い。ふと後ろに気配がある。商店街の人だろうとふりむくと誰も居ない。 「また書かれてたよ」  昨日

SS 夜の株式会社 三題話【ティーブレイク&株式会社&妥協】

 深夜のビルの窓は暗い。残業する人達が居るのか窓の一つに明かりが見える。夜の株式会社だ。普通と異なる能力を持つ彼らは、妖怪や悪魔と交渉す深夜の戦士。  若いOLが不満そうに係長に文句を言う。 「えー係長、栄光の手って経費で落ちるんですか?死刑囚の手ですよ」 「葬儀屋にコネがあるんだよ、袖の下で使うから計上しといてくれ」 「課長が呼んでます」  若い部下が係長に近づくと耳打ちする。嫌な顔をして、髪の毛がすっかりまばらな係長が課長の席に行く。もう歳で現場仕事に狩り出されるの

SS 昨日助けていただいたミジンコです。#ストーリーの種

「昨日助けていただいたミジンコです。」  おじいさんは、少女を見ている。年頃の十七歳くらいの娘がニコニコと笑っている。ミジンコ?そんな名前の村の子は居ただろうか? 「どこの子だい?」 「私を助けてくれました」 「いや礼はいいよ、歳なので何をしたのかは忘れた。もうお帰り」  おじいさんは助けた覚えはありませんが、礼儀正しい娘だと喜びます。娘は恩返しのために食事を作るから住まわせてくれとお願いします。まぁそれならと言う事で一緒に暮らす事にしました。ミジンコ少女はおじいさんを

SS 食べる焚火 #爪毛の挑戦状

 月夜の晩に商人が街道を急ぐ。満月の夜は歩くのに不便はない。夜通し歩けば関所に到着する筈だ。明日には江戸の地を踏めると思うが、疲れが出ていたので小休止しようと場所を探す。  焚火がパチパチと明るい。商人がゆっくりと近づく。月夜の岩場に誰も居ない焚火がある。 「山賊でも居そうだな……」  秋も深く寒いが風は吹いていない。慎重に近づいて焚火に手をかざす。暖かい炎に一息つく。背負っていた荷物を降ろすと立ったまま焚火を見る。ごうごうと燃える炎は勢いがある。いつまでも見ていられる

SS ふりかえると電車 #爪毛の挑戦状

 男の子が線路を歩く、親に怒られて線路をとぼとぼと歩く。小さな事で叱られた。長い土手を歩いて行くと左手に線路がある。土手をよじ登り線路内に立ち入ると、どこまでも伸びる錆びた線路を見つめた。そのレールから音がする。ごとんごとんと音がする。廃線の筈なのに列車が走ってくる。男の子は怖々とつぶやく。 「お化け電車?」  この地域には噂の怪談がある。廃線に電車が走ってきて子供をさらう。その話を思い出すと彼は怖くなり土手から降りようと線路から外れて歩くが……進めない。壁だ。見えない壁が