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雑多な怪談の話

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2022年11月の記事一覧

SS 配信したがる餃子 #毎週ショートショートnoteの応募用

「再生数が伸びない……」 女の子が料理を作るだけの動画が伸びない。私は生放送に切り替える。 「餃子の作り方です」 もたもたと包丁を使うと私は指を切る。リスナーが心配そうに投げ銭をくれる。私は味をしめた。下手なフリをして指を切る。血まみれになると再生数も投げ銭も増えた。 「この配信は不適切と判断をされ……」 メールでIDがBANされた通告が来る。私はアングラな放送サイトに移動した。 「今日も餃子です」 料理の中身はなんでも良い。私が血まみれになるのを喜ぶ人が居る。いつしか

SS 暗い部屋【不動産&甲高い&おちこぼれ】三題噺

「この部屋です」 俺は客に部屋を案内する。不動産屋に努めて一二年目だ。やばそうな部屋は勘でわかる。この部屋はやばい。暗くかび臭い部屋はクリーニングしても変わらない。客も部屋を見ながら首をふる。 「ダメでした」 内見した後は別の部屋にすると言われた。俺は上司に報告する。嫌な顔をしながら俺を見ている上司は成立させろよと文句を言う。無理を言うな。何年も空いている部屋だ。大家も諦めている。 元はなんでも無い部屋だ。受験生が借りた。彼は勉強ができない落ちこぼれで、時間の無駄になる。

SS 立法権の思い出 #毎週ショートショートnoteの応募用

「俺は頭の中に立法権があるんだ」 真向かいの男が俺につぶやく。昔からの知り合いだ。変な奴だが気は合う。ひさしぶりに部屋で飲んでいた。 「それで誰がルールを決めているんだ?」 「合議制だよ、当然だろうが」 自分ルールを作るのは誰でもある。今日は煙草を吸わない。節食する。パチンコはやらない。ルールだ。 「誰と誰が決めるんだ?」 「俺とみんなだよ」 よく判らない。彼の中では俺も参加者らしい。俺は立ち上がると部屋を出る。冷蔵庫にビールがある。そう言えば、ビールはいつ買っ

SS 二次会実家 #爪毛の挑戦状

「二次会実家でやろうぜ」 薄い知り合いと騒いでから俺は周囲を誘う。俺は調子に乗っていた。酒で冷静な判断が出来ない。知り合い達と美奈を連れて行く。実家には家族は居ない。両親は他界した。 知り合いを居間に通すと冷蔵庫からビールを出す。俺は酔いが冷め始めていた。 「明日も会社だから、ほどほどにしないと……」 美奈が近づく。恋人だった事もある。今は他人。 「ねぇ?大丈夫?」 内心は心配していた。 「へ、平気さ……」 美奈がビールを持って居間に行く。俺は早くみんなを酔わせたかった。

SS 廃線の踏切【お題提供枠】

廃線の踏切がある。もちろん電車が通るわけもないが、つい左右を見てしまう。子供の頃は線路に入って遊んでいた。何かあるわけもない。ただ踏切だけは違う。近くの公園で遊んでいるとカンカンと音がする。 「お化け踏切」 子供達は怖がる。大きな音はしない。小さく微かに音がするように聞こえる。聞いた子供が騒ぐと、公園から人が居なくなる。 そんな経験していた俺は踏切を見ると心が痛い。幼なじみが死んでいる。詳細は知らない。自殺だ。十四歳の時に彼女は踏切に入り死んだ。廃線間際だった。 「よぉ

SS 骨董品の人形【お題枠】

放送でお題をもらって書く作品です(一部実話) 見知らぬ土地で散策するのが好きだ。出張でホテルの部屋を取ると商店街に飯を食いに行く。やたらと寂れた街の閑散とした商店街はシャッターが多めだ。飯を済ませると商店街の中で奇妙な店を見つけた。 「骨董屋?」 今時そんな店が残っている事に驚く。中は雑多な代物で埋まっている。壺や掛け軸や古い時計。大半は陶器製の茶碗や皿だ。昔は貴重なものだが買う人はもう居ない。 その中に人形がある。 赤と白のドレス姿の子供が座っている。自分は娘が居