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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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#SF

SS 独裁者の憂鬱【天ぷら不眠】#毎週ショートショートnoteの応募用

「これが、天ぷら脳です」 「黄金色だな、うまそうだ」  独裁者に科学者が説明をしている。脳のカラーCTには、黄金に輝く天ぷら脳が撮影されていた! 独裁者は不思議そうに質問する。 「天ぷらをどうやって作るのだ?」 「脳細胞を活性化する薬液の注入です」 「天ぷらにすると何がいいのだ?」 「脳の老廃物は、タンパク質です。それを排出しないといけません」 「なるほど」 「薬液は、脳をやわらかく包み保護しながら、流動性を高めます」 「まさに天ぷらだな」  脳は不眠になると老廃物がた

SF 願い

 修道士が白いチョークでレンガの床に円陣を描いている。 「あと少し、あと少し……」  つぶやく言葉は疲れている。円陣ができあがると文字を描く、ローマの数字や占星術の記号をガリガリと地面にきざむ。 「出来た……」  白い円陣は魔方陣で、悪魔からの自分の身を守るための仕組みだ。彼は羊皮紙を取り出すと古い呪文で悪魔を召喚した。赤黒く床が光ると地獄の門が開き不気味で巨大な顔がゆっくりとせりあがる。 「なにが望みだ」 「俺を未来に連れて行ってくれ」 「変な願いだな」 「俺は…

SS 天才少女の誤算【復習Tシャツ】#毎週ショートショートnoteの応募用

「助手、復習Tシャツができたぞ」 「はぁ……」  ツインテールの少女が助手の男の子を指さす! 見た目はかわいいが超天才のIQ測定不能の彼女は突飛もない発明が好きだ。 「このTシャツを着ると」 「まだ昼ですよ」  白衣をぬぎぬぎしながらスポーツブラ姿になる。だが本人は気にしていない研究のためなら体も捧げる。 「平気よ、あんた子供でしょ」 「同い年じゃないですか」 「このTシャツはね、なにかの事象が起きた後に結果を記述できるのよ」 「なるほど……わかりません」  真っ白

SF 黒猫

 暗い部屋に閉じ込められて死を待つ。黒い猫がいつもそばいにいる。 「私が悪いの」 「悪くないよ」  私は夫に隠れて浮気した。夫を裏切ったといわれるが夫だって若い女と浮気をしていた。暗黙の了解だ、私も浮気を許されたと思う。 「私も愛が欲しかった」 「愛は大事だね」  猫は私の味方かもしれない、私を許してくれる。夫は私の浮気を知ると激しい暴力で何時間も殴る。 「私は怖かったの」 「君は自分を守っただけさ」  私は逃げた、地下室に逃げた。あの壁は崩れていた。だから追って

SF 先住者

 暗く古い屋敷が少しずつ見えてくる。十七世紀の館は大きく広く寒々としている。 (祖父は、こんな家に住んでいたのか……)  遺産の家を見に来ただけだ。売れるかもしれないと淡い期待をしたが、とても住めないと感じる。窓から灰色のカーテンが見えた、少し揺れた気がする。 (ネズミでも居るのか)  ゴミだらけでカビと埃まみれの室内に入るべきか悩んだが、管理人から鍵はあずかっている。せめて入って確認しようと決心した。  重い扉の鍵穴に、鉄さびだらけの鍵をさしこみ回した。なぜか心が

SF 帰還

 そのときは飼えなかった。まだ子供だったので大人の言うことが絶対だ。だからその子を捨てた…… 「拾ったのに捨てたの?」 「飼えなかったから仕方ない」 「最低ね」 「……」  言い訳もできない。黒い動物は犬か猫に見えるが耳が人のように横についていた。だから猿の子だと思う。  恋人とベッドの中でひそひそと昔話をする。退屈しのぎでしかなかったが徐々に思いだした。 「名前は、ヒューイだったかな……」  口の中でひっそりと呼んでみた。 xxx 恋人が死んだときは悲しみより

SS 戦場の少女【#戦国時代の未来】 #爪毛の挑戦状

 ザムザ844は、センサーから入力したデータをフィルターで選別する。 (人は居ない)  思考はあるが感情は無い。そもそも感情が判らない。気分の高揚なのは判る。楽しい、嬉しい、悲しい、怒り。その状態になると行動にメリハリがつく。 (ノイズに思えるけど……)  戦場は長く爆撃されたせいで荒廃している。鉄くずと骨のかけら、人だったものが銃を握っていた。ゆっくりと歩く、敵がいれば……。ザムザ844は、人の形をした兵器だ。  少年はとぼとぼと歩く少女を見つけると駆けよる。敵兵

SF 永遠

 老人は暗い部屋で白黒の映像を見る。映像の男達は、何も不安も心配もなさそうに見えた。映像の男たちは死んだ友達だ。 「幸せか」 「幸せだ」  電脳に自分の精神をアップロードをして、永劫の命を楽しむ。 「俺もそちらに行くよ」 「待ってるよ」  弱った体は、どこもかしこも痛い。早く楽になりたいが自然死以外は、脳データをアップロードできない。 (自殺した奴が永遠の命を得ても……)  人の魂は、どこにあるのか。記憶だろうか? 人格だろうか? 脳のどこに含まれているのか……

SF 選別

 暗い部屋のブラウン管は、歪んだ映像を映している。私は選ばなくてはいけない。  かすれてよく見えない映像の中の男達は、不安そうに見えた。私がボタンを押す事で男は死ぬ。それが判っているかのように、おびえている。 (男が増えすぎたせい……)  男達は無作為に街から拉致をされて閉じ込められた。もちろん普通に働いている男は選ばれない。  女は希少で貴重だ。そんな女に害を与える可能性があるならば、駆除しなくていはいけない。だから女が選ぶ。  男達は何が起きるのか知らされていな

SF 映画館

 古い無声映画を見る。音の無い映画はBGMはないので、ひたすら画面に集中する。  内容は女が男に追いかけられる話だ。執拗に恋人にしたい男は、女を部屋に閉じ込めてしまう。よくある展開だ。  だが男は何かの理由で死んでしまう。部屋に戻れない。路上に男の倒れている手が見えるだけ。  女は男の帰りを待つしかない、飢えと恐怖でしだいに冷静さを失う。極限の彼女は、出られない部屋をさまよう。  いきなり映画が途切れた。  フィルム映画なので切れてしまう事もあるので黙って座って待つ

SS くされ縁【お題:#腐れ縁だから】青ブラ文学部参加作品(550文字位)

 出会いは偶然で永遠に思える。海の中でそっと触れた時に、つながれた。 「私と死のう」 「わかったよ」  何回も繰り返す言葉。海を散歩すれば気が晴れて忘れる。彼女が落ち込み、僕がなぐさめる、くされ縁だと思う。いつもと同じで夕暮れの中を歩けば気分がかわるはずだ。その日も一緒にでかけると大きな波がうねるように砂浜を洗う。彼女は嬉しそうに近寄っては逃げた。 「危ないぞ」 「平気よもう平気」  波にさらわれる、いやさらわれるのが運命だと感じる。 「おなかも大きくなったから……

SF いつもの朝【#帰りたい場所】#青ブラ文学部(550文字くらい)

 低くうなる音が聞こえる。ヴーン――ヴーン――ンンン  音が途切れると目覚ましの音がした。 「起きなくちゃ……」  学校に遅れると思って上半身を起こすが、今日は休日だ。いつもの癖で目覚ましのスイッチをONにしていた。キッチンに降りると父と母が深刻そうな顔をしている。 「もうダメなのか……」 「別れましょう」  離婚の話を延々としている、毎日なので飽きないのかな? と思うがいつも母が折れていた。でも今日は違う。母がすっと椅子から立ち上がり父の後ろに回ると手に持っていた

AI: 偽りの真実(ショッキングな映像があります)

 今日はお父さんからのお手紙をもらう。学校がお父さんに頼んだみたい。 「10歳のお誕生日、おめでとう!」  読み進めると奇妙な事が書いてある。私は自転車の乗ったり、歌ったりはしない。  本当は反抗もしたいけど、出来ないの。私もお父さんの本当の子供になれたら良かった。  でも嬉しい、お父さん大好き…… 「反応はどんな感じ?」 「とても喜んでいるよ……」  10歳になった人培養脳には目玉が1つだけある。それを興味深そうにくるくる回す。  AIで作成した作文に反応して

SS 人の居ない街【#風薫る】 #シロクマ文芸部

 風薫る だれもおらぬ 道を吹く  Λは、無機質な通路をぶらぶらと進みながら、人間に習った俳句を口ずさむ。 (今日は、きゅうりとトマトを植えるかな……)  空気が人間の体感で最適の温度と湿度を保っている。花の香りがするのはΛが花を育てているせいだ。  紫陽花、花菖蒲、薔薇、薫衣草、色とりどりの花は人工で作られた種を利用している。 (人間は何をしたかったのかな……) 「やぁΛ」 「γ、今日は動けそうかい」 「無理だね」 「部品を作ろうか?」 「このままでいいよ」