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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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#毎週ショートショートnote

SS 独裁者の憂鬱【天ぷら不眠】#毎週ショートショートnoteの応募用

「これが、天ぷら脳です」 「黄金色だな、うまそうだ」  独裁者に科学者が説明をしている。脳のカラーCTには、黄金に輝く天ぷら脳が撮影されていた! 独裁者は不思議そうに質問する。 「天ぷらをどうやって作るのだ?」 「脳細胞を活性化する薬液の注入です」 「天ぷらにすると何がいいのだ?」 「脳の老廃物は、タンパク質です。それを排出しないといけません」 「なるほど」 「薬液は、脳をやわらかく包み保護しながら、流動性を高めます」 「まさに天ぷらだな」  脳は不眠になると老廃物がた

SS 天才少女の誤算【復習Tシャツ】#毎週ショートショートnoteの応募用

「助手、復習Tシャツができたぞ」 「はぁ……」  ツインテールの少女が助手の男の子を指さす! 見た目はかわいいが超天才のIQ測定不能の彼女は突飛もない発明が好きだ。 「このTシャツを着ると」 「まだ昼ですよ」  白衣をぬぎぬぎしながらスポーツブラ姿になる。だが本人は気にしていない研究のためなら体も捧げる。 「平気よ、あんた子供でしょ」 「同い年じゃないですか」 「このTシャツはね、なにかの事象が起きた後に結果を記述できるのよ」 「なるほど……わかりません」  真っ白

SS 新しい体【トラネキサム酸笑顔】 #毎週ショートショートnoteの応募用 (410字くらい)

 一枚のパンフレットを見る。 「トラネキサム酸笑顔で一杯」  声を出してキャッチコピーを読む。ふふふと笑ってしまった。当時の若い私は、肌もすべすべで真っ白に見える。 「また見てるのか?」 「だって、お別れだから……」 「まだ白いよ」  確かに同年齢の方よりも白いかもしれないが、もう歳だ。手の皺を指でなぞる。 「そろそろだ」 「判ってますって」  夫はせかすが気乗りしない。私は体を捨てるから……ベッドに寝かされて、目をつむる。自分で自分の手を握る。 「はじめます」

SS 愛したい女【据え膳の猫ビーム】#毎週ショートショートnoteの応募用

「これが猫ビーム」 「はぁ……」  白衣の美人科学者が、気弱そうな助手を見る目は飢えていた! 「主任、それで猫ビームってなんですか」 「量子チェシャ猫逆説理論を実証する新発明よ」 「それって測定器を騙す理論ですよね?」 「一般的にそう思われているけど、私は! 実証実験に成功した」  助手は疑わしそうだったが、事実なら素晴らしい発明だ。 「それが成功すれば、人間の体と心を分離できます! すばらしい」 「ふふふ、それであなたを実験体にしたいのよ」 「え? いきなりですか」

SS 【デジタルバレンタイン】【SFチックな】#毎週ショートショートnoteの応募用

「突入せよ」  ジリジリとした時間から解放される喜びで、下肢が跳ね上がる。任務は単純だ、人質の救出。 「隊長はバレンタイン知ってますか」 「古代の風習だったかな……」  義体の体は高価なサイボーグ素材で作られている。隊長の義体は、ゴリラのような巨大な胸をしていた。 「昔はチョコレートを好きな人にプレゼントしたんですよ」 「チョコってなんだ?」  義体は人間の食べ物を分解はしない。食べられるが溶かすだけで栄養にしない。代わりにサイボーグ用のゲル状の流動食が使われる。隊

SS ドローンの課長 #毎週ショートショートnoteの応募用

 蒼穹には何も無い。ただ青く下方に雲が広がっている。何も無い空を飛ぶのは気持ちがいい。 「ドローン課長」  新人のアシスタントは親しみを込めて愛称で呼んでくれる。自分もそう呼んでくれると嬉しい。怪我をした顔は、プラスチックのマスクでおおわれている。趣味がドローンの課長は、気さくで好かれていた。 「UAV(無人航空機)のテストが始まります、チェックしてください」  航空自衛隊を辞めて、民間の研究施設で勤務をしている。テストパイロットだった私は事故で二度と飛べないと思ってい

SS 怪人制御冷や麦 #毎週ショートショートnoteの応募用

 うだるような四畳半で寝そべりながら、扇風機の生ぬるい風にあたる。 「大家も冷房くらいつけてくれよ」  怪人修行で五年目だ。オーデションに受からない。バイトしながら悪の組織に入るんだと頑張っていた。 「君は特徴ないからね、君はカニ怪人だっけ? 造形がありふれてるからねぇ」  別にカニでもいいだろうと思う。カニ怪人とか子供にも受ける。殻は固いしハサミは格好がいい。スターになれると思った。 「おい、暇か?」 「することない」  相方のテナガエビ怪人がドアを開けて、熱気

SS ルールを知らないオーナメント #毎週ショートショートnoteの応募用

 青い宝石の中で白い星に見える傷が無数にある。それがまるで銀河の恒星にも感じた。 「この白いものはなんですか?」 「ホウ素らしい……不純物が含まれている」 「それで複雑な輝きになるんですか……」  白衣の助手が拡大鏡の用意をしている。ふと助手がつぶやく。 「これが呪いの宝石……」 「そんなものは存在しない」  鑑定を頼まれた教授は、そろそろ二十世紀にもなるのに、呪いの話をされて不愉快に感じた。  彼の新案特許の『光学式増幅拡大鏡』は、とてつもなく微細に観察できる。レ

SS 終わりの日1 台にアニバーサリー #毎週ショートショートnoteの応募用

「ありがとうみんな、さようなら」  演舞台で彼女は、ほほえんでいた。幸せそうな彼女は不幸だった。 「なんなんだ、不公平だよ」  彼女は俺の推しだ。二周年記念のステージで、難病を告白する。  演舞台にアニバーサリーステージの垂れ幕も華やかだ。みなが祝福する最高のステージになるはずだった。 「なんでだよ……」  彼女は闘病のために引退をするが、長く生きられないと判っていた。推しが死ぬ。それだけで俺は絶望する。 「どこかに神様いねえのかよ……」 「いるよ」  ふと顔をあげ

SS 優先席の微世界先生 #毎週ショートショートnoteの応募用

「3年B組、微世界先生!」  微世界先生は小さい。しかし誰よりも大きかった。 「人間ってのは、人と人が支え合うから人間なんだよ」 「微世界先生は、人じゃありませんが?」  教壇の上に水槽がある。そこには脳培養をしたマイクロ脳の微世界先生が浮かんでいた。赤ん坊の時に体が損傷して壊死したが、脳だけ取り出して活動している。  横柄で攻撃的な女の子がいれば 「立派な人になるより、友達になれる人になりなさい」  自分が不幸だと思う男の子がいれば 「幸せはどこかにあるわけじゃな

SS 着の身着のままゲーム機 #毎週ショートショートnoteの応募用

 僕はゲーム機だ。着の身着のままゲーム機として転生した。巷では自販機に転生する作品もあるので、ゲーム機なんて普通と思う。 「野良ゲーム機なのか?」  まさか荒野でひとりぼっちで置き去りにされるとは、思わなかった。 xxx 「お前は何になりたい?」 「ゲームが好きなのでゲームの世界に転生したいです」  不運な事故で僕は神様の前でお願いをする。神様は優しくうなずいた。 「お前をゲーム機にしてやろう!」 xxx 「だからさぁ、転生っていったら勇者とかあるじゃん、なん

SS 枢軸マーガリン #毎週ショートショートnoteの応募用

「おかあさん、何をもっているの……」 「枢軸マーガリンだよ」  さびた金属缶は、もうボロボロだ。 xxx  破壊されたシュトルムティーガーが道ばたでくちている、巨大な砲を使う兵士は居ない。 「にいさん、おなかすいた」 「マーガリンあるよ……」  枢軸国は終わりだ、連合国の兵隊が迫ってきた。兄は軍から提供されたマーガリンの缶を私に渡す。兄はまだ17歳だが、戦場に駆り出された。 「ごめんな。守ってやれなくて」 「にいさん……にいさん」  私を塹壕に隠すと、ドイツ新兵器

SS 壁に少々らっきょう #毎週ショートショートnoteの応募用

 壁に少々らっきょうがついている。 「おい、壁を掃除しとけよ」  妻が不審そうに自分の顔を見ている。不機嫌になる前に、そそくさとマンションを出た。子供がいたずらでくっつけたのかな? 程度にしか感じない、仕事でいそがしく忘れてしまう。 「お父さん」 「ただいま」  帰ってくると娘が抱きついてくる。もう少し年齢が上がれば近寄らなくなる。 「お父さん、キッチンの壁が変だよ」 「どうした」 「壁がなんでも食べちゃうの」 「らっきょうをつけたのはお前か」  くすくすと笑う娘は

SS 秋の空時計 #毎週ショートショートnoteの応募用

 雲に向かって腕を伸ばす、秋の空時計が光って見えた。少年はピカピカな時計が大好きだ。父親に買ってもらった時計を大事にしている。 「時間が計れる、なんて素敵な道具」 xxx 「それが、この時計ですか?」 「壊れて動かないが、お守りだ」  もう時間は計る必要が無い、試作のロケット戦闘機は地上から高速で駆け上がり、敵の爆撃機を破壊できる。前方の巨大な機関砲は、一発でも当たれば敵は爆散する。 「ご無事で」  敬礼をして発進した。  猛烈な反動で息ができない、ものの数分で敵