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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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#爪毛の挑戦状

SS カエルとストロー【#代用うんこ】 #爪毛の挑戦状

「代用うんこを入れます」 「代用ですか」 「代用じゃないとダメです」  近未来、腸内細菌で人体の健康を維持する研究が進んだ。そして発明されたのが「腸内細菌サプリメント」だ。 「このサプリだと、働く意欲が高まります」 「これは美肌ですね」 「老化を防止して皺を抑制します」  ただし、問題がある。口から入れると強力な胃酸で大半が溶けてしまう。そこで発明されたのが「お尻からビルドイン!」だ。 「それで代用うんこですか」 「他人のうんこは入れたくないでしょ」 「そりゃそうです

SS タイムスリップアレルギー #爪毛の挑戦状

 気がつくとタイムスリップをしている。医者からは一種の記憶障害と診断された。実際に経験しても、実体験をしたように感じない。 「タイムスリップアレルギーですね」 「なんでそんな事が……」 「記憶の連続性が希薄に感じる、忘れっぽいと考えてください」  精神科を出て薬局で薬をもらう。記憶喪失とは異なり、思いだせるのに他人事だ。夜に寝て、朝に起きると三日くらい経過している。 「昨日は……計画書を作ってたか……」  会社で仕事をしていても、仕事の内容は、覚えているのに仕事をした

SS 立方体部 #爪毛の挑戦状

 私は立方体を抱えて走る。この中に私の赤ちゃんが居る。 xxx 「私の子供は? 」  夫が悲しそうな顔をしている、もう自分にも判る。赤ちゃんは天に召されている。泣きたいのに漠然と現実を認識していない。 「それで頼みなんだが……」  夫の言葉を始めは理解できなかった、赤ちゃんを生き返らせる? 違う、赤ちゃんはまだ生きているが脳細胞に深刻なダメージがある、生命維持装置を外せば死んでしまう、だから……脳細胞を今なら生きたまま採取できる。 「まだ死んでないんでしょ?」  夫は

SS ハナ大増殖 #爪毛の挑戦状

 金木犀の香りがする、甘いような濃厚な臭いはむせる。あまりに強いので口で息をする。 「なんだ? 芳香剤でもこぼしたのか? 」  ベッドから起き上がり窓を見ると外がオレンジ色だ。窓に近寄ると臭いがきつくなる、外がハナで埋まっている。  テレビをつけるとニュースキャスターが「ハナ大増殖」を連呼していた。地球温暖化の影響を報じていたが、どうやら大陸側で実験を失敗したらしい。 「金木犀にクマムシの遺伝子? 」  人間の細胞にクマムシの遺伝子を入れて、耐久性を確かめられたと怪し

SS アイドルアレルギー #爪毛の挑戦状

 しばらく前からアイドルに対する認識が変わる。容姿が優れた女性が敬遠された。カワイイや美しいは禁句だ。人を判断する時に見た目はダメ。常識が変化すると、リアル肉体を評価しなくなる。アイドルアレルギーの完成だ。  それでも人類はカワイイが好きだ。アイドルは無くならない。 「イェーイ、盛り上がっている! 」  A子はバーチャル空間でライブする、自宅の部屋で無線のモーションキャプチャで体をトレスさせながら舞台で踊る。同じようにライブを楽しむ人達は自室で手をふる、表示されているのは

SS リストラのおと #爪毛の挑戦状

「いまどき追い出し部屋があるのか……」  俺は殺風景な部屋を見る、四〇代で職級が上がらない社員を、この部屋に入れて精神的に追い詰めてから退職させる。裁判になる場合もあるが、そこは会社の弁護士が違法にならないように、目を配っている。  人工知能の導入で社員がどんどん不要になると、人を管理する上司の役割が減って行く。人が多いときには必須だった仕事も無くなる、チームビルディングなんて言葉も死語だ、人を管理する必要が無い。 「林さんもこの部屋ですか? 」  営業の山田さんも来てい

SS 人男子 #爪毛の挑戦状

「召喚失敗です」  弟子が悲しそうにしている、私は中脚で頭部をなでた。王から人間の力を借りるために召喚をしてくれと頼まれている。だが遙か数億年前に絶滅している生物だ。我々と意思疎通が出来るのだろうか?  反陽子コンピュータの計算により、次元転移を行い過去へのゲートを作れる数式を生み出せた。数式を人工知能に与えれば自動的にマシンを作れる。これは人間が作ったモノだ。 「私達には必要な事だ」  王と王妃が同時にうなずく。我々の世界の存続に関係する。 「王様は人間を食べるのです

SS 古い二人用 #爪毛の挑戦状

「古い二人用の脱出艇ね」 虚空が広がる深宇宙で探査船は故障した。脱出艇は二人用だが片方に問題がある。自動点検ボタンを押してもNGで戻る。間近には巨大なクォーク星がある。ブラックホールにならない超重力星だ。 船はゆっくりとクォーク星に落ちて行く。今なら脱出艇の跳躍装置で戻れる。 「使えないわ……」 年上のミランダはため息をついた。彼女には子供が居る。未婚の私は身軽だ。 「私が残る、ミランダ脱出して」 「ヨシエ、くじ引きでいいわ」 ミランダが悲しげに私を見る。私は頭をふ

SS 朝の時計 #爪毛の挑戦状

「起きて」 体を揺らされる、夢を見ていたが忘れてしまう。俺は時計をつかむとまだ朝の六時だ。ベッドから起きる。朝食の用意をする。昨日買った食パンをレンジに入れてチンする。朝の時計は電波時計で正確だが、鳴る前に起きてしまう。目覚ましの意味が無い。 仕事場でパソコンを使いながらデータを処理していると夢の事が気になる。 「どんな夢だったかな?」 夢を見ている時は鮮明だ。夢の中で生きている自分がいる。中断されるとそれが霧散する。現実が消滅して後には何も残らない。 「夢みたいもんか