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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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2024年6月の記事一覧

SS 独裁者の憂鬱【天ぷら不眠】#毎週ショートショートnoteの応募用

「これが、天ぷら脳です」 「黄金色だな、うまそうだ」  独裁者に科学者が説明をしている。脳のカラーCTには、黄金に輝く天ぷら脳が撮影されていた! 独裁者は不思議そうに質問する。 「天ぷらをどうやって作るのだ?」 「脳細胞を活性化する薬液の注入です」 「天ぷらにすると何がいいのだ?」 「脳の老廃物は、タンパク質です。それを排出しないといけません」 「なるほど」 「薬液は、脳をやわらかく包み保護しながら、流動性を高めます」 「まさに天ぷらだな」  脳は不眠になると老廃物がた

SF 願い

 修道士が白いチョークでレンガの床に円陣を描いている。 「あと少し、あと少し……」  つぶやく言葉は疲れている。円陣ができあがると文字を描く、ローマの数字や占星術の記号をガリガリと地面にきざむ。 「出来た……」  白い円陣は魔方陣で、悪魔からの自分の身を守るための仕組みだ。彼は羊皮紙を取り出すと古い呪文で悪魔を召喚した。赤黒く床が光ると地獄の門が開き不気味で巨大な顔がゆっくりとせりあがる。 「なにが望みだ」 「俺を未来に連れて行ってくれ」 「変な願いだな」 「俺は…

SS 天才少女の誤算【復習Tシャツ】#毎週ショートショートnoteの応募用

「助手、復習Tシャツができたぞ」 「はぁ……」  ツインテールの少女が助手の男の子を指さす! 見た目はかわいいが超天才のIQ測定不能の彼女は突飛もない発明が好きだ。 「このTシャツを着ると」 「まだ昼ですよ」  白衣をぬぎぬぎしながらスポーツブラ姿になる。だが本人は気にしていない研究のためなら体も捧げる。 「平気よ、あんた子供でしょ」 「同い年じゃないですか」 「このTシャツはね、なにかの事象が起きた後に結果を記述できるのよ」 「なるほど……わかりません」  真っ白

SF 黒猫

 暗い部屋に閉じ込められて死を待つ。黒い猫がいつもそばいにいる。 「私が悪いの」 「悪くないよ」  私は夫に隠れて浮気した。夫を裏切ったといわれるが夫だって若い女と浮気をしていた。暗黙の了解だ、私も浮気を許されたと思う。 「私も愛が欲しかった」 「愛は大事だね」  猫は私の味方かもしれない、私を許してくれる。夫は私の浮気を知ると激しい暴力で何時間も殴る。 「私は怖かったの」 「君は自分を守っただけさ」  私は逃げた、地下室に逃げた。あの壁は崩れていた。だから追って

SS 俺が神になれた理由

「俺は神だ」  指でくるくるとハンドスピナーを回すがアマゾンで買った銀色の丸い磁石だ。丹念にまわしていると退屈しないが、こんなものでも1000円はするから、本当にアイデア勝負なんだと思う。 「それで神って何?」  眼の前にいるのは幼馴染でイトコだが、男になりたいからと性転換手術を考えているボブカットの少女で丸い目を大きくしながらまつ毛をパチパチさせている。 「全知全能かな?」 「なんでもできるんだ」 「嘘ぴょーん!」 「それはいいから神って何」  ギャグを入れて笑わ

SF 先住者

 暗く古い屋敷が少しずつ見えてくる。十七世紀の館は大きく広く寒々としている。 (祖父は、こんな家に住んでいたのか……)  遺産の家を見に来ただけだ。売れるかもしれないと淡い期待をしたが、とても住めないと感じる。窓から灰色のカーテンが見えた、少し揺れた気がする。 (ネズミでも居るのか)  ゴミだらけでカビと埃まみれの室内に入るべきか悩んだが、管理人から鍵はあずかっている。せめて入って確認しようと決心した。  重い扉の鍵穴に、鉄さびだらけの鍵をさしこみ回した。なぜか心が

SF 帰還

 そのときは飼えなかった。まだ子供だったので大人の言うことが絶対だ。だからその子を捨てた…… 「拾ったのに捨てたの?」 「飼えなかったから仕方ない」 「最低ね」 「……」  言い訳もできない。黒い動物は犬か猫に見えるが耳が人のように横についていた。だから猿の子だと思う。  恋人とベッドの中でひそひそと昔話をする。退屈しのぎでしかなかったが徐々に思いだした。 「名前は、ヒューイだったかな……」  口の中でひっそりと呼んでみた。 xxx 恋人が死んだときは悲しみより