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創作民話 関係

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#青ブラ文学部

SS ウィズ・コード【#いやんズレてる】#青ブラ文学部参加作品

 魔術は解明されていない、特に古代魔術は複雑で難解で意味不明だ…… 「この本はいくらです」 「1ギルで」  古書店で見つけた古代魔術本は、たった1ギルで売られていた。ポーションだって5ギルだ。 「そんなに安くていいんですか?」 「誰もそれを読めないんだよ……」  俺はかけだし魔術師で、やっとダンジョンに入れるだけの力量を認められた。スライムを200匹も倒すはめになった。しかし魔術を使うにしても店で売られている巻物は、簡単な発火魔法でも50ギルはする。ダンジョンの魔物を

SS 太郎の仕事【お題:#気になる口癖】青ブラ文学部参加作品

 その昔、村のすぐ近くの山に大きな岩が乗っていた。 「大きな岩だのぉ」 「落ちると村がつぶれるのぉ」  みなが心配するが落ちる事は無い、落ちないのだから心配するだけ無駄だ。だから村人は岩の事を忘れていた。  その村には一人の大男が住んでいる。名は太郎、この男は力は強いが、なまけもので働きもしない。口癖は「忘れろ」だった。女房が働いて自分は何もしないから村人からは評判が悪い。 「すいません、疲れているようで……」 「なんもしないのに疲れるわけがない」  村人から責めら

SS 倉の娘【#セピア色の桜】#青ブラ文学部(700文字くらい)

 倉の窓からセピア色の桜が見える。鮮やかな桃色ではなく色あせた褐色の桜。腕を窓からだらりとたらして村を見た。 xxx 「おねえさん」 「なに?」  くるりとふりかえると十歳の少年がはにかんでいる。十六の私と彼はイトコ同士。 「お風呂に一緒に入れって……」 「わかった」  彼を台所に連れて行くと服を脱がせる。すぐ横が風呂で、脱衣所なんてない。彼のすべすべした肌を、わざと触ると体をくねらせる。 「くすぐったいよ」 「早く入って」  私もすぐ脱いで、浴室にはいると彼は

SS 面【反るべきか、反らざるべきか。それが問題だ】#青ブラ文学部

 江戸で面職人をしていると変な依頼が来る。 「天狗の面を飾りたい」  天狗だけならいいが、鼻への注文が多い。長くしろ太くしろ細かな指定が入る。特に問題なのは反りだ。反りすぎると重さで壊れる事もある。 「反るべきか、反らざるべきか。それが問題だ」  注文から張形として利用していたと思う。芸者遊びで使うと想像した。 「御免」  その日は店先に侍が来る、商談のために部屋に通すと武家の姫様が不妊で悩んでいる、ここの面は子宝に恵まれると満面の笑みを浮かべながら、小面と天狗の面

SS 願い 【#鳥だったら】#青ブラ文学部

「鳥だったら」    幼い娘が井戸で水をくむ。寒くてつらい仕事を毎日しないと怒られる。娘は道ばたの鳥をうらやむ。 「鳥だったら」  娼館の二階で客を待つ女がつぶやく。好きでもない男に抱かれるつらさは男にはわからない。自由に飛べる屋根の鳥をうらやむ。 「鳥だったら」  立派なお城の窓から空を見る姫。自分の生き方を決められない縛られた身分、嫌な男と結婚して子供を産むだけの人生。空高く飛ぶ鳥をうらやむ。 「鳥だったら」  この国のすべての女がうらやむ、自由に飛べたらきっ

SS 丘の上の旗 【#朝焼け】#青ブラ文学部

「これをもってけ」  うす暗闇の中で渡されたのは手榴弾だ。使い方を教えてもらうと洞窟から追い出される。兵隊は、苦しくなったら使えとだけ言い残して、自分は銃をくわえて死んだ。 (そうだ、旗のある場所にいけば、みんながいるかも)  幼い少年は、まだ暗い空の下で丘にある旗を目指す。最初は女先生や同級生と一緒だったが、敵の上陸でみんな死んだ。 「おなかすいたな」  空腹でふらふらする。丘の上には旗がなびいている。銃も置いてある。大事な場所だから、ここを守るための武器だろう。

SS 石の塔【#暗暗裏】#青ブラ文学部

「おい誰か倒れてるぞ」 「本当だ、起こしてやれ」  男は他人の玄関先で倒れたふりをする詐欺師で、病気だと騙して飯を食って宿にタダで泊まる気だ。 「おいおい。大丈夫か?」 「いえいえ、もう動けません」  道中奉行令により旅行者が病気の場合は、地元の村が金を出して治療する義務があった。 「しかたがない、暗暗裏様に頼むか」 「うむ、そうしよう」  大八車が来ると男を乗せてガラガラと街道から村はずれまで運ばれる。そこは、石組みされた異様な塔だった。 (なんだこれは……)