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SS 丘の上の旗 【#朝焼け】#青ブラ文学部

「これをもってけ」

 うす暗闇の中で渡されたのは手榴弾だ。使い方を教えてもらうと洞窟から追い出される。兵隊は、苦しくなったら使えとだけ言い残して、自分は銃をくわえて死んだ。

(そうだ、旗のある場所にいけば、みんながいるかも)

 幼い少年は、まだ暗い空の下で丘にある旗を目指す。最初は女先生や同級生と一緒だったが、敵の上陸でみんな死んだ。

「おなかすいたな」

 空腹でふらふらする。丘の上には旗がなびいている。銃も置いてある。大事な場所だから、ここを守るための武器だろう。

「止まれ!!」

 敵兵だ、後ろから迫ってきた。機関銃を持っているので、あわてて武器を取りに走る。後ろから銃弾が飛んできた。

 少年は手榴弾のピンを抜いて投げるが、重くて坂を転がっていく途中で爆発した。

 ドン!

 土煙でわからない、少年は武器をもつと敵兵に向かって走った。女先生を殺した、同級生を殺した。敵兵が憎い。いつのまにか、少年は叫んでいた。

「万歳!ばんざい!バンザイ!」

xxx

「訓練用の武器だ、木製だ、弾はでない」
「こんなに幼かったのか」

 敵兵は地面に倒れている少年を見つめた。朝日が昇る、朝焼けの太陽が少年の顔を照らし出す。ライジングサンは少年の瞳孔を焼いた。

#朝焼け
#青ブラ文学部
#戦争

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