マガジンのカバー画像

創作民話 関係

111
創作民話をまとめています
運営しているクリエイター

#毎週ショートショートnote

SS 食べ過ぎ注意【粒状の総料理長】#毎週ショートショートnoteの応募用(500文字位)

「まずいな」 「まずいですね」  塹壕の中で古参兵と新兵がレーションを食べている。戦争当初は、パンやチーズが出ていたが、今はカブの入ったシチューしかない。 「肉食べたいです、肉、肉」 「うるせえな」  塹壕を掘るスコップで新兵を殴るまねをする。殴ったら普通に死ぬ。なにしろ敵兵を殺すのによく使うからだ。  ドカン!  バラバラと土が振ってくると食い物が台無しだ。敵の砲撃の応戦でいそがしてく食ってる暇も無い。 xxx 「おい喜べ、有名な粒状の総料理長様が戦場に来てく

SS 新型兵器【三日坊主のクレーター】#毎週ショートショートnoteの応募用(410文字くらい)

 古参兵が新兵に指示を出す。 「もうちょっと右」 「了解」  携帯できる擲弾で狙いを定めて、大きな筒に弾をこめて引き金をひくと遠くに爆発力強い弾丸を飛ばせる。  どん、どん、どん  黒い煙が広がって薄まると地面に穴が開いている。 「新型は調子がいいな」 「クレータできてますね」  普通なら爆発して破片が飛ぶだけだが、新型は重い銃弾なので地面に穴を開ける。新兵が不思議そうに聞いてくる。 「何に使うんでしょ?」 「うーん、わからん。穴あけてどうするんだ」  人が入

SS わがまま姫様【真夜中万華鏡】#毎週ショートショートnoteの応募用(480文字くらい)

「万華鏡が欲しいの」  わがままな姫様は万華鏡に夢中で職人に次々と作らせるが、それも似たようなモノしか作れない。 「もっともっと不思議なものを見せて」  そこに一人の若い技師があらわれた。姫様に誰も見たことがない万華鏡を作って見せると約束する。 「ただし……とてもお金がかかります」 「いいわ、お父様に頼むから」  技師は監督となり、職人を大勢集めて塔を作る。塔は白いレンガでとても美しい。 「姫様、万華鏡が完成しました」 「これが?」  指さす塔は先端にレンズをつ

SS 無敵の少年【雪解けアルペジオ】 #毎週ショートショートnoteの応募用(450文字くらい)

 一人の少年が遠くから進軍する魔王軍を見つめる。 「とうとう来たんだ……」  何もできないただの子供、何もできない男の子。そっと寄りそうように少女が隣に立つ。 「僕だけでいいよ」 「いいの、もういいの」  村の大人は、みんな魔王の討伐に狩り出されて死んでしまった。村に残ったのは老人と子供だけ。 「僕は歌うんだ」 「私も歌うよ」  男の子は詠唱をする、小さな声は聞こえない。唱和するように少女も歌う。子供ができるたった一つだけの力。  徐々に分散和音が重なり、高く高

SS つながり【錦鯉釣る雲】 #毎週ショートショートnoteの応募用(450文字くらい)

  錦鯉 釣る雲間に 老爺かな  池を見ている老いた侍。節句の鯉が水面にゆらゆらと泳いでいる。 (子がいれば……)  隣家の鯉は黒と赤で美しい、孫も産まれて安泰だ。 「――跡継ぎが死ななかったら」  自分の子は素行が悪かった、隣家の長男と女を取り合い決闘で死んだ。 (馬鹿な息子だ……本当に馬鹿だ)  老人は池に涙を落とす。 「あの……」  あわてて涙をぬぐうと隣家の嫁が孫を抱いて庭で立っている。 「どうしました」 「赤ん坊を見せたくて……」 「ああ……かわ

SS 夜の蜘蛛【命乞いする蜘蛛】 #毎週ショートショートnoteの応募用(500文字くらい)

 前足をスリスリ、蜘蛛がじっと男の顔を見ている。 「命乞いする蜘蛛か……」  前足をこするのは蜘蛛の習性だ。夜の蜘蛛は縁起が悪いから、よく殺された。男は叩きつぶす手を止める。 「どうぞ、お許しください」  庄屋の旦那が、手を前に出して命乞いする。 「顔を見られたから……」  背中から横腹を突き刺した。男は夜盗だ、夜の蜘蛛は泥棒に入られる縁起が悪い生き物。 (確かに、この家じゃ縁起が悪いな……)  畜生働きをする夜盗は、庄屋から金を盗んで逃げ出すと、どこかで呼子

SS 初めての鬼 #毎週ショートショートnoteの応募用

「お前が見習いの鬼か!」 鬼の様な上司が初めての鬼の俺を怒鳴る。俺は持ち場に案内された。罪人を責め立てる方法は無限にある。焼く、引き裂く、沈める、煮る。仕事は山のようだ。ただ長くやるとなんでもそうだが飽きる。ルーチンワークだ。罪人の方だって痛みがあるが同じ事に繰り返しでどう痛むのか判る。痛みなんてのは突然くるから怖いのであって、常に同じ事を繰り返されたら、それが日常になる。 「旦那 今日は煮ますか?焼きますか?」 いつもの親父が軽口を叩く。 「うーん 煮るかな?」 煮るだけ

SS 下道一組 #毎週ショートショートnoteの応募用

「およしなさい、旧道は危ないですよ」  一般道とは別に道がある、獣道とは違うが普段は通らないのが下道だ。俺は凶状持ちで普通の道を歩くのは危ない。島から帰ってきた俺はイレズミが腕にある。 「道を外れた俺様は裏道、下道なんでもござれ」  自嘲気味に都々逸を詠う、下手くそすぎて笑う。整備もされていない道は雑草と石だらけで危ない。一人で歩いていると後ろから声がする。 「こんな場所に旦那さん、一緒にいきませんか? 」  鳥追笠をかぶった玄人筋の女が近寄る、こんな場所に? とも

SS 無理無理童話88 #毎週ショートショートnoteの応募用

「馬鹿のハンス、前に出るな! 」 「豚は、陣形を崩すな 」  無理無理童話88は、悪魔に対抗するために作られた傭兵部隊だ!童話の登場人物達が頑張っている。 ◇◆◇ そのお姫さまは、みすぼらしい、気品が無くまるで平民のようだ。だから付き添いのメイドの方が姫に見えた。 「お前が姫の影武者となれ」  王は姫を守るために、メイドを姫と偽り外国の賓客に対応させていた、メイドは賢く美しいので、とても評判になり、本物の姫の方を粗雑に扱う。最初は演技だったが、悪心を持ってしまう。 「

SS 心お弁当 #毎週ショートショートnoteの応募用

「いってくる」 「お気をつけて」  妻のお里は無表情で俺の顔を見ている。浪人の俺が決闘するために家を出る。裏長屋からゆっくりと木戸を通ると、木戸番がぎょっとして顔をしかめた。悪相に見えたのだろう。 「妻を殿に差し出せば良い、主君への忠義は無いのか? 」  俺には不釣り合いな美貌を持つ妻が居る。上役は妻を殿に差し出せと迫る。なに自分の出世が目的だ、抱かせて点数を稼ぎたい。 「ついてくるか?」  お里に事情を話すと自分はかまわないと答えた。しかし俺は……我慢ができなかった。出

SS 惰性のエッヘン開放 #毎週ショートショートnoteの応募用

「やはり針が怖いのかな? 」  小さな村でハリネズミ村長は悩んでます。癖で『エッヘン』とつぶやいてしまう。針を持っている上に偉そうにしていると評判が悪い。 「針があるから無敵よね」  もしかしたら無意識で威張っている? 針が大量にあれば攻撃されません、武器あるよ、攻撃すると痛い目に合わせるよ。威嚇しなければ小さな動物です、食べられてしまいます。悩んでいるとそこに、山猫さんが来ます。 「村長を、他の動物に譲るといいのでは? 」 「なるほど、村長だから威張って見えるのか」

SS スライダーの偉大な滑り方#毎週ショートショートnoteの応募用

 曇天の昼は蒸し暑く汗がにじみ出る。巨大な処刑装置は木製で平衡錘投石機は、城の中に石を打ち込める。元は攻城用の兵器で、今は処刑に使われる。私が捕らわれた時のドレスのままで投石用の台に乗る。死刑執行人が合図を待っている。  死刑には様々な方法がある、石を投げる、首を切る、肉体を痛めつけて血を流させて殺す。一番ポピュラーなものは水死と墜落死だ。道具もいらないので簡単に死ぬ。敵国に捕らわれた私は見せしめで殺される。  籠城している兵士に自分たちの姫が泣き叫び死ぬシーンを見せて戦

SS 損の一部、真イカ#毎週ショートショートnoteの応募用

「イカ喰いねぇ、イカ喰いねぇ 」 「イカとか気味わるいよ」  パンパンと手を叩く棒手振が長屋の住人を集めている。見れば白くみずみずしいイカが桶の中で一匹だけ売れ残ってた。長屋の女将さん、イカを見ながら顔をそむけている。見かねた長屋の八さんが、買い取り刺身にでもしようかと部屋に戻ると、助けを呼ぶ娘の声がする。 「堪忍してください、助けてください」  イカが声をあげていた。八さんがイカを皿にのせて箱膳の上に置くと、むっくりと起き上がる。 「私は竜宮城に仕える侍女、助けてくれた

SS 響く礼節をペンペンしてみる#毎週ショートショートnoteの応募用

 私はレディに生まれ変わっていた。図書館の本の虫だった私は超有名なライトノベルの新作を楽しみにしていた。そこで事故った。本屋にファンが殺到してエレベーターが停止して巻き込まれて死んだ。 「読みたかったなぁ」  流行の転生ものだ、自分が悪役に生まれ変わる不思議な話。悪役だとヒロインから命の狙われる危険もある。そこを上手に回避してハッピーエンド、それが楽しい。 「この服は? 」  私は寝室で横になっていたが、西洋風のベッドで、私はナイトドレスを着ていた。明らかに私の居た世界と