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創作民話 関係

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2023年10月の記事一覧

SS 狸と生姜【液体_紅生姜_真っ赤な嘘】三題話枠

 狸はたまに町で人を騙す。騙すと言っても、葉っぱのお金で飲み食いするくらいだ。金が無いのだから仕方が無い。人間の方も狸に手を焼いて対策を考えた。旅の宿の主人は一計を案じる。 「旅の者だが、食事を頼む」 「それはお疲れでしょう、お通しにタコ焼きをだしましょう」 「まだ注文してないぞ」  客にいきなり紅生姜入りのタコ焼きを食わせる。出されたから客も黙って食べるが理由がわからない。 「主人、なんでタコ焼きなんだ」 「狸が辛いのが嫌いなんですよ」  山の動物は刺激の強いものは

狻猊(さんげい)様(08/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を人質にされて幸蔵が捕まる  土蜘蛛は幸蔵の体を糸でぐるぐる巻きにして引きずりながら山を下りる。妖怪達は人が増えすぎたのが心配になっていた。徐々に自分たちの領域を浸食している。このままでは、いつか自分たちが住む世界が無くなると人間に恐怖した。 「狻猊様に頼もう」  島国が形成される前から地下深くで生きていた妖怪は、マグマの中に住んでいた。ドロドロの体を灼熱の池の中で世界を見る。 「塵芥のような生き物を恐れるのか?」 「ゴミでも多ければ邪魔にな

SS ちっちゃな願い【秋桜】 #シロクマ文芸部

 秋桜の花びらが落ちる、大きな花びらは地面にふりつもると歩くのが大変だ。 「秋桜の花びらは大きいからね」 「当たると危ないよね」  双子のミルとモルは、薄紅色の秋桜の森を抜けて家に戻る。今日は大事な話があるから早く帰らないといけない。  ミルは女の子、モルは男の子でとんがり帽子をかぶっている。妖精の姉弟は、とても小さく身長は人間の指くらいしかない。 「ただいま、何の話?」 「おかえり、今日は修行の話だよ」 「人間にサービスするのね」 「妖精だからね、人へ奉仕しなくちゃ

SS サーカスの馬【りんご箱】 #シロクマ文芸部 ※悲しいので注意

 りんご箱に子馬が顔を入れる、器用にりんごを箱から取り出すとカリカリとかみ砕く。 「めんこいの、まふゆ」 「ゆり、お別れだから」  父親が少女の手を引くと馬小屋から連れ出す、子馬は売られてしまうので、おいしいリンゴをあげた。真っ白な子馬だから、まふゆと名付けた。 「サーカスに売られるの?」 「珍しい色だからな、きっと人気になるさ」 「サーカスって怖くない?」 「怖くないさ、怖くない……」  歯切れの悪い父親の顔を見ながら少女は心配になる。 xxx 「ゆりさん、ゆり

SS サーカスの馬※解決編【りんご箱】 #シロクマ文芸部

※BGMにどうぞ  りんご箱を見ると涙がとまらない。まふゆは泣いている子馬を見捨てた。  悲しげな声が耳に残る、激しい後悔と苦悶を感じて、まふゆは猿に相談する! 「なんでゆりちゃんをサーカス団に行かせた!」  古来から馬の守り神とされる猿は、神通力を持っている。猿は印を結ぶと真言をとなえた。 「おんあびらうんけんそわか」  巨大な猿に変化すると、まふゆを抱きかかえて、そらかける。漆黒の天空を豪速で駆け抜けた。あまりの早さに月さえもあわててよける。 「あのサーカス団

SS 信者ブラスバンド #毎週ショートショートnoteの応募用

「全体、整列!」  ごつごつとした革のよろいと鉄の直剣で武装した兵士達がずらりと並ぶ。私は腕にかかえた縦笛を緊張しつつ持ちなおす。 「邪教徒に死を!」 「地獄で焼かれろ」 「神の鉄槌を受けろ!」  怒号が地響きになる。兵士達が足踏みをして土埃が立つ、私はむせるように咳をした。 「進軍開始!、突撃行進曲、はじめ!」  私は先頭で縦笛を吹く、太鼓とラッパが勇ましく鳴り響く。  この高揚感が信じられない、音楽に触れる事で無敵に感じる。後方から矢が放たれて前方の敵にふりそ

SS 親切な暗殺 #毎週ショートショートnoteの応募用

「暗殺ですか……」 「暗殺だ」  跡目争で、護衛騎士に幼い皇太子を殺せと命令される。 xxx 「今日も遊ぼう!」  目がくりくりした皇太子が走ってきた。金髪の少年は十二歳くらいで活発な子供だ、やたらと剣の練習をしたがる。 「キミには負けない」 「立派な王様になれますよ」  剣を受けながら、その力強さに感心する。この子を殺さなくてはいけない…… 「ねぇ、相談したい事があるんだ。誰にも知られずに会いたい」 「判りました」  都合が良い、自分から死ぬ場所を選んでくれ

解毒丸 (09/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:姉を人質にされて幸蔵が捕まる 「他の村人をどうなる!」  人を消して妖怪だけにすれば争いは無くなる、それが妖怪の理想の世界だ。みなが一緒ならば争うことも無い。人を消すために、村を襲って尸鬼を増やしていた。  幸蔵は、このまま連れて行かれて妖怪なるよりも死を選ぶか? とも考えたが幸蔵の姉の千や静を見捨てる事になる。幸蔵は、その狻猊を倒せないか考えたが難しい。 「なんじゃ土蜘蛛に捕まっておったか」  仙人の老人が空に浮かんでいる、その足の下は雲が