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2022年6月の記事一覧

SS 泣いてたまるか 創作民話

蔵六は小さい頃から頭がにぶい。 小さな村の貧乏の家に生まれた彼は言葉をろくに 覚えれない、両親との意思疎通も難しかった。 他の子供にもいじめられたが、その事も気にしなかった。 その行為を悪意と解釈できない。 大きくなると言われた事をして飯を食うだけの毎日。 庄屋に奉公に出されて主人から、こき使われる 「蔵六、マキを割ってこい」 外に出て斧を取り出す、機械的に斧をふる 「ぞうろく、なにしてるの」 庄屋の孫娘が近寄ってくる。 蔵六は、幼い少女を見ながら手を止める マキが割れて

SS 焚火霊 #爪毛の挑戦状

夜道で焚火を見ながら侍は酒を飲む 「焚火があって助かります」 商人風の男が荷物を背負っている 「峠を下りると道に迷ってしまって」 商人は荷物をおろすと座る 「ここは霊が出るらしい」 侍は、つぶやく 「傭われた俺はここで幽霊を退治するために来た」 商人は不思議そうに 「幽霊とか恐ろしいですな」 侍は商人を見ると 「夜が明けて目が覚めると、食い物と酒が置いてあるんだ」 指さす先に食べた後の弁当がある 「でもな、それは俺が最初の日に持ってきたものだ」 商人が 「最初の日に持っ

SS 妖怪図鑑:一本松の女

大工の大三郎は女房を亡くしてから、仕事に身が入らない。 「お銀、あんないい女房は居なかったなぁ」 お銀は太っているが、気持ちのおおらかな女だった。 また鼻をぐずらせると首からかけた手ぬぐいで鼻をふく。 いつまでも悲しんでいる大三郎は気の弱い男だ しばらく夜道を歩いてると前方の松の木のそばで、一人の女が立っている。 「夜鷹かな?」 このあたりは川沿いで、巻いたむしろを持って立つ女は多い。 近寄ると「にいさん、どうだい?」と女は、着物のすそから足を出して見せる。夜なのに透き通る

SS 世界妖怪図鑑:妖しい花 創作民話

旦那が帰ってくると、血の付いたハンカチを貰う。 これはとても大事なものだ。 「今日は女だったよ」 大きな剣を鞘から抜くと、研ぎ始めた。 この当時は公開処刑が行われていた。罪人を群衆に見せながら 首を切り落とす。罪に対して罰を見せる事で、犯罪を抑止する。 血が処刑台から流れると女達は、ハンカチで拭う 魔力が宿ると信じられていた。 高く売れる場合もある。 私は台所に行くと、ハンカチを肌に当てる。 ハンカチの血は私の胸から吸収された。 「これでしばらくは持つわ」 私は人間ではな

SS 侍と鏡 #夏ピリカ応募用

次男の長左エ門は、姉から鏡を貰う。嫁入り道具は新しく買うので不要と言われた。男がこのような鏡を持っていても仕方が無いのだが大好きな姉からの贈り物だから粗末には出来ない。自室の道具入れにしまう事にする。「では長左エ門、家をよろしくね」病弱な姉は美しいがどこか影のある人で他家に嫁ぐのは無理のように感じる。「姉上も元気で」手を握りながら別れを告げる。嫁げばもう二度と会うことは無いと思うと泣きそうになる、軟弱な自分が愚かに感じる。この家は長男が居るので自分は何をするわけでもない、ただ