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もう日常ではない、ある一日のこと

 まるネコ堂ゼミ中動態の世界」第3回、参加者はパソコンの画面のなかに集合した。はじまりの言葉をそれぞれに述べて発表に入る。ぼくは時間をかけて、ゆっくり長々と話をした。それぞれの発表が終わり、欠席者の方が提出したレジュメを読み、今日の感想等をシェアした。

 みなで話すと自然、今の状況が話題になる。ゼミで読んでいる「中動態の世界」が今の状況に対して、ある視点を与えてくれることについて話す。思い思いに言葉を紡ぎ、それぞれのパースペクティブを交換する。

 16時過ぎにゼミが終わり、夕飯まで時間があったので喫茶店に向かった。例年この時期に賑わう川沿いの道も、桜を見て歩く人はほとんどおらず、パラパラと雨粒が降る灰色の空を眺めていると「さみしい桜」という言葉が思い浮かんだ。こんな景色を見たのは初めてだが、桜の方は初めてではないのかもしれない。

 朝は遅めに起きた。遅めと言っても、日々の仕事に向かう時刻より1時間半くらい遅くて、朝の7時だった。

 家内がつくるスムージーをダイニングの椅子に座って飲み、すぐ部屋に戻って布団の上に寝転がる。寝不足の日が続いていて、今日こそはたくさん眠ろうと思ったが、眠れない時はどうしたって眠れない。

 昨夜、風呂に入っていなかったことを思い出して、風呂の追い炊きスイッチを押すために起きて風呂場に向かった。家内がトーストを焼いて食べた後のお皿がダイニングテーブルに置いてある。

 追い炊きスイッチを押して、部屋に戻るつもりだったが気が変わり、キッチンで朝ごはんをつくることにした。棚から出したフライパンを電磁調理器の上に置き、スイッチを押す。ダイニングテーブルの上に出ていたバターをナイフで切り取って、フライパンの縁から落とす。バターをまんべんなく溶かすためにフライパンをななめにして回す。冷蔵庫から取り出した卵を割ってフライパンに落とす。水を少量入れてフタをして蒸す。

 『ホテル食パン』と印字された袋から食パン一枚を取り出して、頭を手前にしてオーブンに入れる。3分半にタイマーをセットして焼き始める。冷蔵庫から取り出した牛乳をマグカップに注ぎ、スプーン一杯の粉珈琲を入れてかき混ぜる。マグカップをレンジに入れて、2分20秒にタイマーをセットしてスタートボタンを押す。

 塩とこしょうを振って出来上がった目玉焼きをフライパンから皿に移す。焼き上がったホテル食パンをオーブンから取り出して皿に移す。引き出しから取り出したフォークをお皿の右横に置く。レンジがチーンと鳴って熱いミルクコーヒーが出来上がった。

 取り出した熱いミルクコーヒーをこぼさないように運んで席に座る。「いただきます」と言い、フォークで目玉焼きの黄身を割ると、半熟の黄身がトロッと出てきて白身に重なる。

 日常を生きていることを意識して、ぼくは食べる。食べ終わったら時間を置いて、お風呂に入るんだ。

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